諱は呼ばなかった

　　　　　　　　　　　　　　　諱は呼ばなかった　
　平善積と彩花の夫婦に待望の子供が生まれた、男の子であったが。
　妻の彩花、小さめの顎の面積は小さくそのうえで尖り色白で愛嬌のある感じの顔立ちに黒髪をボブにして一六〇位の背で見事なスタイルの彼女は夫で学校の先生をしている善積に言った。
「あの、うちのお祖母ちゃんがね」
「ああ、この子の名前どうかって言ってたよな」
　夫も応えた、色白で細くきりっとした目で唇は引き締まっていて眉も恰好いい感じだ。黒髪はオールバックにしていて背は一七五程で均整の取れた体格である。
「そうだよな」
「うちのお母さん歴史大好きなのよ」
「それで日本史の先生にもなったよな」
「古典も大好きでね」
　妻は夫そっくりの顔立ちを我が子を抱きながらその夫に話した。
「そうなのよ、だから」
「この子の名前もか」
「付けるのかしら」
「うち平だから」
　夫はここでこのことを言った、尚彼は高校で数学を教えている。
「まさか」
「清盛とか重盛とか」
「平家の名前じゃないよな」
「いや、本当にね」
　妻はかなり心配する顔で答えた。
「わからないわよ」
「そうなんだな」
「明日お母さん来るっていうから」
　彩花は出産したばかりでまだ病院にいる、見舞と孫を観にだ。
「お兄ちゃんのところも今度子供生まれるけれど」
「お義兄さんのとこも男の子だったな」
「そう、だからね」
　それでというのだ。
「正直言って二人共ね」
「お義母さんのことが心配か」
「そりゃ清盛って名前いいわよ」
　彩花はそれ自体はいいとした。
「けれど歴史上の人と完全に同じ名前なんてね」
「どうかってなるよな」
「ええ、どうなるのかしら」
「歴史大好きだけあって心配だな」
　夫婦で生まれたばかりの我が子を囲んで話していた、そして。
　次の日彩花は母の彩子彩花がそのまま歳を取った様な顔の彼女の訪問を受けた、すると彼女は娘に孫を観つつ尋ねた。
「名前どうするの？」
「あれっ、お母さん名前どうしようかとか言ってたから」
　娘は母の言葉に驚いて返した、まだベッドの中にいるのでそこからだ。