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テレモンピュール探偵事務所

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探偵は妻の友人を名乗る女を徹底的に追い込む構えだった。

 
前書き
探偵は妻の友人を名乗る女を徹底的に追い込む構えだった。
犯行現場に防犯カメラはなく、複数の目撃談を元に再現CGが作られた。
探偵は女の顔色が変わったことに気付くと、更に畳み掛けた。 

 
「わぁっ!元気というか幸せが貰える絵ですね」
思わずこぼれる嬌声を男が冷ややかに笑った。
「つまり、君も共犯者か」
「何ですってぇ」
想定外の言葉に女は憤る。
「女は今もICUにいる。意識不明だ。元夫の身柄は確保されたが妻の自殺だと言い張っている」
探偵は妻の友人を名乗る女を徹底的に追い込む構えだった。犯行現場に防犯カメラはなく、複数の目撃談を元に再現CGが作られた。
「だからと言って瑠璃さんを殺す必要はなかったはずよ!」
「殺すつもりはなかった。だが、結果的にそうなっただけだ」
「嘘よ。あなたがやったんでしょ? 犯人は自分だと自白したのよ」
「それは違うな。犯人は私じゃない」
「じゃあ誰なの?」
「その前に教えてくれないか? 君は何故この男のことを知っていたんだい?」
「そ……それは……」
探偵は女の顔色が変わったことに気付くと、更に畳み掛けた。
「私はね、君の口から彼の名前を聞いた瞬間にピンときてたんだよ。でも、念のため調べさせたらビンゴさ。やっぱり彼が殺したんだ。あの日、彼は会社で仕事をしていたと言っていた。それなのにどうしてあんな時間に公園にいたのか不思議に思わなかったかい?」
「……」
「それにしても凄いな。君が彼と知り合いだったことは間違いないようだ。どこから彼のことを聞きつけたんだい?」
「別に……たまたまよ」
「偶然ねぇ……。まあいいか。それで、君は彼を知っていたのかい?」
「ええ、何度か会ったことがあるわ」
「いつ頃かな?」
「一昨年ぐらいかしら。確か、私がお腹の子と一緒に散歩をしていた時にばったり出会ったと思うんだけど……」
「妊娠していたことを彼に話してたのかい?」
探偵の声色が厳しくなる。
「まさか!言うわけがないでしょう」
「では、その時はどういった話をしたのかね?」
「ただ世間話をちょっとしただけよ」
女の顔からは血の気が失せていた。額には汗さえ浮かんでいる。
「世間話であんな事件が起きるとは考えられないけどなぁ」
「……」
女は押し黙ったままである。沈黙の時間が長く続く。時計の音だけが響き渡る。まるで判決を言い渡される直前の被告のような心境であった。だが、探偵の質問責めはそれで終わったわけではなかった。
「それから、彼とはどれくらい付き合いがあったんだい?」
「そんなに長くはないわ。ほんの二ヶ月くらいじゃないかしら。それも偶然、街で再会しただけですもの」
「二ヶ月前に再会してから今まで一度も会っていないのかい?」
「ええ」
「ふーん、そうか」
探偵は再び腕を組むと天井を見上げた。何かを考え込んでいる様子だ。やがて視線を落とすと、ゆっくりと口を開いた。女は目の前の男が何を言うのか不安になった。心臓が高鳴る。
探偵が言った。
──君は瑠璃さんの事件とは関係なさそうだ。
安堵する反面、女の胸中には複雑な思いが渦巻いた。これでいいのか?このまま終わってしまって本当にいいのか?このまま引き下がってしまって後悔しないだろうか?しかし、いくら考えても答えが出るはずもない。もう後戻りはできないのだ。彼女は意を決すると探偵に向かって語りかけた。
──お願いです。私を信じてください。必ず犯人を見つけ出しますから。
その言葉を聞いて、男は一瞬驚いたような表情を見せた。そして微笑むと言った。
──もちろん信じているとも。
女はその笑顔を見て涙が出そうになった。
翌日、私はいつものように出勤した。
オフィスにはすでに何人かの社員の姿がある。私と同様に残業をする社員たちだ。このところずっと遅い時間まで仕事をしている。 
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