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性格が美人過ぎて

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第一章

                性格が美人過ぎて
 高校の軽音楽部でギターを弾いている後藤睦夫の彼女である桜井カンナはお世辞にも美人とは言えなかった。
「何かおかめみたいな顔で」
「それで太り過ぎだから」
「ちょっとな」
「美人じゃないよな」
「どうしても」
「それで何で後藤は付き合ってるんだ?」
「桜井さんとそうしてるんだ?」
 周りはそうしたカンナと交際している後藤に首を傾げさせた。後藤は髪の毛を茶色にしていてきりっとした目鼻立ちに細面ですらりとした長身でファッションセンスもいい、まさにカンナとは正反対の外見で女子からの人気も高い。
 だがどんな美人に告白されてもだ。
「知ってるだろ、俺カンナちゃんと付き合ってるからな」
「駄目なの?」
「ああ、俺はあの娘一筋なんだよ」 
 こう言ってだった。
 後藤は誰に告白されてもカンナと付き合っていった。だが。
「あの外見でな」
「確か桜井さんってお金もないだろ」
「親父さんもお袋さんも市役所の職員さんだったな」
「別に貧乏じゃないけれど」
「そこそこで」
「家だって普通の大きさで」
「お金持ちでもないし」
 それにというのだ。
「持ってるものだって普通で」
「お金もないのに」
「外見もああで」
「本当に何で後藤は付き合ってるんだ?」
「全くわからないな」 
 こう言うばかりだった、それでだ。
 ある日彼等は後藤に彼を学校から少し離れた喫茶店に連れて行って尋ねた。そこにカンナがいないことも確認して。
「お前なんで桜井さんと付き合ってるんだ?」
「正直美人じゃないだろ」
「別にお金持ちでもないし」
「特に何もないってのに」
「何で一緒にいるんだ?」
「付き合ってるんだ?」
「決まってるだろ」
 即座にだ、後藤は友人達に強い声で答えた。
「性格だよ」
「性格?」
「桜井さんの性格か?」
「それか?」
「あのな、あの娘誰にも優しくて親切で公平でな」 
 後藤はカンナの性格を真面目な顔で話した。
「絶対に見捨てないし弱っている犬や小鳥だっていつも助けるんだぞ」
「そういえば性格いいよな」
「親切だよな、確かに」
「物凄く優しいし」
「悪口とか不平とか言わないし」
「そうだろ、俺あの娘のそうしたところを見てな」
 そしてというのだ。
「俺からな」
「告白してか」
「それで付き合ったのか」
「そうなのか」
「あんないい娘いないからな」
 やはり真顔で言った。
「だからな」
「それでか」
「あの娘の性格を見てか」
「そのうえでか」
「俺は一緒にいるんだよ」
 こう言うのだった。
「そうなんだよ、あのな」
「どうしたんだよ」
「征服のボタン取れてるの俺でも気付いてないのにすぐに気付いてくれて裁縫道具出してなおしてくたりな」
 友人達にこのことを話した。 
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