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店の予約はしろ

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第一章

                店の予約はしろ
 忘年会の季節になってだった。
 八条商事仙台支社営業課長蘆屋宏一色黒で細面で黒髪を後ろに撫でつけた広い額と切れ長の目を持つ一六七位の痩せた身体の彼は言った。
「忘年会のお店の予約取るか」
「何処にします?」
「お店何処にします?」
「そうだな、居酒屋にするか」 
 営業課の部下達にこう返した。
「同じ八条グループのお店だし八ちゃん仙台店でいいな」
「ああ、あそこですね」
「じゃああそこの食べ飲み放題ですね」
「それでいきますね」
「そうしような、去年は中華でその前は焼肉だっただろ」
 忘年会で行った店はというのだ。
「それならな」
「今年は居酒屋ですね」
「そっちに行って」
「皆で飲んで食べてですね」
「そうしような、しかし同じグループに外食産業があるといいな」
 蘆屋は笑ってこうも言った。
「そうしたらその分な」
「つてがありますからね」
「お店に高校や大学の同期がいたりして」
「楽ですからね」
「ああ、あの店の店長俺の大学の時の部活仲間だったんだ」
 蘆屋は笑って話した。
「八条大学のな」
「それはいいですね」
「それじゃあですね」
「そっちの店長さんにもお話して」
「今のうちにですね」
「予約しておくな」
 部下達にえがおでいってだった。
 蘆屋は自分で課の忘年会の場所を予約した、勿論人数も詳しい時間もコースもそうした。そしてだった。
 その日になると課の全員で仕事が終わるとその店に行った、そしてその時間に丁度店に入ってだった。 
 飲み放題食べ放題のコースを楽しんでいる中でだ。
 蘆屋はメニューの中にあったほやの刺身、仙台ならではのそれを食べながらそのうえで部下達に言った。
「実は俺お店に飛び入りでな」
「予約しないで、ですね」
「入ってですね」
「楽しむことがですね」
「そっちも好きなんだよ」
 ほやを食べてビールをジョッキで飲みつつ話した。
「実はな、けれどな」
「こうした時はですよね」
「予約取った方がいいですよね」
「やっぱり」
「そうだよ、大人数でいきなり来られてな」
 店にというのだ。 
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