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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~

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#03 "Treasure hunting"

 
前書き
お宝は全て俺様が頂くぜぇ~~




ールパン三世ー 

 
Side レヴィ

「よう、待たせたな♪」

上機嫌な足取りで、アタシはロックを待たせてあった部屋に戻って来た。
床にせしめてきた(ブツ)を置きながらロックのヤツに話し掛けてやる。
やっぱ仕事が上手くはこんだ時には誰かに自慢しちまうよなあ。

「へへっ。バッチリ♪ お目当ての十字章も見つけたし、 マニア向けのお宝もザクザクだ。 ここは盗掘屋冥利に尽きる黄金郷(エルドラド)だぜ。
いやあ、こんな海の底まで潜った甲斐が………」

床の上で胡座をかきながら喋ってたアタシはそこで言葉を切った。
視線を上げてロックの方を見てみりゃ、やたら不景気な(つら)晒してやがったからだ。
部屋に据え付けられたベッドに座り込んで、顎に拳を当てて何やら考え込んでやがる風のロック(優男)にアタシは少しムカつきを覚えた。
チッ!折角人がいい気分だって時によ。
まさか一人で暗闇の海底(こんなとこ)に置いてけぼりにされて恐くなった、とか言いだすんじゃねえだろうな。
ママが一緒じゃないと夜中にトイレにも行けません、ってか。
全く手間の掛かる野郎だぜ。

まあ、今日は気分も良いし、ちっと慰めてやっか?

「おい、ロッ…」

「レヴィ。そいつはここに置いていこう」

は?

言葉を遮られた事に対するイラつきよりも驚きの方が勝った。
ほの暗い潜水艦の室内に響いた奴の声は小さいものではあったが、確実にアタシの耳に届いた。

レヴィ。そいつはここに置いていこう。

両目を見開いてやや離れた位置に座る、最近仲間に加わった日本人の顔をまじまじと見つめちまう。
そんなアタシの視線を感じたか、ロックも伏せていた顔を上げて此方を見つめてきた。

マジな眼かよ……

「レヴィ。俺、色々考えてたんだ。
君には怒られて、呆れられるかもしれないけど、 やっぱり言いたい事は言おうと思うんだ」

言いたい事?
そりゃまあ、言いてえ事は言やあいいけどよ。ちったあ状況ってもんを考えてくんねえかな。
せめて海の上に出てからも良いんじゃねえか。

「おいおい、ロックぅ。
アタシらがここに何しに来たか忘れたのか?そもそも物を盗む為に忍び込んだぜ?アタシらはよ。
今更盗みを止めろなんてどういう了見さ」

全くいきなりわけ分かんねえ事言い出しやがって。

「絵に関してはともかくさ、 勲章とかそういった物は此処にこのまま置いていくべきだと思うんだ」

そう言いながらアタシに近付いてきた奴は、此方に向かって何かを差し出してくる。
その手の内にあったのは古びた写真。
アタシはそれに手を伸ばす気もなく、ただ黙ったまま見ていた。

「さっき艦長の死体の傍で見つけたんだ。 多分艦長の家族なんだと思う」

映ってんのは制服着た軍人が一人。その隣りにガキを抱いた女と、もう一人別のガキが二人の前に立ってる。そんな写真だった。

「勲章ってさ、その人が精一杯やってきた証だろ。たくさん努力して、仲間にも助けられて、運も手伝って、やっと貰える。そういうものだろ」

「そんなものを、俺達が勝手に持っていっちゃいけないよ。 それを手にしていいのは、艦長自身と、彼の家族だけだろ」

「レヴィ。 頼むから勲章(それ)はここに置いていこう。
もしどうしても持ち帰るんなら、 家族の元に帰してあげようよ。そんな面倒な事はごめんだって言うなら俺がやる。君に迷惑は掛けない。
お願いだから俺の言葉を真剣に考えてくれないか。頼む」

………正直、途中から話は聞き流してた。
ただ狭い室内じゃあ、野郎がアタシに向けてくる暑苦しい視線の方は簡単には受け流せない。

だから、アタシは懐から煙草を取り出す事にした。
まあ、一本火い点けてからだな。
ロック(ガキ)の相手はそれからでいい。

「レヴィ。俺は………」

まだ何か(さえ)ずっていたようだが、意識は唇に挟んだ煙草に向かっていたので良くは聞き取れなかった。
ま、んな事はどうでもいい。

先端に火を点け、一気に肺の奥深くまで煙を吸い込む。
喉の奥から鼻に抜けてくる臭いはこんな状況だってのに、いつもと何ら変わらねえもんに思えた。
口を少し開け、部屋の天井に向かって煙を吐き出す。
揺れながら立ち上ってゆく紫煙。
それをぼんやりと眺めているアタシ。

………ふうん。結局そうなんだな。
アンタは"そっち"の人間か。

「レヴィ。君が怒っても、呆れても当然だ。 でも俺は言いたい事は言う。 そう決めたんだ。 勲章を金に替えるなんて止めてくれ。 艦長の誇りを汚さないでやってくれ」

床に煙草を押し付けて揉み込むようにして消す。

「レヴィ!お願いだ!」

ロック(甘ちゃん)の顔にピントを合わせる。

「聞いてるのかよ!人のはな………」

「ロック。ここは中々良い場所だと思わねえか」

はっ?とか聞き返してくる間抜けの声は流して話を続ける。
視点を間抜けな顔の真ん真ん中に固定したままで。

「ここに居んのはアタシとアンタの二人だけ。
ライトの明かりだけが頼りの沈没船の中。
雰囲気造りはバッチリじゃねえか。いい機会だ。ちょっとこの場に相応しい話ってやつを聞かせてやるよ。
しっかり聞いてんだぜ、ロック。レヴィ様の特別講義の始まり、始まりだ。お代はサービスしといてやるぜ」

 
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