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エターナルトラベラー

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エイプリルフール番外編 「夢」その4

過ぎて欲しくないと思っていても時間は確実に過ぎ去っていく。

ナルトの木ノ葉帰還を前に暁が尾獣を狙って動き出す。

その存在を明かしていないはずの俺だが…中忍試験の時の状況、また二位との接触を誰かに見られていたらしい。

それはアカデミー生のサバイバル演習に付き合って郊外へと出ていた時の事だ。

「これはこれは、可愛らしいですね。そう思いませんか?あなたも」

といつか木ノ葉の塀の上で会った干柿鬼鮫が隣のイタチに向かって話しかけていた。

その登場にはまるっきり殺気は無く、アカデミー生の皆は新しい特別講師でも来たのかと首を傾げていた。

しかし逆に俺は彼らの登場に一気に緊張が走る。

…来るべき時が来た、か。

「誰だコレっ新しい先生かコレ」

「木ノ葉丸ちゃん…たぶん違うと思うよ」

食って掛かる木ノ葉丸を必死に止めるモエギ。

「ナツ兄さま…」

「ハナビ、俺の後ろへ」

アカデミーの成績優秀と上の学年の実習に同行していたハナビを下がらせる。

「久しぶりだな、イタチ。俺は会いたくなかったが」

「な、もしかしてうちはイタチかっ!裏切者のっ」

と同伴していたアカデミーの教師が言う。

ジロリとイタチの写輪眼で睨まれると蛇に睨まれた蛙のように縮こまる。…勝てないなら最初から吠えるなよ。

「今日はお前を連れて行くために来た。俺と一緒に来てもらおう」

そうイタチが淡々とした声で言う。

「やなこった。どうせ碌な目にあわん」

「抵抗するなら多少の事は構わないと言われている」

「俺が捕まると思うのか?」

「飛雷神の術が使えるお前を捕まえられるとは思わない。だが…後ろのやつらはどうかな?」

「イタチさんにしては弱腰ですねぇ。前の時も思いましたがそれほどの人なのですか?」

と鬼鮫。

くっ…

木ノ葉丸、ハナビを始め大多数がまだアカデミーを卒業していない忍者見習い。

相手になるはずもないし、全員を逃がしてやれるほどイタチや鬼鮫は甘くなかった。

と言うか引率の先生も中忍程度なので敵うはずも無いのだが…

それで、俺が逃げればイタチはどうか分からないが、鬼鮫は見せしめにと後ろのアカデミー生を殺すだろう。

俺が足止めできるのは精々で一人…くそ、せめてイズミかスイが居てくれれば…

「ナツ兄様…私もご一緒します。…この中じゃ私が一番強い」

くっ…だがそれも事実。

「何を言っているのですかハナビさんっ」

「事実です。先生じゃあの二人を足止めもできずに殺されます」

「ほう、その年で言いますねぇ…その眼、日向の…やはり木ノ葉に日向ありと謳われるだけの事はある」

鬼鮫も小さいながらハナビの才覚を見抜いたのだろう。

「…ハナビ…絶対に無理はするなよ。お前が死んだら…俺は…」

「はい…」

相手の目的はあくまでも俺。最悪の場合は…うん、分かっているさ。

「二対二ですか。これでは後ろにまで手が回りませんねえ。どうしましょうかイタチさん」

「もとより目的は目の前のナツだ。そのナツが残ると言うのなら後ろなどどうなっても構わないだろう」

「と言う事で、逃げろ、今すぐにっ!相手が見逃してくれている内にっ」

「くっ…お気をつけて…さぁ皆さん、下がりますよ」

「ハナビは良いのかよコレ」

「あのナツさんが足手まといと判断したのは私たちなのです、聞き分けなさい」

どうにか後ろのアカデミー生との距離が開くが、どうやらそこらが時間いっぱいのようだ。

一歩も動かずにいられたのはここまで。

「イタチの相手は俺がする。悪いがそっち頼めるか?」

「任せてください」

「「白眼」」

俺とハナビの白眼を使った目元に隈取が現れる。

最初から仙人モード全開。どうせ動けないならとずっと練っていたのだ。

こそりとハナビに耳打ちをする。

(出来るだけイタチは俺が相手をする。ハナビはあの鮫みたいなやつだ。いいか、あの鮫のような男は水遁を使う)

(水遁ですか…)

(ああ、しかしそれ以上にあの刀がヤバイ。あの刀はチャクラを喰らう)

(チャクラを…)

(極力刀に触れずに戦うしかないな)

(分かりました、やってみます)

(それとあっちのうちはイタチは万華鏡写輪眼の開眼者だ)

(なっ!?それってイズミ姉様みたいな…)

(能力は幻術眼の最上位と視点発火による炎遁だ。両方とも食らったら死ぬ…覚えておけ)

(…ナツ兄さまも…絶対に死なないでください)

(ああ)

まだ誰ともにゃんにゃんしてないのに死ねるかっ!と言うかアレ?なんで俺結婚してないのでしょう?婚約者居るのに…

まあいい。…いや、良くないけど今は目の前の敵だ。

先制攻撃だ。

「木遁かっ!来るぞ」

ちぃ…この印は以前見せていたからか…これだから写輪眼はっ!

だが、この術が有効な事には変わらない。

「木遁・樹界降誕」

地面から木が乱立しうねる様にイタチと鬼鮫を拘束しようと蠢く根。

「なんと、これは驚きました。本当に木遁とは」

なんて言いつつもしっかりと避けている二人のレベルは高い。

「火遁・豪火球の術」

ボウと空中から吐き出されるイタチの火遁。

「溶遁・溶解の術」

ジュっと口から高濃度の酸を吐き出して炎弾を包み込むと消火のついでに飛び散った酸によるダメージを狙う。

「この攻撃…酸か」

イタチに当たる前に気が腐食してしまいその効果を悟ったイタチはクナイを投げつけると結んでいたワイヤーを手繰り強引に空中で体を捻って回避。

「はぁっ!」

「これはっ!ものすごく厄介ですね」

白眼でハナビを視れば柔拳の攻撃は鬼鮫の体術レベルが高すぎて当たっていないが仙人モードは周りの自然エネルギーも味方してその攻撃範囲は見切り辛い。

かわしたと思ってもダメージをくらう現象に戸惑っているようで、今の所ハナビが優勢だ。

振るわれる鮫肌の攻撃もその小さな体からくる俊敏さで巧みに避けている。

さて、天照の攻撃は凶悪だが、物の内部を燃やせる能力ではない。よって物質化一歩手前ほどの高濃度のチャクラを身に纏う。

「やはり尾獣を取り込んでいたか…」

ボコボコと赤いチャクラが漏れ出し体全体を覆うと尾が三本ほど現れる。

「手加減出来ないぜ」

手を付いて木遁の術を使いイタチの足元から木を乱立させる。

しかし写輪眼の前には木の生えるスピードが足りていないのか拘束できずにいた。

だが…目的は木遁ではない。

「なにっ!?」

突如イタチの背後の地面から生えあがったのは木々ではなくチャクラで出来た腕だ。

木遁を使いつつ、尾獣チャクラの衣を土の中へ忍ばせ形態変化させて伸ばしイタチの背後を付いたのだ。

「…天照」

ジュっと燃え上がる量腕。しかしそれはチャクラで出来た義手だ、と言うか燃やされた所でチャクラであり痛覚が有る訳でもないのでそのままイタチに掴みかかろうとして…

「なっ!チャクラが燃やされるっ!?」

腕に形態変化させたチャクラだが、天照の炎はそのチャクラを燃やしてしまっている。

掴もうとした腕は俺の制御を受け付けず、その質量を燃やされて減衰させていった。

「くっ…」

仕方ないとその両腕のチャクラを切り離す。

と、実はこれもフェイント。

本命は振り返ったイタチの上から振り下ろされる木人の拳だ。

木々を乱立させていると思わせておいて実際は木人を作っていたのだ。

「…須佐能乎」

斬と木人の腕が切り裂かれる。

イタチの須佐能乎がもつ霊剣、十拳剣だった。

くっ…前回の反省を生かしてチャクラの中に包まれて浮いており足元から引きはがす事が出来そうにない。

規模の小さい木人では抑えきれない…ならば…

屹立した木々を蹴ってイタチの真上へと移動すると尾獣チャクラモードでチャクラを纏いさらにチャクラを広げて尾獣化。

「…!それは…」

現れたのは巨大なナメクジの様な六本の尻尾を持ったチャクラの塊。

「尾獣版須佐能乎とでも言った所か」

忍法・屋台崩しの術。




「なんですか、アレは…まるで怪獣大決戦ですね」

「よそ見をしている暇は有りませんよっ!」

と言うとハナビが鬼鮫に躍りかかった。

「鮫肌が削り取れないチャクラとは…仙術とは厄介な物ですねっ!」

攻撃範囲は見切れないものの、戦闘感覚は抜きんでている鬼鮫だ。一度喰らった攻撃をそう何度も喰らう事などなかった。

ハナビの攻撃は必殺にはならず…しかも仙人モードは時間制限付きの力。ハナビは短期で決着をつけるしかない事実に内心は焦っていた。

攻撃をしのがれ、互いに大ダメージを受けることなく小規模なダメージばかりで決定打に掛けている。

「おや、どうやらその力時間制限があるようですね。焦って攻撃に慎重さが無くなってきましたよ」

見抜かれた。

「くっ…」

相手は百戦の強者、対してハナビは死闘はこれが初めて。その違いが能力差以上の力となってハナビに降りかかる。



ドドーン…

屋台崩しの術。

なんの事は無いただの圧し掛かりであるのだが、しかし…その巨体でのしかかるのだ相応に強烈なダメージを与える。

更に体表を覆うチャクラを酸に性質変化して垂れ流すと、ジュゥと音を立てて溶けはじめる須佐能乎。

須佐能乎の両手は六尾の尾で完全に固定して居る為に踏ん張りが効かない。

完成体須佐能乎であるのならば抜け出せたかもしれないが…意表を突いた攻撃に手も足もでないイタチの須佐能乎。

ジュッと音を立てて腹下あたりが焼け始め黒炎が舞う。天照だ。

が、無駄。

俺の込めたチャクラのすべてを燃やし尽くすのには時間が掛かるし、チャクラの塊であるために俺に痛覚は無く、逆に酸はどんどんイタチの須佐能乎を削ってる。

月読の幻術も視線を合わせないのなら脅威ではない。

尾獣と言えば尾獣玉が最高戦力だが、それも時と場合だ。

ハナビが近くに居る現状あまり派手な技は扱えないのである。逆にこの酸の攻撃は地味だが、ダメージ自体はデカい。

「くそ…」

横に逃げようとしても逃がさないぞ。

「木遁・樹界壁」

何重にも俺達を包むように取り囲む巨木。

更に液化スピードを上げれば酸のプールのようだ。

天照の炎の浸食と俺の酸の浸食では俺の酸の方に軍配が上がっている。

我慢比べは俺の勝ち。俺は天照が本体に燃え移る前に飛雷神の術で逃げれば問題ない。

「ここまで、か…」

「ああ、お前はここまでだ。イタチ…」

「いいえ、あなたがここまでですよ」

と第三者の声。

声の方を振り向けばハナビが鬼鮫に喉元を掴まれ気絶していた。

「……生きているか?」

「ええ、まだかろうじてですがね」

仙人モードが切れてからチャクラを鮫肌に限界まで食われたのだろう。

生きてはいるが、それは鬼鮫の一存でどうとでもなると言う事。

「まずは尾獣化を解いてもらいましょうか」

「くっ…」

ハナビを見捨てれば…



……

………いや、出来ないよな。

いくら考えても俺には出来ない。

尾獣化と解き、酸のプールの上に降り立つ。すると拘束を抜けたイタチの須佐能乎はドロドロに溶け、もう骨しか残ってない状態で這い出てきて飛び上がると須佐能乎を消したイタチは鬼鮫の横に降り立った。

「すまない、助かった」

「いえいえ、私の方もなかなかに強敵でしてね。まさか殴られた所を石化させる能力の持ち主とは…まぁギリギリのところで肉事抉り取って事なきを得ましたがね」

鬼鮫は鮫肌からのチャクラ供給で自身の肉体すら修復できる化け物だ。流石に仙人モードでもハナビにはまだ荷が重かったか。

「なあ、一つだけお願いしていいか?」

身に纏うチャクラを霧散させ、脱力させて問いかけた。

「何だ?」

とイタチ。

「ハナビはまだ子供で、お前たちの目的とは関係ないのだろう?」

「ああ」

「ならばハナビを家に帰してやってくれないか?」

「良いだろう。この娘はここに置いていく」

「良いんですか、イタチさん。この娘は日向宗家の…」

鬼鮫の反論。

「俺達の目的は六尾だ。その娘はここに置いていけ」

「イタチさんがそう言うのなら…しかししっかりと鮫肌でチャクラを削ってからですよ」

と言うと降りて来た鬼鮫の鮫肌が俺のチャクラを削り取り…意識を保てなくなるレベルまだ削られ意識は暗転した。



……


鬼鮫は右にナツ、左にハナビを抱えたまま森の中を走っていた。

「幻術の中でなんて答えたんですかね?」

「…お前にはどうでも良い事だ」

ナツが諦めて見上げた瞬間、イタチは月読を使ってナツに幻術を掛けていたのだ。

だからナツの懇願も、ナツへの返答も現実では何もなされていない。

「宗家の白眼は貴重ですからね。サソリ辺りに渡してしまえばどうなる事やら」

喜んで人傀儡にされてしまうだろう。そうじゃなくても抉って誰かが使えばいいのだ。

木ノ葉の追手が掛からないように細心の注意を払って足跡を消して十分な距離をあけると、以前から見繕っていた洞窟の中にナツを横たえた。



「うあああああああああああっ!」

ハナビは誰かの苦悶の声で覚醒した。

「うぁあああああああああああっ!!」

「ナツ兄さまっ!」

「あらら、目が覚めてしまいましたか。でもまあ鮫肌が触れている限りチャクラは練れませんよ」

と鬼鮫。後ろ手に手を縛られチャクラを練ろうにも限界まで削り取られている。まさに手も足も動かせない状況だ。

「何をしているんですかっ!」

手は出ないが、声は出せる。ナツから巨大なチャクラが出て行っているように感じて恐ろしくなって問いかけたのだ。

「これですか?」

「鬼鮫…」

「良いではないですか。どうせ二人とも死ぬのですから」

「………」

イタチももう止めなかった。

「これは幻龍九封尽と言いましてね、尾獣を人柱力から引きはがす封印術なのですよ」

「なっ!そんな事をしたらナツ兄さまは…」

「ええ、尾獣を抜かれた人柱力の末路は死、だけです」

「そんなっ!」

それからハナビはあらん限りの声でナツを呼び、また叫び続けたがその封印術が解除される訳もなく。

ただただハナビにとっては地獄の時間が過ぎていく。

自分が…自分が弱かったからナツは敵につかまって今まさに殺されそうになっていると言う事実。私がもっと強かったら…私がもっとちゃんと鬼鮫を引き付けておければ…そう後悔の念でつぶされそうになるハナビを後悔の底へと落とさせないのは皮肉にもナツの苦悶の叫び声が続いているからだ。

「兄さま…兄さまっ!」

うっすらと記憶が有る。自分が鬼鮫に負けた後、ナツ兄さまは自ら尾獣化を解いていた。

「ううっ…兄さま…お願い…死なないで…お願い、します…」

二日間、ハナビは叫び続けたが状況は変わらない。

いや、ついにナツから叫び声すら聞こえてこなくなった。

「そんな…」

ハナビは怖くて目をそむけたくなったが、必死に奮い立たせナツを見る。

まだ、生きてるはずと見れば、どさりと転がされるナツの体。

もうイタチと鬼鮫は印を組んでもいなかった。封印術は終了したのだろう。

「そんな…ナツ…兄さま…」

何度も止めようと近づて弾き飛ばされただろう。しかし今回はイタチも鬼鮫もハナビを止めなかった。

チャクラが底を付いていて重たい体、手足を縛られて自由が利かないその体をまるで芋虫が這うかのようにしてナツへと向かう。

ハナビの顔は涙でべしゃべしゃ、幾度も転がされて青あざもいっぱいだ。

だが、それでもとナツへと体を伸ばす。

「兄さま…ナツ兄さま…しっかし…しっかりしてください…兄さま…目を…目を開けてください…」

ドサリとナツの上にようやくたどり着くと、縛られて助け起こすことも抱きしめる事も出来ない体で懸命に呼びかける。

「無駄だ。もう六尾は居ない」

とイタチが冷酷に言う。

「まだです…まだ死んでませんっ」

日向の籠の鳥の呪印がまだナツの額に刻まれていた。

「たとえ生きていたとしても、もう長くは無い…尾獣を抜かれた人柱力は死ぬ」

最終宣告だった。

「よう…ハナビ…」

「兄さまっ!」

「逃げ…る…ぞ」

都合よくハナビはナツと接触している。残ったチャクラを総動員させれば一度は飛雷神の術で飛べるだろう。

「させませんよっ!」

と鬼鮫が鮫肌を振るうが少し遅い。

鮫肌は空を切ると地面を抉っただけだった。



飛んだ先は自分の家の自室だ。

「ここは…ナツ兄さまの…部屋?っ!!誰かっ!誰か居ませんかっ」

と言うハナビの声に駆けつけたのはカイユ。

イズミ達が居ないのは行方不明になったナツとハナビを探しに行っているからで、カイユがここに居るのは飛雷神の術で飛んで来るなら此処だろうと言う事で残っていたからだ。

「こ…これは…ハナビちゃん…な、ナツ…さん?」

「お願いします、ナツ兄さまを助けてくださいっ」

「っ!」

すぐにカイユの虫がナツの体内へと入れられるが…

「だめ…ナツのチャクラがもう…」

「そんなっ!」

ナツ発見の報はすぐにイズミ達に知らされ、半刻後には皆緊急搬送された病院へと集まっていた。

「ナツ…」

「ダメだ…医療忍術の限りを尽くしてみたが、散逸した生命力を戻すすべがない」

と綱手。

「そんな…ナツが…」

「ナツ兄さんが…イヤ…イヤだ…」

「け、かっこつけが…死んじまいやがって」

「わたしの虫でももう施しようが…すみません」

「ハナビ、ナツがこうなった原因は?」

何なの、とイズミ。

「六尾が抜かれたからです。人柱力は尾獣を抜かれると死ぬって」

「人柱力だと?お前、いつから」

「今はそんな事はどうでも良いんですっ!」

綱手の言葉を一括するイズミ。

「でもそれならまだ手が有るかも」

「どう言う事だ?」

「六尾のチャクラはまだここにあります」

と言うイズミの体をボコリと赤いチャクラが覆う。

「それは…まさか」

「ナツが分けた六尾のチャクラです」

「あ、それなら…ボクも…」

「わ、わたし…も」

「私も…ほら、ハナビも有るでしょう?」

「え、…なんで?あの時は何も感じなかったのに」

戸惑うハナビもヒナタに促されるように六尾のチャクラを纏った。

「ウチもか…何というかここに六人の六尾のチャクラを持っている存在が居ると言うのは…このバカがこうなる事を見越していたような気がするな」

と多由也。

「そうかも知れないわ。だからハナビがピンチの時にも尾獣チャクラは反応しなかった。ハナビの持つ尾獣チャクラを取られる訳には行かなかったから」

「それをどうするのだ。それは確かに六尾のチャクラだろうが、尾獣と言う流し込む器が無ければチャクラを戻しても抜けていくだけだ。それでは一時的にはもつだろうが、チャクラが抜けきってしまえば結局は死ぬ事になる」

「器…そうだっ!」

イズミはナツの忍具の中から巻物を取り出すと手当たり次第に口寄せ。

「あった」

ようやく目当てのものを引き当てたようだ。

「あ、それって…」

とスイ。

「今は時間が無いから」

と解封すると現れたのは何かの実。

「それは?」

それはいつかの任務でナツが回収した神樹の実の殻だ。

「まず、これをナツに封印する」

と時間が惜しいのかイズミは万華鏡写輪眼を使ってその実をナツに封印する。

「お前、万華鏡写輪眼を…」

驚く綱手。イズミが使えるとは知らなかったのだろう。

「すぅ…」

「あ、少し呼吸が安定してきましたよ」

とスイ。

「器は出来た。後はここに六尾のチャクラを封じ込める。皆…」

とイズミがそれぞれを見渡せばだれもが頷いて返した。

一人一人がナツの胸の上に手を置くと、名有れる河川の如く六尾のチャクラはナツへと流し込まれていった。

心電図、呼吸音ともに安定。

「大丈夫、なの?」

とはハナビ。

「計器類を見るに峠は越えたようだ。これなら大丈夫だろう、まったく…しかし六尾の件は後で報告してもらうぞ」

と言って綱手は部屋を出て行った。

「よかったよぉ」

スイが安堵の言葉を吐く。

「よかった…よかったです」

「ナツ兄さま…うわーーん」

ヒナタ、ハナビとも泣いている。

「たく、心配かけやがって」

「こくこく」

悪態を吐きつつも安心したと言う多由也と頷いて涙ぐむカイユ。

「ナツ…本当、バカなんだから…」

イズミはしょうがない奴だと表情を崩したのだった。



……

………

何とかイズミ達のおかげで一命を取り止めた俺だが、後遺症が無かった訳ではない。

今日は綱手様に呼ばれていて火影室に行かなければならないのだが…

「ナツ兄さま、こちらを」

と言って差し出されてくるハナビの右手。逡巡した後に軽く握った。

別に忍者の鋭敏な感覚で感知出来ているからそれほど困らないが…こういう時にハナビがどういう顔を浮かべているのかが分からないと言うのは少し困る。

照れているだろうか、はにかんでいるだろか…それとも…

ハナビの表情は暗い。

あの時、あの六尾を抜かれてしまった事件で俺は一度心停止したのだろう。

結果呪印は死亡したと判断し、白眼を封印してしまった。

呪印は消えているから間違いないだろうが、結果どうにか生き返ってみたものの完全に視力を失っていたのだ。

その為、自分の家ならばまだしも里の中を歩く時なんかはこうしてハナビや誰かに手を引いてもらわないと少し危うい。

まぁ盲導犬でも良いのだろうけれど…盲導犬の役目をする忍犬を雇うのも結構な出費な訳で。

「そんなに気にする事ないぞ。こうなってみればしばらく忍者は休業で危険な任務に行かなくて良いだろうしな」

そもそも休業じゃなく廃業かもしれんが。

「ただ、まぁ…美人になっていくだろうハナビの顔を見れないのは残念ではあるな。ハナビは絶対に美人さんになるに違いない」

ああ、惜しい事をしたっ!ととぼけて見せるが、逆効果か。

「ナツ兄さま…」

火影室まで行くと六尾の事はイズミとスイからは事情を聴いているだろうし、イタチ、鬼鮫の襲来で厳重体制が敷かれている。すでに任務に出ていた為に今回は俺とハナビの二人だ。

「六尾の件に関してはそんな感じですね」

「どうして私に相談しなかった」

「相談も何もそもそも人柱力になったのは三代目の時ですし綱手様はまだいらっしゃいませんでした。それに人柱力は里間のパワーバランスに大きく影響を与えます。木ノ葉は既に九尾を持っていましたから…」

「たとえ木ノ葉の里と言えどバラす訳にはいかなかったか」

「ですね。クーデターの混乱の最中とは言え霧隠れから奪ったようなものですし、あちらも知らんぷりをしてくれていたようで助かりました」

まったく、と綱手は嘆息する。

「それでお前らを襲った連中だが…」

「一人はうちはイタチです。もう一人は霧隠れの忍刀七人衆が使う一本を持っていました」

「イタチと言う事は暁か。暁が尾獣を狙っていると言う事がこれで確定したわけだな」

「どうして尾獣を狙ったんでしょか」

とハナビ。

「尾獣は里のパワーバランスに使われるほどの巨大なチャクラの化け物。それを奪うとなれば忍の世界に新たなる混乱を必ず招く」

長門ではなく暁の真の支配者であるオビトの目的は十尾復活による無限月読の発動による人類救済だ。

まぁそんな事は今は言えないが。

「それで、体の調子はどうなんだ?」

「目が見えない以外は特に問題は有りませんね。六尾は抜かれてしまったけれど何とか生き残りましたし、これで俺が暁に狙われる事はもうないかと」

「目はやはり見えぬか…」

綱手の言葉にハナビの方が落ち込んだ。

「まぁ、こればっかりはしょうがありませんよ。生きてるだけで幸運でした」

「…でも…宗家の呪印が無ければナツ兄さまの眼が見えなくなることも無かった」

「何度も言うけれど、生きているだけで幸運と言う事だよ。ハナビ」

そう言って頭をくしゃりと撫でようとして…空を切った。

「あはは…まだ勘が鈍いかな…」

スっとハナビの方から頭を寄せてくれる。

「気にするな、と言うのも無理か。けれど、ずっとこのままと言う事も無いぞ。今の医療忍術は他者から眼球の移植くらい出来るのだからな。…まぁ使っても良いと言うやつが居ればの話だが」

拒絶反応なんかも有るし、血縁者でもない眼をはめるのはリスクが高い。それに使っていいと死にかけで遺言を残す者も稀だ。

死体から勝手にとかは一応倫理上許されていない。

「どうせなら写輪眼でも落ちてませんかね?」

ブチ

「ナツ兄様…?」

「あ、いやいや、うん…ごめん…俺、日向…白眼サイコー…いぇいいぇいっ!」

だから白眼で睨むのはやめような?

「まぁ実際は…宗家の籠の鳥の呪印の封印自体はイズミの万華鏡写輪眼で解呪してあるんですよ」

イズミの万華鏡写輪眼は流石のうちはチートとでも言うべきで、封印術の開封には特に適した目をしていた。

だから、何とかならないかと一番で試していたのだが…

「そうなのか?」

「はい」

「ならばなぜ見えん」

「さあ?それは俺にも…」

分からんものは分からないしね。

「それで、お前の体の中に入った六尾のチャクラだが…」

「それは…うーん、説明が難しいですね」

「人柱力なのか?」

「感覚的には尾獣チャクラはしっかりと感じるけど、六尾の意思の力を感じない。石造のような物にチャクラを封じて、それが俺の中にあるような、と言った所でしょうか」

神樹の実の殻が外道魔像の様な働きをしている、とそんな感じだ。とは言え説明が難しく神樹や外道魔像なんて教えられないのでぼやかしてしか言えないが。

「あの実はなんだ…とお前たちに問うても答えは無いか。私でも分からない事だし、任務報告書にも上がっていたな。燃やした、と書いてあったが」

「あは、あはは…」

まぁ、と言葉をつづける。

「人柱力なのか、と言う問いには近しいとだけ。ただ、人柱力のように使っても回復するものとは違うようです。チャクラは意思の力で練るもの。意思の力が無い状態では使えば減るだけです。それで、無くなれば終わりと」

「人柱力と似ていると言う事は使い切れば…」

「当然死にますね」

「ナツ兄さま、絶対に使わないでくださいね」

とハナビが念を押す。

「お、おう。もちろんだ。俺はまだこの年で死にたくないしな」

「…でも、私の為に自分から…」

「何か言ったか?」

「な、何でもないです、ナツ兄さま」

「まぁ事情は分かった。今日の所は帰ってもらって結構。忍者復帰については…そうだな…」

「目が治らない以上復帰は出来ませんね。何、今までに貯めたお金で生きる分には困りませんし、大丈夫ですよ」

「忍者登録は継続しておく。お前の眼も必ずなんとかしよう」

綱手様も一応解決策を模索してくれるようだ。

帰りもハナビの手を握って屋敷へと戻る。

「こうしていると恋人同士に見えるでしょうか」

「ぶーっ!ハナビ、大人をからかうものじゃない。それに、精々兄妹と言った所だろう」

「むぅ…兄妹ですか」

不満そうにむくれるハナビ。

「いつかきっと、…いいえ、そんな事よりも…ナツ兄さまの眼は私が治してみせますね」

「いや、そう簡単には治らんだろう。眼球移植くらいしか手がなさそうだが…まぁ、な?」

「いいえ、必ず治します…必ず」

ハナビの力強い言葉をポンポンと頭を撫でてごまかして家路を急いだ。


日向宗家、ヒアシの部屋でハナビとヒナタがヒアシと対面していた。

この形になったのはヒナタがヒアシに呼ばれていた所にハナビが後から部屋に入って来たからだが。

「どうした、ハナビ。急に改まって話とは」

そうヒアシが問いかける。ヒアシもハナビに突如として来られて話の内容は察せないらしい。

「はい。長らく先送りにされてきた日向宗家の跡目の問題ですが、正式に辞退させていただきたく」

「……」

「ハナビっ!?」

ヒアシは無言、ヒナタは単純に驚いたらしい。

「…それを今言うと言う事は、ハナビ、お前は何かを決めたのだな」

「はい。私はナツ兄さまの眼になると決めました」

「それはあやつの日常の世話をすると言う事か…だったら」

と言葉を繋げようとするヒアシの言葉をハナビが切る。

「いいえ、言葉通りです父様」

「言葉通りとは…?」

「そのまま。私の眼をナツ兄さまに移植します。これでナツ兄さまは眼が見えるようになるはず」

「なっ!?」

「……ハナビ、どうしてだ?どうしてそのような事を」

「ナツ兄さまが敵に捕まったのは私が弱かったからです」

「それは…だが」

「だけど、ナツ兄さまが光を失ったのは宗家の責任です。宗家の…籠の鳥の呪印…これのせいで…ナツ兄さまは…」

「本来、分家を縛り、死すればその白眼を封じる呪印。…まさか死して後甦るとは誰も思っておらんかった」

「それは言い訳です。結果だけを見れば宗家の呪印がナツ兄さまの光を奪いました。ナツ兄さまは分家として宗家を…私を…ちゃんと守った。その結果がこれでは…私は納得できません」

「だから自分の眼をあやつにくれると」

「はい。父上、止めても無駄です。たとえ籠の鳥の印を刻んでも生前での奪取には効果は有りません。つまり私を止める事は出来ない」

「お前を宗家で拘束する事も出来るが」

「…確かに私は弱い…弱いからナツ兄さまを犠牲に生き残った…ですが…ナツ兄さまに鍛えられた私が宗家に閉じ込められると思わないでください」

スウゥと隈取が現れる。仙人モードだ。

「そこまで…そこまでか…だが」

「父さま。私も、…あの…私も宗家の跡目から外していただけないでしょうか」

「姉さまっ!?」

「ヒナタ、お前まで何を言う」

「私も…ナツ兄さんに助けられたから今生きています。だったら、ハナビが両目を差し出す必要はありません…。姉妹で半分こ。片方ずつナツ兄さんの眼になれば良いだけです」

「だが、それでは日向の跡目は…」

片目で日向の跡継ぎとは誰も納得しないだろう。

「それはネジ兄さんが居ます。分家ですが、父は父様の双子の弟であったはず、血の濃さは宗家と変わりません」

「ヒナタもハナビも考え直す事は出来ないのか?」

「はい」
「…出来ません」

「…………………お前たちがそこまであやつの事を好いているとは…予想外であった。これは宗家が負うべき業、この鎖は我らの代までとしよう」

「父様っ!」
「ありがとう、ございます…」


後日、日向宗家の跡目は正式にネジが継ぐことになり、俺は誰の眼か分からないままに移植の日を迎えた。

目の包帯を取る。

「目は見えるか?」

と手術の執刀をした綱手が確認する。

俺は取れた包帯に強い明りを感じつつも瞼を開いた。

「見える、な」

「ナツっ」

「この、ボク達を心配させてっ!」

「このボケナスヤローが」

「コクリ」

しかし、…

「良く馴染む…でもいったい誰の…」

と言う言葉で俺は凍り付いた。

ハナビとヒナタが片目ずつ眼帯を巻いていたからだ。

「まさかっ!?」

病室に設置してある鏡を見れば見慣れた薄紫の瞳。

ヒナタとハナビを見れば片目を眼帯が覆っていた。

「そう、その眼が誰のものか、言わなくても分かるな」

と綱手が言う。

「ヒナタ…ハナビ…俺の為に自分の眼を…なんて事を…」

「いいの…大丈夫だから…」

「片目は残っているんだし、日常生活は問題ないしね」

「だが…」

俺の所為で…

「くっ…くく…」

「だ、ダメだよハナビ…でも…くっ…」

「ふふっ…」

「「あははははは」」

何?

急に笑い出したヒナタ達。

周りを見ればイズミ達も笑っていた。

「ごめんなさい、ナツ兄さん」

「実は…」

と言って眼帯を外すヒナタとハナビ。そこにはしっかりと白眼が。

「何…どう言う事?」

あれー?

「それはお前の白眼だ」

と綱手。

「え、どう言う事、見えてるの?」

「見えてます」

「バッチリです」

ヒナタが照れながら、ハナビはブイサインをして答えた。

もう一度どう言う事と綱手を見る。

「お前の眼は確かにハナビとヒナタの白眼だが、お前の白眼をどうするか。呪印の封印自体は解けていると言うではないか。で、あるならと戻してみた所どうにか適応したようでな」

良くわからないが俺の眼をはめたら見えた、と言う事?

「白眼は…?」

「それも問題ありません…」

「寧ろ前より良く見えるかもしれません」

え、そう?

「それで、お前は?白眼は使えるのか?」

ああ、そうね。

印を組むと眼にチャクラを送る。

「白眼っ!」

ミキミキと視神経に繋がる経絡系が浮き上がる。

ドクン…

「あがっ!」

目に激痛が走った。

「何、どうしたっ」

「ナツっ!」

「何でもない、…ちゃんと見えてるよ」

ほっと皆が安堵の顔を浮かべていた。

しかし、いったい何だったんだ、今の?

経過を見てたが、しばらく入院したのち問題ないだろうと退院。

しかし、時にやはり眼球が胎動するような痛みを感じる。

とりあえず皆を不安にはさせられない。このまま秘密にしておこう。

何て事が一緒に住んでいるイズミ達に出来る訳もなく…

「ナツ…その眼」

そうイズミが言う。

「眼?」

「碧く光ってる…?」

と、スイ。と言うかお前さ…

「本当…でも白眼なの?」

「綺麗です」

「うん…うん」

「そうか?なんか気持ち悪くねえ?」

おい、イズミや多由也はともかくなんでヒナタやハナビ、カイユまで当然のようにいますかね?

しかし眼がどうした?

と鏡を見れば瞳孔かあ二重十字が放射状に輝き碧く光っていた。

「え…え?転生…眼?」

何で?

「テンセイガン?」

しまった。

イズミの赤い視線が鋭く俺を射抜く。

「誤魔化されては…」

「くれないわよ。これだけの人間が聞いていればね」

周りを見れば確かに皆の視線が俺に集まっていた。

「転生眼ってなんですか?」

とハナビが言う。

「ナツ。誤魔化さないでね」

あちゃぁ…

「転生眼。大筒木のチャクラを持つものが日向の白眼を得た時に開眼出来る幻の瞳術…のはずだが…」

「大筒木って…確か…」

「伝説の六道仙人の苗字じゃ?」

そうイズミとスイ。

「六道仙人…確かに大筒木だが、彼の名前は大筒木ハゴロモと言う。彼は輪廻眼の持ち主として有名だ」

「じゃ、じゃあナツ兄さんが言う大筒木って?」

「六道仙人の弟、大筒木ハムラ。それが日向の始祖。彼は白眼を持っていて、唯一転生眼を開眼した大筒木の当主だな。大筒木の一族は月へと移住したと言う話だったが」

「月だぁ?」

と多由也が胡散臭いなと声を上げた。

「昔親父が母は月へ帰ったと言っていて…子供心に死んだんだと思っていたのだけれど」

「違ったようね」

どうやら俺を生んだ後本当に月に帰ったようだ。

「それにしてもそんな誰も知り得ないような情報、よく知っていたわね」

ジロリとイズミに睨まれた。

「それじゃあ…ナツ兄さんは…大筒木と言う一族の血を継いでいると?」

「父はもう鬼籍だ。事実は確かめようがないな」

と言うか。

「血継限界の一族の多くはそれこそ大筒木に源流を置く者が多い。大筒木の血を引くなんてのはほら、日向以外にも意外と居るだろう?」

とイズミを見た後に多由也を見る。

「わ、私…?」

「なんでウチを見る」

「木ノ葉創始者のうちはと千手は大筒木ハゴロモ…六道仙人の家系だ。うずまき一族は千手一族の傍流。ほら、結構ありふれているだろう?」

スイとカイユを除く殆どが大筒木の子孫と言われて皆驚いていた。

「それで、結局その転生眼って何が出来るの?」

「……さあ?」

何が出来るのかと言われても…俺も詳しくは知らないよ?

とりあえず実験も兼ねて色々探ってみる事に。

とりあえず転生眼はすべての性質変化を己の者として使えるようだ。今まで使えなかった火遁なんかもイズミと同じ威力で使えている。

ただし転生眼の時しか使えないので一種のエンペラータイムだ。


それとどうやら六道の術に似た事が出来るらしい。

引力、斥力を操ったり他者のチャクラを吸収したり出来る。

また転生眼ですべての性質変化を合わせる事で黒い球体が現れた。

これはすべての性質変化を混ぜたもので血継網羅と言う。

この球を形態変化させるのはものすごく辛いが、慣れればこれは万能武器になるのではなかろうか。

なんせコレはガード不可、仙術チャクラを練れない者は当たったら死ぬ、が素で出来るのだから…

無敵能力に見えるが、求道玉の維持には尾獣を持たない俺ではチャクラ量が足りず持続時間が短い。必殺を決めた時にしか使えないだろう。

銀輪転生爆と金輪転生爆は固有技であるらしく俺には使えなかった。


それと最後に一番大事な事を言おう。

どうにかこの転生眼、オフにする事が出来ました。

いやぁ、良かった。本当に…

でなければ輪廻眼みたいに終始出っぱなし、光りっぱなしになる所だった。本当に危ない所だったぜ…

こう言うのはここぞと言う所で使えてこそだろう?



ナルトの帰還を前に三代目火影・猿飛ヒルゼンが死んだ。

屍鬼封尽で魂を分割封印していたヒルゼンは寿命と言う事になるだろう。

三代目の葬儀はしめやかに行われた。

泣いている人も多いが、愛されての葬儀だった。


「中忍試験?」

「出るんですか、ヒナタ姉さま」

「うん、出てみようかなって…思って」

いつの間にか俺の家で朝夕を取っていくことが当たり前になっている日向姉妹。

「へぇ、もうそんな時期かぁ」

「こくこく」

そうスイも言う。と言うか、だから当然のように…いや、あまり音を立てないから忘れがちだが普通にカイユも居るな…

「中忍試験って木ノ葉と砂の合同開催のやつでしょ?ナツには警備と試験監を割り振られていたわよ」

そうイズミ。

「マジか…」

「中忍試験か…ウチも今は木ノ葉の忍だけど、こういう日の当たる場所には出れねーからな」

多由也が複雑そうな表情で木ノ葉の額あてを撫でた。

「多由也ちゃん…」

ヒナタが表情を曇らせて多由也を見やった。

「んな表情すんなって。別にウチはこれでも今の生活満足しているんだよ」

多由也は綱手の推薦で中忍へと昇格しているが、立場は綱手直轄の護衛だ。どちらかと言えば仮面をしていないが火影直属の暗部と言う所か。

一度綱手様に噛みついてみた事があったようだが鉄拳制裁されてから頭が上がらないらしい。

「まぁ、頑張ってみな。ヒナタは強くなったし、きっといい結果になると思うよ」

「ナツ兄さん…はい、頑張りますっ!」

おう、頑張れ。と言うか実際ナルトが帰る前にヒナタは中忍になっているのだから、どこかで試験を受けていたと言う事だろうしね。

そうして始まる木ノ葉と砂との合同中忍試験。

一次試験は木ノ葉で行う。これは伝統的にペーパーテストだ。

だがこれもいつも通り裏の意図を読み取れなければ合格できないようになっている。

二次試験は砂で行うらしく、一次試験の合格者は期日までに砂へと移動しなければならない。しかもここでも篩(ふる)いに掛けられるらしく上から規定組みで足切りされる。

そうして始まる二次試験は、砂隠れらしく砂漠の広がる広大な演習場。

この試験中、木ノ葉の付き添いの忍は試験会場に入らないようにとの命令が風影である我愛羅が出していた。

と言う事で付きそうで来た俺も試験会場には入れず。

「なんだ、あれは…白眼っ!」

遠視で見ればとてつもない大規模な砂嵐がこちらに迫ってきていた。

「どうした、ナツよ」

とゲキマユ…もといガイさんが言う。

ネジたちの担当教官として砂に付いてきていたのだ。

隣には夕日紅と猿飛アスマが居た。

「いや、ちょっとあっちに…」

と言っていると木ノ葉からの密書をもった鷹が現れガイが密書を受け取った。

「ふむ…困ったことになった」

「どうしたの、ガイ」

「うむ、火影様の書状なのだが」

纏めるとこの試験は試験担当官として現場入りした我愛羅を良く思わない勢力を釣りだす作戦ではないか、との事。

同盟国の木ノ葉としてはここで我愛羅に潰れてもらっては困るらしく、影ながら護衛しろとの事。

「まったく無茶な事を…」

「だが、命令は命令だ。皆、行くぞっ!散っ」

ガイの命令でそれぞれ魔の砂漠へと足を踏み入れた。

ドクン…

なんだ、今のチャクラは…

何か大きなチャクラがはじけるのを感じてその方角を遠視する。

「なんだ…?我愛羅が…何か鎖が刺さっている?」

ここからでは良くわからない。火影の命令は我愛羅の護衛。

とりあえず行ってみなければ…ガイさん達は…ちょっともう行っちゃったよ…連絡は無理か。

大砂嵐が近づいてきていて連絡の取りようがなかった。

この大砂嵐で二次試験が一時中断されるのだが、そこに忍び寄る魔の手。

法師が放つ鎖が我愛羅に突き刺さり、そこから尾獣チャクラが吸い取られているようだ。

「まさか暁か?」

いや、法師が纏う服に赤い雲の模様は無い。それに暁はツーマンセルで行動する。しかし白眼で見れば近くにはそのような忍者は居ない。

「って、拘束されてるの増えてるしっ!?」

え、女?…だよな、胸無いけど…って言うか誰だよっ!?

感知すれば尾獣チャクラのようだけど…どう言う事?

「尾獣チャクラを鎖を通して抜き出している?」

マズイな。中忍試験の最中に我愛羅が死ぬようなことになれば木ノ葉と砂の関係が悪化するかもしれない。

此方からだと我愛羅達の方が近く琵琶法師の方が遠いな。

と言うか、なんだか瓢箪の様な繭に包まれちゃってるけど我愛羅達。

それにああ言う術を一人で使うと言う事は防御術は持っているはず。となれば鎖を外す方が先かな。

現場に到着すると鎖の前に立つ。

「うーん…尾獣チャクラが抜かれていっているな」

琵琶の音が耳に付く。

この術によほどの自信があるのか俺が近寄っても余裕の表情を崩していない。

俺は右手を突き出すと転生眼の封術吸引を使ってチャクラを吸い取る。

「何っ!?」

ここでようやく琵琶法師の驚きの声。

鎖は何かの文字になり分解されていく。

「バカなっ!」

おっと、そっちは手加減する気は無いぞ。

とその鎖と掴むと琵琶法師のチャクラを吸収。動けないくらいまで衰弱させた。

「これは…」

「どう言う事っス?」

「それは俺が聞きたいが…木ノ葉としてはここで風影に死なれては困るから助太刀しただけだ」

「試験会場への侵入は禁じていたのだがな」

「あは…あはは…」

「まあいい。助かったのは事実だ」

「そうっす、ありがとうっス。あっしは滝隠れのフウっす。友達百人作るのが夢ッス。友達になってくれないっスか?」

「え、あ…はい…」

勢いに押されてついつい頷いてしまった。

「やったー、うれしいッスっ!ひゃっほーっ」

「それで、首謀者の方だけど…」

「そいつはオレに任せてもらおう…オレには風影としての責任がある」

結局、この中忍試験は風影襲撃事件を受けて二次試験で中断されることになる。

試験結果は精査の後各里に渡され、各々の判断で中忍昇格とすべし、だって。

ヒナタはこの試験も頑張っていたらしく見事に中忍に上がっていた。

その昇格パーティーは我が家で盛大に執り行われることになるのだが…なぜに我が家?


「そう言えば…」

ある日の修行中、今日はハナビやヒナタも一緒に修練場にいた時にイズミが唐突に話題を振って来た。

「何だ?」

「瞳術眼…写輪眼や白眼は他者に移植しても使えるわね」

「それは…確かにコピー忍者カカシはうちは一族と言う訳ではありませんよね」

とイズミの言葉にスイが答える。

カカシはうちは一族の誰か…オビトからその写輪眼を譲られていたのだ。

「確かに使えるらしいね。チャクラ消費が多いらしいがな」

「それはうちは一族じゃないからじゃないかしら。と言う事は、あんたの転生眼を移植すればヒナタ達なら使えるのかしら…と言うより、あんた他の白眼を嵌めれば転生眼を増やせるのかしら?」

「え?」
「え…?」
「ええっ!」

驚きの声を出したのは日向の三人。

「いや、そもそも白眼だけなら俺自身持ってたし。…だからたぶん呪印に縛られている白眼ではダメだと思う」

「そうね。でも宗家の白眼はもう一対あるわね」

そう言ってハナビとヒナタを見る。

「確かに…」

「ハナビ…」

そうなれば戦力増加にはなるだろう。だが…

「どうなんだろうな…」

うちはマダラが輪廻眼を開眼したあと、なぜ他者の写輪眼で輪廻眼を増殖させなかったのか。

つまりこれは出来ないと言う事なのではないだろうか。

しかし、様々な偶然が重なった結果だろうけれど、今回は開眼する前と同じ目がもう一対ある。

「試してみましょう」

「えー…結構痛いのよ、アレ」

白眼の胎動はズキズキ痛いのよ…俺にはそこまでのマゾ度は…っておい、ちょまっ!!



……

………

「ぐぁ…ううぅ…」

「ほらナツ。ひっひっふぅ、はいっ!」

「ラマーズ方かよっ!俺は妊婦じゃねぇっ!」

何気に酷いぞイズミ。

「違いますよ、イズミさん。酸っぱい物なら食べれるかもしれません。はい、レモンです」

「悪阻でもねーよっ!」

とスイに突っ込む。

どうやら本当に同じ人物の眼であったためか再び転生眼の胎動に苦しめられるハメに…

い。

「転生眼製造機ね」

「不名誉だっ!」

とは言え…

「まぁ、もう無理だと思うぞ。前と同じ眼だったからだと思うし、もう宗家の眼球はヒアシ様と先代様だけ。試せと言われても無理だろ」

「そうね」

「へぇ、これが転生眼…」

「確かに力強い力を感じます…」

ヒナタとハナビは楽しそうだなっおいっ!

当然転生眼はヒナタとハナビへと移植してある。片方だけだが、それでもその能力は強力だ。

「本来瞳術は左右二つ揃った方が強力だ」

マダラが輪墓・辺獄を使った時は輪廻眼一つの時は一体だけだったが、左右揃った時は四体まで増えていた。

「どうする?」

つまりヒナタとハナビ、どちらかが二つ持つかと言う事だ。

「ハナビが」
「姉さまが」

「「………」」

ま、そうなるか。

こうなると結論は出ないだろう。

「まぁ片方でも求道玉以外は使えるようだし、いざとなったら口寄せ転生眼の術を使えばいいか」

「口寄せ…」

「転生眼の術?」

「白眼にどちらかの転生眼を口寄せする。当然口寄せされた方は転生眼を使えなくなるが…」

「そんな術が有るんですね」

「まぁな」

「ほんと、ナツって変な所で物知りね」

あれー?イズミさんの視線が痛いのですがっ!

まぁ、あれだ。口寄せ輪廻眼や口寄せ写輪眼が出来るんだから白眼も出来るはずなのよ。

まぁ前準備は必要だし、下地も必要なのだが。

「だけど、片目だけと言う事は逆に白眼と併用が出来ると言う事。白眼の感知能力は270度程と狭まる代わりに白眼の遠視、透視能力を持った上で転生眼の能力も使えるのだからその方が強力な場合もあるだろうね」

「え、むしろ転生眼って白眼の能力は無かったの?」

「白眼と転生眼は別物、と言う事だろうね。俺の場合はどちらかしか使えないから、白眼を使いつつ転生眼は使えない」

「何物も万能と言う事は無いのね」

いやいや、イズミさんや。世の中には輪廻写輪眼と言うものが有ってだね…と言うかあれってそう言えば…



「は?」

「だから、お前たち三人には他里の人柱力および尾獣の捜索任務を与える」

「いえ、二度言われなくても聞こえてましたが、そうではなく…」

ある日、話があると呼ばれた火影室。そこで綱手から唐突に語られた極秘ミッション。

「人柱力、ですか」

とイズミが問う。

「そうだ。暁の狙いが人柱力である事が明白になった。おそらく一匹だけと言う事はあるまい」

そりゃね。目的は綱手達にはまだ分からないだろうが俺は知っている。オビトが尾獣全てを集める気でいる事は確かだ。

「それで、見つけてどうしろと?」

「何かをしろと言う事では無い。現状を知っておくと言う事が重要なのだ」

情報は命と言う事だろうか。

「一尾と二尾…後は七尾には会いましたね」

「一尾はともかくとして、二尾と七尾だと?」

と問い返した綱手に二位と、この間行われた中忍試験での事を話す。

「お前は…」

綱手に呆れられた。

「とりあえず、暁への注意喚起の書状を五大里の影達へ出す。お前たちが届けて来い」

「えー…」

「こら、ナツ」
「ナツ」

だって、それってついでに人柱力を探して来いって事でしょう…

「これは命令だ」

そう言われればそれまで。


とりあえず、土の国、岩隠れの里へと赴く俺とイズミ、スイの三人。こういう任務の場合カイユは戦力外なのでスリーマンセルでの行動になる事が多い。


とりあえず岩からか…

岩隠れの里へと到着。三代目土影であるオオノキに書状を渡し暁の事を注意喚起する書状を渡す。

里内で一泊して里を出た所…

「なんでこうなってますかねぇっ!?」

「知らない、ボク知らないよっ!」

迫る溶岩を避けて岩山を駆ける。

「まぁ、他里の忍で警戒されてたし…人柱力の事を探りを入れてたし?」

逃げる俺達を追って来る忍は二人。

一人は真っ赤な溶岩の如きチャクラの衣を纏う初老の忍と、もう一人は全身から蒸気を噴出させ爆発的な破壊力をもたらしている若い忍だ。

ドゴーン

蒸気を纏った忍者の拳が地面を抉る。間一髪避けた感じだ。

「私たちの任務は人柱力の確認…ですからここは」

「逃げるが勝ちと言う事ですね…でも」

とイズミとスイ。

じゃあなぜ飛雷神の術で逃げないのかと言われれば、時空間忍術を邪魔する結界に阻まれているからである。

原因はおそらくあのスチーム忍者の放つ蒸気だろう。

口寄せ獣対策であろうが、まさかこれで飛雷神の術まで無効かされてしまうとは…

「やつら只者ではないぞ。このままでは逃げられる」

「仕方ないのう。あれは疲れるのだが…」

おいおい、まさかまさかまさか…

追って来る忍者は俺達が調べていた岩隠れの里の人柱力が二人。

ドンッと一気にチャクラが膨れ上がると真っ黒なチャクラの衣が全身を覆った。

「ナツっあれって…」

「もしかして」

「もしかしなくてもだっ!」

尾獣チャクラのバージョン2

キィーン

二人の口元に黒い球体が現れる。尾獣玉だ。

「や、ヤバくないですか?」

「ヤバイっ!」

「何とかしなさいっナツっ!」

「人任せかよっ!…だがっ」

印を組みチャクラを高めると一度閉じた瞳をゆっくりと開いた。

開いた瞳は水色に染まっていて中心から剣十字が二つ重なった文様が浮かんでいる。

キュィーンバシュっ

風を切り裂いて撃ち放たれた二つの尾獣玉を俺は振り返って両手を突き出すとそのチャクラを吸収する。

「なっ!?」

「戸惑うな、畳みかけろっ」

更に連続で尾獣玉を放つ二人の人柱力。尻尾の数は四本と五本。

しかし放たれたすべての尾獣玉を俺は分解吸収して防いでいた。

イズミとスイはこの隙に舞空術で空へと逃げている。

「ウゥゥウウウウウウウ…」

「しまった暴走かっ!」

まだバージョン2を使いこなせていないらしい。片方が唸り声を上げ始めた隙を付いて俺も遁走。

命からがら逃げおおせましたとさ。

「助かった…」

「良かったです…」

「後二か国あるのだが、こんな事では先が思いやられるな…」

「それは…今は言わないで…バカナツ」

「そうですよ…ナツのバカ」

イズミとスイに責められた…理不尽だぜ。

さて結局、雷の国、雲隠れの里では二位ユギトに追いかけまわされ…途中で何かのイベントと勘違いした八尾の人柱力も追いかけっこに加わられつつ何とか遁走。水の国、霧隠れの里では人柱力との邂逅は無かったが…運悪く三尾に出くわす始末。

まぁとりあえず任務は遂行できた訳だが、自分の運の悪さを呪ってしまうレベルだった。

人柱力と尾獣の情報を火影に預けると今回の任務は終了。

もうしばらく木ノ葉の里を出たくない…がくがく…



しばらくして、風影が死にかけた事件が発生したらしい。

どうやら暁に尾獣を抜かれ、ぎりぎりで転生忍術で生き返ったと言う。


「はぁ?俺がカカシ班に…」

「そうだ。療養中のカカシに変わりカカシ班を率い大蛇丸の部下と接触を計れ」

「お断わ…」

「火影命令だ」

横暴だっ!

「…なんで俺なんですか?」

「お主、木遁が使えるそうだな」

「どこから…」

「猿飛先生から聞いている」

あ、そう。

「九尾を抑え込めるのはおじい様の木遁か、あとは…」

「うちはの写輪眼ですね。…と言う事は」

…これはイズミの万華鏡の事も知っているな。

「お前が断ると言うのならイズミに頼む事になるのだが。他に頼めるヤツも居ないしな」

おい、居るだろうテンゾウとか言うヤツがっ!

一応暗部で機密扱いか。

はぁ…

「実際ナルトの状態に一番明るいのは元人柱力であったお前だ。そのお前がナルトに付くのが一番妥当なのだ。引き受けてくれるな」

「了解しました…とほほ…」

俺って絶対運が無いよね…

で、ナルト、サクラ、それと暗部から一人回されたサイと初顔合わせ。

うん、仲悪いね…

俺はヤマトじゃないし、どうやって取り持てばいいか分からないよ…

「とりあえず、よろしくだってばね。ナツ隊長」

ね?

なんか引っかかるんだけど、なんだろ。

草隠れの里付近の天地橋。

とりあえず暁のサソリに木分身を変化させて接触してみたものの、現れたカブトに見抜かれた。

となれば次は拘束となるのだが、現れた大蛇丸の挑発にナルトが暴走。

尾獣バージョン2まで現して、見境なくなっていた。

「ナツさんっ!ナルトは…アレはいったい何なのっ」

とサクラ。

「尾獣変化のバージョン2だな。バージョン1は赤い衣を纏うだけだが更に高濃度の尾獣チャクラを纏うとああなる…ついでに制御出来てなくて理性が飛んでるな…」

「うぉおおおおおおおおおおっ!」

咆哮するナルト。

大蛇丸をボコボコにしてるが周りの被害も半端ない。

「何とかしなきゃっ」

「はぁ…まぁその為に俺がこの班に配属された訳だけど…」

「なら早くっ!」

サクラに急かされてナルトの傍まで飛ぶと、片眼を閉じたまま転生眼を発動させると封術吸引で九尾のチャクラを吸い取ってはがす。

「ぐぅっ…うぅ…」

強制的に九尾のチャクラの衣をはがされて気を失ったナルトが地面に倒れ掛かるのを遅れてやって来たサクラが抱き留めていた。

さて大蛇丸は…逃げたな。

サイも居ないのだが…どうやら付いていったらい。

「何をしたの?」

「ん、ああ…ナルトのチャクラを吸い取っただけだな」

「吸い取ったって…」

さて。

どさりと倒れ込んだナルトを抱きかかえると地面に横たえそのジャージのジッパーに手をかけ降ろそうとして…

「何してんじゃっ!しゃーんなろがっ!」

「あがぁっ!?」

錐揉み回転しつつ地面を転がった。…サクラに殴られて。

「な、なんで…」

「ナルトは私が見ますから、ナツ隊長はアッチ行っててください」

「な、なんで…」

「こんのドスケベがっ!」

「なーんーでーだーっ!?」

再びサクラに吹き飛ばされて気絶した。

「いつつ…」

俺が気絶している間にナルトは回復したようだ。

「サイのヤローは…」

と、ナルト。

「どうやら彼には別任務が別ルートであったようだね」

「それって…『根』の?」

聡いサクラには分かった様だ。

「つまりはどう言う事だってばね」

「サイの任務は大蛇丸に接触する事だったと言う事だろうね」

「あいつ…」

「それで、サイの行方は…」

「ん、ああそれは大丈夫。俺の特別忍術で追えるよ」

「よっしゃ、それじゃ行こうぜっ!」

ナルトの宣言で再び大蛇丸を追う。

「はいはい…それじゃぁゆっくりしようか」

「だからっ!行くって言ってるんだってばねっ!」

えー?だって飛雷神の術だから、ね?

サイを大蛇丸のアジトに侵入させてしまえば侵入は簡単だ。

と言う事で、はい。飛雷神の術。

「ナルトくん、どこから…」

「サイっ!オメーはっ!」

サイに突っかかるナルト。

「はいはい、ストップ。サイがこちらを利用したようにこちらも利用出来たんだから」

「とりあえず、飛雷神の術の応用で…」

壁に呪印し壁の向こうに飛雷神の術で飛ぶ。

まぁ一度裏切ったサイを拘束してと、途中現れたカブトを返り討ち。

「殺しておくか…」

こいつが居なければラスボスの片方が居なくなるのだからな。

「待って、コイツにはまだ聞きたい事があるし、後は木ノ葉の暗部に任せましょう」

とサクラが言う。

……ちぃ道理はサクラにあるな。

とりあえずカブトを木遁で拘束してアジト内部を探索する。

ナルトとサイ、俺とサクラでツーマンセルを組んで探索。

幾つもある部屋を一つ一つ開けていく。

と言うか、これだけ部屋数のある秘密基地って…いったいどうやって作ったんだろう。

ドゴン

崩落音が響き駆けつけると…

「カカシ班か…ならカカシも居るのか?」

崩落した天井の上、暗い目をした黒髪の少年。サスケだ。

「残念ながら俺が代理。あの人、写輪眼の使い過ぎで寝込んじゃったから」

「白眼…日向か」

それからサスケとナルトの問答が続くが、まぁ平行線かな。

「と言うか、復讐なら木ノ葉に居ても出来ただろうに。…せっかくイタチがお前を木ノ葉に居られるようにしてくれていたと言うのに、兄不幸者のバカ者だな」

イタチは里を抜けた。ビンゴブックにも載っているのだ、正式に討つ機会もあっただろう。

イタチ本人もそう仕向けていたのだ。

「お前にうちはの、俺の何が分かるっ!」

「何も。俺はお前じゃないしね。ただ、まだ誰も殺していない今なら木ノ葉に戻れる。里からも連れ戻せと命令されているしね」

と、言う訳で。

「ナルト、サクラ、サイ。存分にどうぞ」

俺はどかりと腰を下ろすと後は任せたと脱力モード。

「っておい、ナツ隊長っ!?」

「真面目にやってくださいっ!」

ナルトとサクラに怒られた。

「高々下忍の抜け忍程度に俺が出張る必要あるかな…三対一で負けるほどお前たちが弱いっていうなら…しょうがない」

「上等だ、サスケぇ!」

「あ、ちょっと」

「なかなか煽るのがお上手で」

飛び出したナルト、それを追うサクラとサイ。

が、三対一でもサスケが強かった。千鳥を全身に流すようにしてナルト達を感電させる。

「がっ」

「きゃっ」

「くぅ…」

ずざざーと地面を転がるナルト達。

「次はお前だ」

そうささやくサスケ。

「いいか良く聞けよ、宗家様曰く…」

すぅと目の周りを隈取が囲う。何もナルト達を本当に焚き付けただけではないのだ。

ナルト達に自然エネルギーを取り込む時間を作ってもらっていただけなのである。

ビキビキと眼球回りの経絡系が浮かび上がるとすっと立ち上がり力強く宣言。

「日向は木ノ葉にてさいき…!」

と意気込んだ時、地面から巨大な大蛇が口を開けて襲い掛かって来た。

「ょおおおおおおおーーー!?」

まさかの見栄切り失敗に大焦り。

これは口寄せ?この大きさは大蛇丸のマンダであろうか?

開いたアギトは俺を含みナルト達も一飲みにする勢いだ。

「うわっ!?」

ナルトを引っ掴むと口の中から放り投げ、サクラとサイを回収。

ナルトに付けた飛雷神の術のマーキングへと飛ぶ。

「これは…やっぱり」

「サイ、これがなんだか知っているの?」

とサクラ。

すでにサクラを連れて二回ほど飛んでいるのだが…

「これは四代目様の飛雷神の術…なるほど。道理で」

ポンとマンダが煙と共に消え去った。どうやら還ったようだ。

「サスケはっ!?」

ナルトが急いで視線を動かすが、その範囲内にサスケは存在せず。

白眼で見てみても気配を辿れない。

契約獣にでも隠れているのだろう。

「くそ…サスケ…」

ナルトの呟き越えだけが風に消えて行った。



……

………

「大蛇丸、なぜ止めた」

「あら、感謝して欲しいわね。今のサスケくんじゃあの日向ナツには勝てないわ」

マンダでナツの気を引いている内に他の巨大蛇の口の中に隠れて逃げおおせたサスケと大蛇丸…ついでにカブトは、ナツの白眼の遠視範囲を抜けるとようやく地上へと舞い戻った。

「やってみなければ分からない」

「そうかもしれないけれど。今は困るのよね」

「何がっ」

「彼、飛雷神の術が使えるのですもの」

「なんだそれは」

とサスケが大蛇丸に食って掛かる。

「マーキングした場所に飛ぶ時空間忍術。マーキング自体は術者じゃなければ消せないし、どこに刻むかは術者しだい。もし戦闘中にサスケ君に付けられてしまったら?それはもう首輪を付けられたも同然。あなた、木ノ葉に連れ戻されても良いのかしら?」

「…ふんっ」

理で攻められてようやく納得したのか殺気をひっこめるサスケ。

「大蛇丸…早速新技の修行に付き合ってもらう。次会ったら…」

「そうね、頑張りなさい…私の為に」



……

………

サスケの捕縛失敗で任務も終了。

木ノ葉に帰還する。ナルト、サクラは慟哭し泣いているが、現実は変わらない。

とりあえず、俺がカカシ班に居るのもこの時だけだし、帰ればもう会う事も無いだろ。



……

と、思っていた時も俺にもありました。

「何で俺がナルトの修行に付き合わなきゃならんのですかねぇ?」

とカカシに愚痴を言う。

「だって、ナツは木遁が使えるっていうじゃない?」

綱手から聞いたか。

「だったらナルトのやる修行に丁度いいかと思って。はい、これ資料」

と言って渡されたのは火影式耳順術の資料だ。

え、これ覚えろと?マジで?

ナルトの修行で俺は原作のヤマト隊長よろしく便利屋扱い。

木を生やしたり、滝を作ったりと忙しい。

ついでに多重影分身の修行で九尾の封印制御が甘くなり暴走しそうになる九尾チャクラは火影式耳順術なんて使わずに封術吸引で吸い取っている。

「チャクラ吸収なんて出来たのね」

「特異体質なんですよ」

といぶかしむカカシの質問を誤魔化した。

「まぁいいでしょ」

ナルトがなんの修行をしているかと言えば多重影分身を駆使した螺旋丸に性質変化を加える修行だ。

「にしても…呆れる数の影分身の数だな」

「そりゃね。九尾を抑えなければこれでさえ少ないなんて…ナルトのスタミナはどれほどのものかなんて考えるだけ無駄でしょ」

とカカシが言う。

「うずまき一族…恐るべし」

いや、この場合うずまき一族と言うよりはアシュラの転生者と言うべきかもしれないが。

「ナツー」

と言う声に振り返ればイズミ達フルメンバー。今日はヒナタやハナビまで居るようだ。

「修行は順調そう?」

「さて、分からんね」

とイズミに返す。

「なになに、なんの修行しているの?」

そうスイが問いかけた。

「うーんと…」

「あ、ナツ兄さんお昼ごはんお持ちしました」

「一緒に食べましょう」

スイの問いに答える前にヒナタがバスケットを差し出したために質問は中断された。

「そうだな」

「多めに作ってきましたので…カカシ先生達も呼んできますね」

とヒナタが呼びに行った。ふむ、やはりナルトが気になっているのかな?

「おう…よろしく」



……

ご飯を食べて修行再会。

とは言え、俺は暴走するナルトのチャクラを吸収する役なので特に忙しくは無い。

「それで、これは何の修行なんですか?」

修行マニアのハナビの質問。

「これはね、螺旋丸に性質変化を加える修行なんだ。まだ誰も無しえた事のない、俺ですら出来ない」

とカカシ。

「ええっと…」

「螺旋丸はこれね」

ボウとカカシの掌の上に高濃度のチャクラが乱回転し留まっている。

「あ、いえそれは知ってます。そうじゃなくて、螺旋丸の性質変化ならナツ兄さま使えますよね?」

おいこらハナビ。そこはこう空気を読もうな?

「またまたぁ。螺旋丸ですら習得難易度はAクラス、その上で性質変化なんだからおそらくSランク相当の忍術だよ?それを独学でなんて」

つーとカカシの眼がこちらを向く。

ふっと視線を逸らすが今度は誤魔化されてくれなかった。

周りのイズミ達が今更何言ってんのと言う顔をしていたからだ。

「はぁ…まぁ出来ますよ」

右掌に現れた螺旋丸に溶遁チャクラを混ぜていく。

球体からボコボコと気泡をまき散らす螺旋丸が現れた。

「ウソだろ…それにこの性質変化は?」

「溶遁螺旋丸」

「溶遁っ!?ナツは木遁の血継限界じゃないの?」

危ないのでさっと螺旋丸を消す。

「そもそも性質変化系の血継限界は血の繋がりなんてあいまいな物で有るはずがないんです。いえ、違いますね。確かに肉体補助は有りますから…でもそれは一種の変換装置的な意味合いですかね」

「始まったわ、ナツの持論が」

「こうなるとコイツはナゲーんだよ」

イズミと多由也がげんなりし始めたが構わず続ける。

「原理を考えればどのチャクラ性質をどれだけ混ぜ合わせるかと言う事。で有るならば、どれだけの配分比で混ぜるか、またどのチャクラ性質をメインにするのか。この割合を肉体が記憶しているのが血継限界と言う事なのでしょうね。まぁ俺にはそんな物は無かったわけですから、トライアンドエラーの繰り返しで配分を少しずつ変えて調合して体に感覚として覚えさせる修行を繰り返した訳ですが……」

「本当、長くなりそうね…」

カカシも辟易し始めたがしばらく俺の持論は続いていた。

「とまぁ色々話しましたが、俺は基本的に水、土、陽、陰を混ぜ合わせる事が可能な訳です。水・土・陽で木遁、水・土・陰で溶遁、水と土で泥遁と言った具合に」

「もう性質変化螺旋丸が使える事から脱線してるんだけど…つまりどう言う事?どうやって覚えたのよ」

「……つまり…頑張ったっ!」

「それだけを伝えるのに30分も話してたのね…」

カカシの目が虚ろだった。

「まぁ、ここに先達が居る事は良い事だ。ナルトに教えるのに持って来いって事だな」

「残念ながら」

と掌を前に持ってきてノーの意思表示。

「どう言う事?」

「俺はバカには教えられない」

「は?」

「俺がやっている事は化学や数学に近い。つまり理論、論法…まぁ気合と根性も必要だが、そう言う事。だからある程度こういう事に理解のあるヤツ…まぁヒナタやハナビには教えられるかもしれないが、脳筋であるナルトに出来るアドバイスは無い…大体、どれだけの比率でチャクラを混ぜろと言ってナルトが理解できると思うか?ガーっとやってバンっとかは俺の言語には…無い事も無いが、ほとんど無いぞ」

「ははは…確かに、それは無理だ」

あはは、カカシ先生にもダメだと思われているぞ。

「でも、本当どうやって覚えたのよ」

「ナルトほどバカなくらい多くはないですけど俺も多重影分身使えますから。年単位で修行して、ですね。アカデミー時代は時間はいっぱいありましたし」

「努力型の天才か」

「でもそれは本当の天才に横から抜かれて行かれる運命ですけどね。…ナルトみたいな」

「お前も期待しているのか」

「期待半分、やっかみ半分ですね。俺が一年を掛ける修行をものの数日で習得してしまいそうなんですから」

そう言って見たナルトの螺旋丸は確かに風の性質を帯び始めていた。

ナルトの修行に付き合っていると猿飛アスマ上忍の殉職の知らせが届いた。

これにはさすがに修行を一時中断。

葬儀への参列は俺はしないが、ナルト達は一様にショックを受けたようだったが、アスマの死は俺に暁の襲来を知らせるものだった。

ドドーン

爆音と粉塵を巻き上げ地面がクレーターの様に抉れていた。

ナルトの風遁螺旋手裏剣が完成し始めていたのだ。

「よっしゃーっ!後ちょっとぅっ!」

肩で息をしながらも威勢の良い掛け声を出すナルト。おそらくもう少しだと言う実感があるのだろう。

「風遁・螺旋手裏剣だな」

「なんだってばね、その名前」

「その術の名前だ。嫌なら…そうだな、超極細チャクラ刀毛針螺旋丸試作型でもいいけど」

「螺旋手裏剣でお願いするってばね…」

「あ、そう?」

お前の父ちゃんなんてきっともっとスゲー名前つけるぞ?

「さて、ここらでタイムアップだ。シカマル達、助けに行くんだろ?」

ナルトは力強く頷いた。

「それじゃあ行ってらっしゃい」

「何だってばねっ!ナツ隊長ってば行かねーのかっ!?」

「え、俺も行くの?」

「綱手のばあちゃんからはナツ隊長も第七班として同行しろって言われてたってばねっ!」

え、ええ?

「ちくそう、任務か…ただ…なあ?綱手様も忘れてないか…」

俺が人柱力だったと言う事と暁にしてみれば死んだはずになっていると言う事を。

まぁ尾獣は抜かれているから別に狙われる心配も無いけども。

「しかし、それならもう少し大丈夫だな。特性の兵糧丸もまだある」

とどかりと座り込む。

「どうしたんだってばっ?早く行かないと」

「まぁ待て。現場にはサクラとサイに先行してもらう」

「だからそれじゃダメなんだってばよ」

「お前、俺が飛雷神の術を使える事忘れてるだろ」

「ええっと…なんだっけ…ソレってば」

「ワープだワープ。俺は目印まで一瞬で移動できるの。だからサクラとサイに先に行ってもらえればもう少しお前の修行を見てやれる。その螺旋丸は名前に込めたように飛ばせるようにならなければ危険だ」

「それは…」

ナルトの右腕は所々出血しているし、細胞が傷ついている。

「お前のそれは自爆技だ。投げられるようにならなければ俺一人で行く」

「なっ!?」

「お前が行くより俺の方が強い…今はまだ、な」

さて、どうなるか。

実際今は良い感じにすべてのピースがハマっている。上り調子の所にさらに負荷を強めてやれば…もしかしたら…

「畜生…やってやるってばよっ」



……

………

「さて、行くか。ナルト」

「おっす」

左の掌を右の拳で軽くたたく。乾いた音が響いた。

結果、ナルトの乱入で暁の二人組、角都と飛段は尾獣を得ることなく倒される事になる。


「うー…具合悪い…」

「ちょっとナツ大丈夫?」

フラフラと寝所を出て来た所、イズミが倒れる寸前で抱き留めてくれた。

「ちょ、ちょっとっ!?」

赤面しているイズミだが、ナツはそれに構ってられない。

「ちょっとダメかも…」

「今日はゆっくり寝てなさい、ね?」

「いや、これは多分寝てても治らない…生まれる…うぷ」

「産まれるっ!?産まれるってどう言う事よっ!?ねぇっ!?」

「いつも修行している平岩に連れて行ってくれ…あそこが一番馴染みやすい」

そう言ってナツの意識はブラックアウト。

「ちょっと、ナツーっ!?」



……

………

真っ暗な世界ににそれは有った。

それはチャクラの塊で、ドクンドクンと胎動しているのが分かる。

「神樹の実と尾獣のチャクラが少しづつだが全部そろったからな…」

吸い取った尾獣チャクラがどこに消えていたのかの答えがこれなのだろう。

不幸にもナツは全部の尾獣のチャクラを集めてしまっていたのだ。

ナツは両手を目の前で合唱させると転生眼を発動させ陰陽遁を使い渦巻くチャクラに形と名を与えて縛る。

そうだなぁ、どんな名前が良いか。

きっと姿は十の尻尾を持つウサギだろう。

だから…

「夜兎(やと)…」

瞬間、光があふれる。

凝縮されたチャクラの塊はやがて一つの獣の形へと成り、現れた。

幼さの残る顔だちだが、その顔だけでもナツの身長の何倍も有る。

特徴的な真っ赤な瞳がこちらを見返し、親愛のつもりだろうか、その赤い鼻で頬ずりをされるがままだ。

「きゅー」

「これは刷り込みっだな…まぁ、逆らわれるよりは良いけれど」



……

………

目を開ける。

体が痛い。どうやら岩の上に寝かされていたらしい。

「ナツ…?」

「イズミか」

「もう大丈夫なの?どこも痛くない?」

「ああ、もう大丈夫だ。心配かけたか?」

「バカ…」

そう言ってイズミは拗ねたように横を向いた。

「それで、何があったの?」

「説明すると難しいのだが…」

要約すると、新しい尾獣が生まれたと言う事になるのかもしれないとイズミに説明するととんでもなく呆れた顔を返された。

「まぁナツだものね…」

呟かれた言葉にすら覇気がないほどで、もう理解することを諦めたようだった。

「と言う事はまた人柱力になったって事?」

「そうなる、のか?だがまぁもう暁が狙う事は有るまいよ」

「本当に?」

「…たぶんね」



「あー…火影様…俺の事を働かせすぎじゃないですかね…」

「なーにを愚痴を言っておる。今から雨隠れの里に潜入しようと言うときにのう」

雨に打たれながら現実逃避をしていた俺を引き戻す白髪の男。

「潜入任務なぞこの自来也様一人で十分と言うのに綱手のヤツがどうもイヤな予感がすると付けて寄こしたのが日向の落ちこぼれとはの」

ナツは今伝説の三忍と呼ばれた自来也の隣に居た。

「落ちこぼれが良いです…こんな危険な任務に抜擢されずに済むのなら…」

自来也が暁の本拠地と思われる雨隠れの里へと侵入を試みるのは分かっていた事。

しかし…

「それは…お主が実力を見せすぎたのが敗因よのう」

はぁ…と深い溜息を吐く。

「綱手がわざわざ寄こすくらいだ。そこらの上忍とは一線を隔すのだろうのう」

「ははは…」

力なく笑う俺。

「俺は飛雷神の術を使えますからね。いざと言うときの脱出要員と言う事でしょう」

「ほう、ミナトの飛雷神を使えるのか。そいつは確かに潜入任務に連れて行けと言うのも分かるのう」

「ホレ」

「……?男の胸を見せられてもうれしく無いのですが…」

「アホかっ己はっ!ワシとておなごの前で肌をさらしたいわっ!そうじゃなく飛雷神の術はマーキングした所に飛ぶ術のはずじゃ」

ああ、なるほど。

「確かに…そこが一番でしょうね。でも良いんですか?」

右胸、心臓の上に術式を刻めと言っているのだ。そこならば体が欠損して飛べないと言う確率を極限まで減らせる。

そもそも心臓をやられれば死ぬのだから必死になって守るだろう。

「何、お主を信用している綱手を信じるだけよのぅ」

「器がでかいわ…やっぱり伝説の三忍と呼ばれるだけは有る」

「それはもう昔の話じゃろう。今じゃ木ノ葉に三葉(さんよう)ありと言われているそうじゃないか」

「え、誰です三ヨウって」

「知らぬは本人ばかりかのう…」

溶遁、耀遁、遥遁。つまり俺、イズミ、スイで三葉だと言う事を俺が知るのは忍界大戦に入ってからだった。

自来也が雨隠れに単騎侵入した後に飛雷神の術で飛ぶ。

そこからは分かれて諜報活動。

「こう言うの、苦手なんだけどなぁ…」

分かる事は相手はペイン六道。つまり輪廻眼だと言う事だ。

俺は懐から二つの角を持つアイマスク型の面を取り出すと額あてを外して取り付ける。

「白眼っ!」

キィンと視界が広がる。

広大な雨隠れの里の一番高い塔。そこだけ白眼でも見えず視界が歪んだ。

更に印を組みチャクラを眼に送るとその双眸が青く染まった。転生眼だ。

「輪廻眼、潰してしまえばお終いってな」

それでカグヤの復活は遅らせられるはずだ。

自来也が良い感じにペイン六道を引き付けてくれている内に…

特性クナイを一本遠投させる。チャクラで強化されたそれは塔の天辺付近に突き刺さったのを見て取ると俺は飛雷神の術で飛ぶ。

薄暗い部屋の中、大きな車いすのようなものに乗るガリガリの男。

彼の眼は薄紫に染まり螺旋状に渦を巻いていた。輪廻眼であろう。

「まさかここに小南以外に来客が有ろうとはね。自来也先生は陽動か」

「そう言う訳じゃ無いのだけれどね」

「ここに来たと言う事は俺がペインだと知ったと言う事。生かして帰す訳には行かない」

「それは俺も同じだ。俺はお前を殺さなくても良いが、その眼は潰したい」

「眼…これが輪廻眼と知っているか…お前…」

俺はクナイを取り出すとペインに向かって駆ける。

男は両手を合掌させてチャクラを高めた。

「神羅天征」

斥力を操り弾き飛ばすつもりなのだろう。

「万象天引」

しかし俺は引力を操り引き寄せる力で相殺させる。

「な、お前も六道仙術をっ!?」

驚くペイン。

「油断だなっ!」

取ったっ!と必殺のクナイがペインの眼を抉る…その前…ペインの肩から機械仕掛けの腕が生え俺のクナイを弾いた。

「なっ!?」

修羅の攻で他世界の化学技術によるカラクリを口寄せしたのだ。

キュィーン

腕が開きレーザーが収束する音が聞こえる。

「うっそっ!」

回避…どうやって?口径は?速度は?熱量は?

そんな疑問が俺に飛雷神の術を使わせる。

すぐにさっき投げたクナイへと飛ぶ。

ドンと壁を破壊する音が響く。

キュイーン

第二射。これはかわせるタイミングではない。

すぐに刺さったクナイを手に取ると軌道外へと投げ放ち、飛ぶ。

ドンッ

二射目も何とかかわせた。

だが…

「終わりだな」

レーザーが二門に増えていた。

クナイを投げるが投げたクナイを正確にレーザーが狙っていた。

ジュッと打ち砕かれるクナイ。

レーザーは俺の体を狙っている。

だが、甘い。

影クナイの術。

クナイを投げた時、その視覚の陰にもう一本クナイを投げていたのだ。

これでチェックメイトと飛べば口寄せされたペイン六道が現れた。

その数6体。

「邪魔だぁっ!」

神羅天征で弾き飛ばそうとして…

ペインの一体が今まさに息絶えそうな自来也の体をぶら下げていた。

「くっ…」

瀕死ではあったがまだ生きている自来也を見て神羅天征を止めてしまった。

「どうする、自来也ごとやるか?」

うぅぅ…

木遁・樹界降誕

乱立する巨木。

「何っ!?吸い取れないっ」

実体を伴う術は封術吸引では吸えない。

だが、相手には神羅天征がある。実体を伴う分弾くのも容易だった。

が、これは目くらまし。俺はその時にはすでに転生眼を白眼に戻してある。

乱立する巨木、弾かれる枝を避けつつ自来也に接触するとそのまま飛雷神の術を使う。

「…逃げたか。これは急がねばなるまい」

キィンと落ちていたクナイを手に取ると万象天引で雨隠れの外まで弾き飛ばしていた。

飛んだ先は火影室。つまり綱手の所だ。

「自来也っ!?」

「すぐにカイユを呼んでくれ…いや、俺が行った方が速いっ!」

ブゥンとすぐに飛雷神の術でカイユの元に飛ぶ。

「ナツ?」

木ノ葉図書館で働いていたカイユを問答無用で拉致。再び綱手の元に。

「カイユ、治せるか?」

「っ!?腕丸々はナツ達じゃなければ…でも他ならっ」

「出来るのか?ならば早くっ…たのむ…私から自来也まで奪わないでくれ…」

出来るだけの延命措置を施していた綱手も懇願する。

カイユが自来也のチャクラを吸って変質した虫を自来也へと注入。

潰された喉、肺、心臓機能を回復させることに成功し自来也は一命を取り止める事に成功したのだった。


病院のベッドの上。

「どうやら死に損なったようだのう」

「自来也…良かった、本当に…良かった」

「綱手…」

と腕を持ち上げようとした自来也だが、その左手がついてこない事でようやく失った事を思い出したらしい。

「輪廻眼相手に腕一本で生還出来ただけでも儲けものだのう」

「自来也…それで何があった」

と綱手はすでに火影の顔に戻っていた。

「それがのう…」



……

しばらくしてサスケが大蛇丸を倒したと言う噂が所かしこで囁かれていた。

寧ろこれは噂を意図的に流しているのだは無いかと言うレベルだ。

そこで急きょ第七班を中心とした班に任務が言い渡される。

イズミはナツが付くはずだった第七班の隊長任務を代わりに受けていた。

任務はサスケの捜索及び捕縛。

それとイズミは万華鏡写輪眼を開眼しているクラスの瞳術使いだ。つまりもしもナルトが暴走した時の抑止だった。

ナルト、ヒナタ、イズミとカカシ先生が付けた忍犬とでスリーマンセルを組み、他にもいくつも班分けをしてサスケを追う。

しかしそれを邪魔する存在が現れた。

グルグルの変な仮面を着けた男だ。

暁が着ていた意匠のマントを羽織っている所を見るとおそらく暁のメンバーと言う事なのだろう。

「いやぁ、まさかこんな所で木ノ葉のみなさんとバッタリなんて…しかも八対一とは分が悪い」

「分が悪い?」

その軽い口調からも自身が絶対優位に立っていると疑わない。

ナルトが影分身で突っ込んだが、まるで透けるようにその体を通り抜けてしまっていた。

「ヒナタっ」

「実体です。攻撃がヒットする瞬間まではチャクラの揺らぎも変化は有りません」

「そうね。私の写輪眼もそう視えたわ」

「ほう、白眼に…写輪眼か。まさかカカシ以外にも写輪眼を使いこなすやつが居たとはな…まさか10年前に殺しそびれたヤツが居たのか…まぁどうでも良いが」

と仮面の男。

ナルト、キバ達短気な奴らが交戦を始める。数はこちらが優位なのだ、観察させてもらうと写輪眼で見つめるイズミ。

しかし、その攻撃の悉くはすり抜けられてしまう。また油女シノの蟲を使った全方位攻撃すらすり抜ける。

「消える前まではアイツのチャクラは確かにそこにあった…」

消えた仮面の男。

「ヒナタっ」

誰かが白眼を持つヒナタを呼ぶ。

「あそこっ」

まったく別の所に現れる仮面の男。

「これは…時空間忍術の一種ね。体の一部、または全部を別の空間へと置換する」

「ほう…良い眼をしている」

「…写輪眼」

仮面の男の開いた視界から覗く赤い瞳。

「写輪眼だとっ!?」

驚く面々。しかしイズミは冷静だ。

「印も結ばずにすり抜けると言う事はそれは瞳術、つまり」

「万華鏡写輪眼かっ」

言葉を繋げるようにカカシが叫ぶ。

「万華鏡ってなんだってばね」

「簡単に言えば、すごい写輪眼だよ」

「…ヒナタ、それはちょっと…」

「え…え?」

ヒナタに簡潔に略されてうちは一族であるイズミは少しやるせない気持ちに陥った。

「正体を暴いたくらいで粋がってもこの俺の能力は無敵だ」

「今度こそっ螺旋丸っ」

ナルトが空気を読まず特攻。

「確かにダメージを与えられないのだもの、そううそぶくのも頷ける…だけど同じ瞳術使い同じ写輪眼使いである私の前で見せすぎね」

「無駄だと言う事が分からないのかなぁ」

そしてすり抜けようとした仮面の男だが…

「うらぁっ!」

「なにっ!?」

ダンと回転しながら後ろの巨木に叩きつけられる仮面の男。

「がぁっ…」

仮面の下で血を吐いたようだ。

「当たったってばねっ!でもどうして」

理由は簡単。イズミの万華鏡写輪眼は術を封印吸収する。それは瞳術であっても変わらない。

つまりすり抜ける瞬間にその術を封印したのだ。

「良いから畳みかけなさい」

「何か分かんねーが…行くぜ赤丸」

「あんあん」

「牙通牙」

「くっ…」

しかしキバ達の攻撃は仮面の男に再びヒットする。

「万華鏡とは…油断した…いったいどう言う能力かは分からんが俺の万華鏡を封じるとはな…良い眼をしている」

「余裕ね。あなたの術は私が封じていると言うのに」

「ああ、だから今回は逃げさせてもらう」

「させるかってばねっ」

とナルトが飛びかかる。

卯・亥・未

仮面の男が印を組んで身構えた。

イズミは印を読み取ってはいたが、どういう効果か分かるまではと万華鏡による封印術を使わない。

ナルトの螺旋丸が仮面の男にヒットして吹き飛んでいく。

「あちゃー、ひどい事をする」

突如真後ろに現れる仮面の男。

「またすり抜けかっ」

とカカシ。

「違うってばよ、今度はちゃんと当たってたっ!」

男の左目を覆っていた仮面がはがされ穴が開いている。

そこから覗くのは写輪眼だ。

「ヒナタ」

「分からない…分からないけど突然…それこそ現実を書き換えたように現れたのっ」

「と言う事はあの時組んだ印が…」

「だけどこっちの攻撃は有効なんだっカンケーねぇってばね」

とナルトが再び突貫。

しかし今度はその攻撃をすり抜けた。

「どう言う事、イズミ」

とカカシ。

「っ!なぜ…どうして…」

イズミにも目の前の光景は分からなかった。

「ヒナタっ!」

コクリとヒナタが頷くと印を組んでチャクラを込め始める。イザとなればアレを使ってでも…

しかし確かにすり抜ける術は封印したはずである、がしかし現実に男はすり抜けた。

その時木から生えるように得体のしれない半裸の男が現れた。

「サスケが勝ったよ。イタチは死んだみたい」

「そうか…」

と仮面の男。

「イタチくんがっ!?」

それに一瞬イズミが動揺する。

イタチは母殺しの仇である。しかし、イズミはサスケほどに子供ではなく、うちは一族に流れていた気配とイタチの決意をどこかで感じ取っていた。

だから復讐と言う率直な手段に走らずにいられたのだ。とは言え、その大半はナツが居たと言う事が大きい。

彼が居なかったらイズミもイタチを追って復讐に走っていたと自分でも思う。

「なるほど…この場はお前たちが強い。まぁ、言いたい事は言えたしオレは帰る。精々生き足掻け、まもなく終わるこの絶望の世界をな」

「消えた…」

それだけ言い置くと仮面の男は渦を巻くように消えて行った。

「一体何が…」

とヒナタ。

「逃げられたわ…でも、こういう時ナツが居ればと思わなくはないわね」

「はい…ナツ兄さんならシレっとした顔で術の効果を言い当てそうです」

「そうね」

とにかく時間を稼がれサスケを追えずじまい。仮面の男には逃げられて散々な任務となったのだった。



ペインとの戦いにより自来也は負傷…片腕を失った状態ではもはや忍者としては戦えない自来也は本格的にナルトに仙術を教える気になったらしく妙木山へと拉致して行った。

「お前も来いのぉ」

「何故にっ!?」

「四代目の術を悉く修めとるお前じゃ、仙術もものに出来るかも知れん」

「すわっ!?」

問答無用で逆口寄せに巻き込まれる。

「自来也ちゃんや、仙術の修行はナルトちゃん一人じゃなかったかいの?」

とじいちゃんカエル…フカサク様だ。

「そこなんですが、コイツにも教えてやれねーですかいのぉ」

「コイツにか?」

とジィっと見るフカサク様。

「ダメじゃ、必要ないの」

「そこを何とか頼みます」

「そうじゃない。コイツ、自然エネルギーの匂いをさせとるしのぅ…お主…仙術使えるじゃろう?」

ギクッ

「あはははは…」

「なんだ、ナツの兄ちゃんはその…仙術って言うのは使えるのか?」

と興味津々のナルト。

「あはは…誤魔化されては…くれませんよね…」

「本当か。…なんと、…ちょっと見せてくれんかいのぉ」

と自来也までも言って来る。逃げ道は無かった。

「良いですけど…ここはちょっと…自然エネルギーの匂いが…」

「匂い…?」

「本来自然エネルギーはあまり匂いは付かないものなんですが…ここはちょっとカエル臭くて…まぁやってみますけど」

と両手を合掌させて自然エネルギーを取り込むと、目元にうっすらと隈取が出来、開いた眼には横に伸びる瞳孔に変じていた。

カエル化である。

「こりゃ驚きじゃ…ほとんど完璧に自然エネルギーを取り込んでおる」

とフカサク様。

「やっぱり少しカエル化しちゃいましたね…」

「お主…どこで仙術なんて覚えたんじゃいの?」

「えっと、資料からの独学?あと喋る猿に習いました」

「それでよく石化せんかったものじゃわい…」

そこは柔拳の要領だな。

「スゲーな、ナツの兄ちゃんっ!」

ナルトが意味も分からず尊敬の視線を注ぐ。

やめろって…お前に尊敬されるとお前の成長速度に嫉妬しそうになるだろうが。

ナルトはフカサク様に連れられて仙術の修行を始めている。それをみた自来也はちょいちょいと俺を手招きした。

「お主、六尾の人柱力であったらしいのう」

「それも知ってますか…」

「綱手からのう」

そりゃそうだろうね。

「それで、お主はそのぉ…尾獣チャクラを利用できておったかのう」

ああ、なるほど。

「そりゃあ、出来てましたよ」

「本当か。いったいどうやったんだかのう?」

「物事はそんなに深く考えない方が良いと言う場合もありますよ」

「どう言う事だ?」

「尾獣とちゃんと会話して仲よくなれば良い。仲よくなればチャクラを貸してくれる尾獣も居る」

「なっ!?」

俺の単純明快な答えにしばし自来也は唖然としていた。

「自分なら、力を寄こせと言われるばかりじゃ反発したくもなるでしょう?尾獣も同じことです。相手には意思があり、それを束縛しているのが人間の方なのですから」

ナルトの仙術修行は順調だ。

目を見張るスピードで仙術をものにしているナルトを見ると本当に才能の差を感じてならない。

今ナルトは仙術での組手の修行中だ。…なぜか俺と。

「そろそろ良いころ合いじゃかのう」

と自来也。

確かにナルトは良い感じに仕上がっている。

「そろそろ仙術の弱点を教えるころじゃて」

そうフカサク様。

「なになに、なんだってばよ」

「まぁ聞けナルト。仙術にはちぃっとばかしデカい問題が有るのよ」

そう自来也がナルトに説明し始めた。

仙術の弱点は動きながらでは自然エネルギーを取り込めない。

仙人モードは持続時間が短い。

と言う問題点をはらんでいた。

「ど、どうすんだってばよエロ仙人っ!これじゃ実戦で使えねーってばよっ」

「まぁまて、だからそれに対する解決法もちゃんとある」

とフカサク様との融合を説明し、両生の術でどうかしようとしたフカサク様は何者かの拒絶により弾かれていた。

「…どうやらお主の中に居る九尾が拒絶してるようだのぉ」

「えー、それじゃどうするんだってばよっ」

「どうしようかのぉ…おお、そう言えばお主はどうしておるんじゃ?」

と自来也が俺に振った。

「俺?…俺か…ふむ」

言われて目の前で掌を合掌させると自然エネルギーを誘引する。

一瞬で目の周りに隈取が現れた。

「なっ」

「これは…」

「…なんだ、結局動けないんじゃ意味ねーてばよ」

「バカもの、よく見てみ。こやつは一瞬で自然エネルギーをかき集めよる」

「へ?」

「俺にはフカサク様みたいな契約獣は居なかったから、どれだけ素早く自然エネルギーを集め、どれだけ仙人モードの持続時間を長くするかが課題だった。その一つの答えがこれ」

「……ただの修練…ほんにお主はワシの想像の斜め上を行くのう」

「つまりはどう言う事だってばねっ!」

「要するにだ。こいつも仙術チャクラを練るときは動けん。これは一緒だ。じゃがのう、こやつはお主が何分も掛けて練る仙術チャクラをものの数秒で練っとるのじゃ。これはワシにも出来んかった事じゃ」

「確かにこれならギリギリ実戦でも使えるじゃろうて」

「じゃが、この域に達するのにナルトじゃ時間が足りないのう。お主はどれくらいかかった?」

「アカデミー入学前にはすでに仙術を覚えていたから、それからずっと練り続けて少しずつだな。俺の忍術修行の半分はこの仙術を練る修行だった」

「半生を費やしての結果をナルトに求めるのは無理かのう…となると他の手を考えなければの」

結局影分身のチャクラを本体に還元する方法を思いついた事でどうにか仙人モードを会得したナルトだった。

しかし、この妙木山に俺が来る意味は有ったのか。いや、有ったのだろうな。

大蝦蟇仙人から俺への予言が出たのだから。

「見た予言は変わってない。お前は思うままに生きろ。それがより良い未来へと繋がる、ね」

つまり俺が何を心配しても無駄って言いたいのか?

すべては予言のままにか。くそっ、上等だっ!思うままに生きてやるよ。この忍の世界をっ!





「という夢を見たの」

とモンテ。

「ふふ、何を言っているのですか。お嬢様は」

口元に手を寄せて笑いながらそんな事あり得ないでしょう、と日向ナツが言う。

「だよねー」

良かったとモンテ。

「もう少し寝るわ」

バタンとベッドへと横たわる。

「それじゃ、私は朝食の準備がありますのでこれで」

そう言ってナツが退出する。

「そう言えば」

ふと考え込んだナツ。

「なんでナルトちゃんが男の子になってたのでしょうか」



……

……… 
 

 
後書き
続きません。
オリキャラ多め、主人公が人柱力など、よくあるNARUTOの二次っぽいやつです。
この後のペイン戦など、戦力過多で書くのがシンドイ…いえ、まぁ外典もこじつけですが…
ナルトが女でもネジが生きてれば、ボルトは生まれてくるっ!
と言う事で楽しんでいただけたのなら幸いです。 
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