テレモンピュール探偵事務所
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大学時代に交際を申し込まれたが時期尚早だと判断して辞退した。
前書き
大学時代に交際を申し込まれたが時期尚早だと判断して辞退した。
それから一度も会うことはなかったのだが、こうして再会することになるとは思ってもいなかった。
やがて決心がついたのか、彼女は顔を上げた。
いったいどういうことなのだろう?本当に彼女の言っていることが正しいのであれば、私は殺人犯の妹ということになる。つまり加害者の身内ということだ。そんなはずはない!だって私には何の罪もないじゃないか!それなのにどうして私が疑われなければならないんだ!?そんなの理不尽すぎる! そこまで考えたところで気が付いた。もしかして、あの女は私のことを疑っているのだろうか?そうでなければわざわざ私に接触してくるはずがないではないか!しかも私の名前まで知っていたということは、おそらく最初から私に目をつけていたという可能性が高い。だが、そうなると疑問が残ることになる。果たしていつから私のことを見ていたのだろうか? その時、玄関のチャイムが鳴った。私はベッドから起き上がると、ゆっくりと立ち上がった。こんな時間に一体誰が訪ねてきたというのだろう?不審に思いながらも玄関に向かうことにした。もしかすると新聞や宗教関係の勧誘なのかもしれないと思ったからだ。いずれにしても無視するわけにはいかないだろう。ドアを開けるとそこには見覚えのある女性が立っていた。確か名前は浮田草木と言った。大学時代に交際を申し込まれたが時期尚早だと判断して辞退した。草木は号泣しながら走り去ったが不思議と心は痛まなかった。私にとって恋愛などどうでもよかったからだ。むしろ迷惑だと思っていたくらいだ。それから一度も会うことはなかったのだが、こうして再会することになるとは思ってもいなかった。彼女は突然訪問してきたかと思うと、
「瑠璃さんのことでお話があります」と言ってきたのだ。そして家の中に入ってきたのである。突然のことで驚いたが追い返すわけにもいかないので仕方なく招き入れることにしたのだった。それにしても一体何の話をするつもりなのだろう?ひょっとして瑠璃を殺した犯人を突き止めたとでも言うつもりなのだろうか?しかし、それなら何故直接私に会いに来ないのだろう?普通は警察に行くべきではないのか?それとも何か特別な理由でもあるのだろうか? 私はそんなことを考えながら台所に行きお茶を淹れるためにお湯を沸かすことにした。その間にリビングに行くとソファに座って待っているように言った。すると素直に従ってくれた。意外と素直な性格のようだ。てっきり居座るつもりなのかと思っていたが違ったらしい。あるいは警戒しているのかとも思ったがそれも違うようだ。何となくそわそわしているように見えるが気のせいだろうか?いや明らかに何かを隠している。そして問題を抱えきれなくなって藁を縋る想いでここに来た。だが切り出す勇気がない。そんな態度が見て取れる。となると話の内容は想像がつくというものだ。恐らくは例の事件に関することに違いないだろう。
私はお茶の入ったカップを持って行くとテーブルの上に置いた。彼女はお礼を言うと一口だけ飲んでカップを置いた。私も自分の分を用意して向かい側に座った。
しばらくの間、無言のまま時間が過ぎていった。その間、私は彼女の様子を注意深く観察していた。何を考えているのかはわからないが緊張しているのは確かなようだ。時々、視線が合うのだがすぐに逸らされてしまう。よほど言い出しにくいことがあるのだろう。だが、いつまでもこうしているわけにはいかない。私の方から話しかけるべきだろうか? いや、もう少し様子を見よう。その方がいいだろう。
やがて決心がついたのか、彼女は顔を上げた。そして意を決したように話し始めた。
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