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阿古邪の松

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第三章

「そうしたいですが」
「ではお父上にお話をして」
「そのうえで」
「あの山にですね」
「向かわせてもらいます」
 こう話してだった。
 阿古邪は父の許しを得て千歳山に入った、そうしてだった。
 その松の木を見ると倒れていたが。
「どうしてもですか」
「はい、これがです」
「全く動きません」
「誰がどうしても」
「何人で力を尽くしても」
「どんな道具を使っても」
 人夫達は阿古邪に話した。
「動かないです」
「どうしたものか」
「これは」
「あの」
 全てを聞いてだった。
 阿古邪はそこにいる者達に太郎とのことを話した、するとそこにいる誰もが察した。
「ではこの松は」
「名取太郎殿ですか」
「そういえばこの木を伐ってからお姿が見えません」
「以前から何処に暮らしておられるかわかりませんでしたが」
「この松の木がですか」
「太郎殿でしたか」
「そうかと、お話通りです」 
 会った時のそれのとだ、阿古邪はさらに話した。
「太郎殿はです」
「その時に伐られ」
「お亡くなりになっていましたか」
「木にとって死とは枯れるか伐られる」
「若しくは燃えることなので」
「そうかと。ですから」
 それでと言うのだった。
「この木は太郎殿ですから」
「だからですか」
「そのことを頭に入れて」
「そうしてですか」
「接しなくてはいけないかと」
 こう話すのだった。
「どうやら」
「そうですか、それではです」
「まずはこの松を弔いましょう」
「太郎殿として」
「そうしましょう」
「是非」  
 阿古邪は周りに応えてだった。
 太郎である松の木にそっと触れた、するとだった。
 松の木は動く様になりそのうえで弔われてだった。 
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