テレモンピュール探偵事務所
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その表情を見て嘘ではないことがわかった。
前書き
その表情を見て嘘ではないことがわかった。
壁紙は白く床はフローリングになっているようだ。
その手には大きな鞄を持っているのが見えた。
「実はあなたにどうしても聞いてもらいたいことがあって来たんです」彼女は真剣な表情をしていた。その表情を見て嘘ではないことがわかった。どうやら本気のようだ。ならばこちらも真剣に答えなくてはならないだろう。
「どのような内容でしょうか?」私はなるべく穏やかに話しかけた。すると彼女はほっとしたような表情を浮かべた。「ありがとうございます」そう言って頭を下げた。「それでですね、あの事件の真相なんですけど……」
やはりその話だったか。私は心の中で頷いた。そして黙って次の言葉を待った。
「あれは殺人事件だったんですよ」彼女の言葉を聞いて耳を疑った。今、何と言ったのか?聞き間違いでなければ殺人だと言わなかっただろうか?「……どういうことですか?」思わず聞き返すと、
「ですから犯人は別にいるということですよ」と答えた。
その言葉に衝撃を受けた。では瑠璃は本当に殺されたというのか?信じられないことだが事実だとしたら大変なことになるぞ!すぐに警察に通報しなければ!そう思って立ち上がろうとしたができなかった。目の前の女性がそれを許さなかったのだ。いつの間にか私の手を掴んでいたのだ。驚いて彼女の顔を見ると笑っていた。背筋が凍りつくような感覚に襲われた。この感覚は以前に感じたものと全く同じだったからだ。そう、あの時と同じだったのだ!私は慌てて手を振り払おうとしたがびくともしなかった。まるで万力で固定されているかのようだった。このままではまずいと思い必死に抵抗しようとしたが無駄だった。次第に意識が遠のいていくのを感じた……。気がつくとベッドの上にいた。ここはどこだろう?辺りを見回すと見たことのない部屋であることがわかった。壁紙は白く床はフローリングになっているようだ。家具などは置かれていないようだが、かなり広い部屋のように思える。窓から外の様子が見えた。夜なので真っ暗であったが街の明かりが見えることからどこかの高層マンションの一室だということが理解できた。そこで思い出した。そうだ、私はあの女に気絶させられたのだ。ということはここは雨宮美沙子の家なのか?だとするととんでもないことになったぞ!早く逃げなくては大変なことになる。急いで起き上がろうとした時、ふとあることに気付いた。両手両足が縛られているではないか!これでは身動き一つ取れない状態だ。何とか抜け出せないかともがいてみたが無理だった。完全に拘束されているようでびくともしない。こんなことなら多少乱暴でも無理やりにでも逃げるべきだったかもしれない。今更後悔しても遅いだろうが……。
それにしてもこれからどうなるのだろう?殺されることはないと思うが、何をされるかわからないのが怖いところだ。
その時、ドアの開く音が聞こえた。顔を向けるとそこに立っていたのは雨宮美紗子であった。「お目覚めですか」そう言うとこちらに向かって歩いてきた。その手には大きな鞄を持っているのが見えた。まさかとは思うがその中に入っているものは武器なのではないだろうか?そう考えると恐怖が込み上げてきた。
「怖がらなくても大丈夫ですよ」私の考えを見透かしたように彼女が言った。「痛いことはしませんから安心してください」笑顔でそう言った。とても信用できるとは思えなかったが今は信じるしかないだろう。
雨宮美沙子はベッドの脇に立つと私を見下ろした。その視線はまるで獲物を狙う肉食獣のように感じられた。
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