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鮫が出ると聞いたので

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第一章

                鮫が出ると聞いたので
 瀬戸内の海に来た時である。
 小此木貴裕面長の顔に丸い目と小さな口を持つ茶色に下髪の毛を真ん中で分けている一七八位の背で痩せた身体の彼は言った。
「まずは準備体操だな」
「それは絶対にしないとね」
 一緒にいる彼女の西田由利絵は笑顔で頷いた、あどけない面長の顔立ちで黒髪を後ろで束ねている、背は一六〇位で顔立ちは地味な方と言われることもあるが身体が違った。赤茶色のビキニに覆われている身体はかなりのものだ。
「やっぱり」
「泳ぐならな」
「それならね」
「準備体操はしないと」
「そうそう」
 由利絵は小此木の言葉に頷いた。
「絶対に」
「だからまずは」
「準備体操ね」
「海に入らないにしても」
「まずはね」
「準備体操だよ」
「ビーチバレーをするかも知れないし」
 由利絵は自分達と一緒に来ている友人達も見て話した、彼等は大学生でサークルの合宿で来ているのだ。
「それじゃあね」
「まずは皆で準備体操をしよう」
「それからよね」
 二人でこう話してだった。
 小此木も由利絵も友人達と一緒に準備体操をした、そのうえで海で泳いだりビーチバレーをした。そして。
 昼食前にだ、友人の一人が言った。
「遠泳するか?」
「あっ、いいな」
「皆でする?」
「今日波静かだし」
「いいわね」
「じゃあ今からな」
「皆で遠泳するか」
 他の友人達も頷いた、そしてだった。
 遠泳をすることになったがその時にだった。
 ビーチの監視員若い水着姿の男が彼等に言ってきた。
「泳ぐならここで泳いで下さいね」
「何かあるの?」
「はい、実は先日この辺りで鮫が出まして」
 監視員は小此木に答えた。
「それでこのビーチの中は区切りがあってです」
「鮫は入って来られないんだ」
「はい、ですが」
 それでもというのだった。
「その外はです」
「鮫が出て」
「今もこの辺りにいるかも知れないので」
 だからだというのだ。
「それで、です」
「今はなんだ」
「危ないですから」
 監視員はさらに話した。 
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