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その小さな女の子のことが気になってしまったんだが、どう接していけばいいんだろう

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第3章
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 そのまま夏も終わって、秋にななのちゃんが修学旅行に行くって言っていた。帰ってくるという日、僕は、仕事を終えて、何となく、小学校に向かっていた。

 学校に着くと、バスが子供たちを降ろして帰っていくところだった。そして、校庭では、先生の挨拶が終わったのか、父兄がそれぞれの子供たちを連れて帰る様子だった。僕は、それを遠巻きに眺めていたのだが・・・みんながそれぞれに帰って行って、人も少なくなった時、ポツンと一人でななのちゃんが立っていた。

 そして、しばしばらくほうを見ていたが、急に走り出して向かってきた。

「遅いゾー シュウ」と、僕に飛びついて、胸に顔をうずめるようにして腰に手を廻して、しがみつくように、そう言った声は泣いて震えている様だった。

「えぇー 迎えに来るなんて約束したっけぇー」

「だって 帰りのバスの中で きっと シュウ君が来てくれていると ななはネ 感じたんだもんー よかったー 信じていて」

 その様子を見ていた女性の先生が近づいてきて

「ななのちゃん 大丈夫?」と、不審がって聞いてきた。

「うん ここみ先生 ななの大好きな親戚のお兄ちゃん 迎えにきてくれたんだぁー」

「そう 良かったね ななのちゃん」

「うん 一緒に帰るネ」

 一緒に歩きながら、僕は自転車を押して

「さっきの人 会ったことがあるよ 保健の先生だろーぅ? 一度センターに来られた時、挨拶したことがある」

「そうなの? いつも ななのこと 気に掛けてくれる 優しい先生」

「そうなのか うん 優しそうな人だネ」

「ねぇ このまま シュウ君ち 行っても良い?」

「うっ いいけどー まだ 時間 早いのかー」

「そう まだ 帰るの怖い」

「わかった いいよ」

 僕の部屋に上がり込むと、キッチンの隣の部屋とかバスルームを見て回って

「よし! 女の臭いはしないネ 掃除もちゃんとしているみたい」

「なにを チェックしてるんだよ おとなしく座ってろよ」

 ななのちゃんはリュックから手帳みたいなものを取り出して

「これっ お土産 お金も無かったし これっ きれいだったから あげる」と、手帳の間に挟んでいた紅葉を取り出していた。

「そうかー 真っ赤できれいだね 大切にするよ」

「うん なな こんなことしかシュウ君にしてあげられないから・・」

「いいんだよ 気使わなくって そんなこと・・ 僕は君が元気でいてくれれば、それでいいんだよ」

「ありがとう ななネ シュウ君に出会ってから 毎日が楽しい 生きているって感じがする」

「そんな 大げさなもんでもないだろー ななのちゃんは笑ってれば可愛いんだから」

 そして、しばらく僕の本棚を物色して、取り出しては読んでいた。僕がお米を研ぎだすと

「ねぇ 晩御飯? なに食べるん?」

「あぁ 牛丼の素カナ」

「ふぅーん 野菜は?」

「そんなものは無いなぁー」

「野菜もとらなきゃーぁ 身体に悪いよ」

「わかってるよ 今日はたまたま無いの! あのさー そろそろ帰らなきゃーナ 暗くなる前に 送って行こうか?」

「いいの! まだ 帰りたくないなぁー もっと 居ちゃーだめ?」

「ダメ! お母さん 待ってるよ」

「そんなこと ないと思うけどなー ねぇ なな 明日 学校お休みなの 来てちゃぁダメ?」

「何言ってんのーぉ そんなー」

「ねぇ お願い なな 行くとこないの お掃除しといてあげる ねぇ 鍵! でないと 帰んないよ」

 僕は、戸惑いながらも、どうでもいいやーと、スペァの鍵を渡して、途中まで送って行った。でも、小悪魔的な女の子に引き込まれていたのかも知れなかった。  
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