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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百三十五話 十三、知恵を出すのことその十

「ううむ、ここは」
「わかってると思うけれどね」
 すぐにだ。曹操がその袁紹に言ってきた。
「十絶陣が破られてもね」
「それでもですわね」
「すぐに攻め込んだら駄目よ」
 何かというと突っ込みたがる袁紹を窘める言葉だった。
「状況が整ってからよ」
「それからなの」
「そう、それでよ」
 また言う曹操だった。
「それから思う存分戦えるからね」
「わかりましたわ。それでは」
 袁紹もだ。渋々ではあってもがだ。
 それでも頷きだ。そして応えたのだった。
「それからですわね」
「そうよ。それにしても貴女はね」
「何でして?」
「子供の頃から変わらないわね」
 その袁紹を見ての話だった。
「すぐに出ようとするところは」
「否定はしませんわ」
 今度は憮然とした顔になっている。
「そのことは」
「否定はしないのね」
「事実だからこそ」
 それ故にだというのだ。
「それはしませんわ」
「そういうことなのね。それでね」
「ええ、その後で」
「決戦よ」
 曹操の言葉が強くなる。
「その用意はね」
「何時でもできていますわ」
 ここでは袁紹の性急さがいい方向に出ていた。
「それこそ本当に」
「そうね。それじゃあね」
「ここで終わらせますわよ」
 今度はこそはと。袁紹の士気も高い。
 そしてその高い士気からだ。あらためて曹操に言うのだった。
「この戦いが終われば」
「泰平の世が来るわね」
「そうなりますわね。乱れた世の中でしたけれど」
「それが本当に終わるのよ」
 曹操もだ。その泰平の世にだ。
 希望を見ながらだ。最後の戦いを見ていた。
 そしてそのうえでだ。そこにだ。
 袁術も来てだ。そのうえで二人に言って来た。
「ううむ。泰平になればじゃ」
「ええ、何ですの?」
「歌を歌うとでもいうの?」
「その通りじゃ。泰平の世にこそ歌は栄えるのじゃ」
 だからだとだ。袁術も戦いの果てに希望を見ながら言うのだった。
「だからこそじゃ」
「そうね。歌はね」
 曹操はその歌について具体的に述べる。
「泰平の世にこそ栄えるけれど」
「それでもなのじゃ?」
「乱れた世にも人を支えてくれてきたわ」
 その言葉は既に過去形になろうとしていた。
「だからこそ素晴らしいのよ」
「乱世にもか」
「だから貴女も歌ってきたんじゃないの?」
 袁術の方を見てだ。曹操は彼女に問うたのだった。
「これまで。色々な歌を」
「正直わらわは歌いたいから歌ってきたのじゃ」
「最初はそうだったのね」
「うむ、しかし今はじゃ」
「人の為によね」
「そうなってきたかのう」
 はっきりとした実感はないがだ。それでもだ。
 曹操の話を聞いてだ。腕を組み考える顔になって述べたのである。
「言われてみればじゃ」
「だからよ。それでね」
「ではじゃな」
「歌は歌い続けるべきよね」
「辛い時も楽しい時もじゃな」
 袁術もだ。そのことがわかってきた。
 まだ幼い彼女だがそのことがわかってきてだ。それで曹操に述べたのである。
「わらわはこれからも歌い続けるぞ」
「そうしなさい。だからね」
「凛じゃな」
「貴女にあげたんだから」
 既にだ。郭嘉はそうなっていた。
「惜しいけれどね。軍師としても優秀だし」
「済まぬのう。しかし凛はじゃ」
「貴女のものだっていうのね」
「凛と一緒にいるとそれだけで楽しいのじゃ」
 満面の笑みになって言う袁術だった。
「波長が合い過ぎて困るのじゃ」
「合い過ぎる位にね」
「何かあれがいいのじゃ」
「全く。負けたわ」
 二人の関係についてはだ。曹操もだ。
 ついつい苦笑いになってだ。それで言ったのだった。
「この私が女の子を誰かに譲るなんてね」
「そういえばですけれど」
 ここでふと言う袁紹だった。
「貴女のところのあの小さい軍師二人ですけれど」
「桂花と風ね」
「お二人共結構色々な世界で観ますわね」
「桂花はオートマになったりメイドになったりね」
「それに女王にもなってますわね」
「あの娘結構色々な世界に関わってるから」
 そのことについても言える曹操だった。
「下手したら私達以上にね」
「そうですわね。もう一人の方も」
「私達もだけれどね」
 実はそれは彼女達もだった。だがそうした話の中でもだ。
 誰もが決戦を見ていた。最後の戦いをだ。そしてその戦いの時は今まさに迫っていた。


第百三十五話   完


                          2012・1・10
 
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