たどん王国の激ひみつ【完結】
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突然爆発音のようなものが響いてきた
前書き
「ダンジョン・マスター」をプレイした男子生徒が、悲鳴を上げている。突然爆発音のようなものが響いてきたが、生徒は怯えた様子だった。その様子に「どうなってんだよ!クソッ!」と叫びながら机に拳を叩き付けた。
誰かがそう提案すると何人かが席を立ち上がって教卓の方へと向かったがすぐに戻ってきた。その顔には困惑の色がありありと浮かんでいて……おそらくは空振りだったのだろう。
「……やっぱりダメだ」
「うん、完全におかしくなってる」
「うそ……」
「そんな……嘘だろ……」
絶望に打ちひしがれる生徒たち。
しかし、そんな中で一人だけ立ち上がった者がいた。
「……先生」
「……? 君は確か……」
「……はい、佐藤です」
「ああ、そういえば居たな。それで、どうかしたのか?」
「いえ、その……」
彼は一瞬、躊躇う素振りを見せたが意を決したようにこう告げた。
「……すみません。気分が悪くなったので保健室に行ってきます」
「えっ? でも、お前、そんなに具合悪そうには見えないけど」
「お願いします」
有無を言わせない雰囲気に押された教師が戸惑いつつも許可を出すと佐藤という男子学生が足早に立ち去って行った。……それからしばらくしてのことだった。
ドオオオン!! 突然、爆発音のようなものが響いてきたのだ。
「な、なにっ!?」
「まさか地震!?」
「いや違うよ。これは明らかに外からだよね」
生徒たちが動揺する中、担任が冷静に分析する。
「そうだね。それに結構近いみたいだし」
「あ、ほんとだ」
窓の外を見てみると煙が立ち上っていた。「火事だ」「どこだろう?」「見てくるよ」といった会話が聞こえてくる。「ああもう、うるさいぞ!」
そこで騒ぎを聞き付けたのか、別の教員がやって来て怒鳴り散らした。……とその時、「うわっ」という声が聞こえてくる。声の主はどうやら佐藤くんのようだった。彼は酷く怯えた様子で窓の外を指差している。その先に視線を向けると……そこには惨状が広がっていた。「ひっ!?」思わず悲鳴を上げる生徒もいたが、大半の生徒はあまりの凄まじさに言葉を失っていた。……それは、あまりにも酷い光景だったから。ある者は首を引き千切られ、また、ある者は腹を貫かれており、そして、ある者は頭から真っ二つにされていて……。そのどれもが凄絶で目を背けたくなるようなものばかり。
その全てが人間の形をしていた。「うぷっ」
嘔吐する者が現れても何ら不思議はなかった。それほどまでに凄惨な有り様だったのだから。「こ、これは……」
「な、なんてことを……」「あ、あいつは何を考えてるんだ」……誰もが混乱していた。当然だろう。こんな非日常、受け入れられるはずがなかった。だが、いつまでも呆然としていては何も変わらない。
「あ、あの! 救急車を呼んだ方がいいんじゃないですか?」
勇気のある生徒が発言した。だが、「いや、やめておいた方が良い」と即座に却下された。
「どうしてですか!?」
「だってもう死んでるかもしれないじゃないか」
「……!」
「仮に生きていたとしても助かる見込みはないよ。……それに、もう手遅れだと思うしね」
そう語る教師の顔色は悪く、冷や汗を流していた。
無理もないだろう。この場にいる者たちの大半は死体を見たことがないのだから。
「そんな……」
生徒は項垂れる。「あ、あぁ……あ、あっ」
泣き崩れる者もいた。……ただ、私は違った。
「……」
私にとっての死体とは沙世子のことで……だからか恐怖心は微塵も湧かなかった。
「はいはーい、静かにしてね〜」
パンパンと手を叩いて注意を促した後、担任の教師は話し始めた。
「とにかく警察が来るまでは教室から出ないでね」…………
「ふぅ、これでよしっと」
俺は自室でパソコンの前に座るとメールを送信した。
内容は勿論、エベレスト先生を貶めるような文章である。俺は昔から人の嫌がることが得意で、よく人をいじめたり嫌がらせをしたりすることがあった。
まぁ今は仕事の関係であまりしていないんだけど。
さて、これから何をしようかな。……よし、じゃあ早速、あのゲームを始めるか。俺はデスクトップに表示されているアイコンにカーソルを合わせる。するとタイトルが表示された。『ダンジョン・マスター』……このゲームをプレイすれば今日も楽しい一日になるはずだ。俺は迷わずクリックする。『ダンジョン・マスターの世界へようこそ!』……ん?何だこれ? 気が付くと、そこは見知らぬ部屋だった。「えっ!?ここは……?」
俺は慌てて周囲を確認しようとしたが体が動かない。よく見ると俺は椅子に座っていた。「え?どういうこと?……まさか」俺は恐る恐る自分の手を見つめる。それは紛れもなく俺の手だったが、何か変だった。まず大きさが違う。小さい。とても小さくなっている。次に肌の色だ。何となく黒っぽい感じがする。「……嘘だろ」
まさかと思いつつ近くの窓ガラスへと近付く。……するとそこに映った姿は俺ではなく……小さな子供のそれだった。「そんな馬鹿な!」……どうやら俺は、本当に子供になってしまったらしい。「どうなってんだよ!クソッ!」俺は叫びながら机に拳を叩き付ける。ガン!「……痛い」どうやら力加減を間違えてしまったようだ。……何にせよ、今の俺はどうすることも出来ない。ならば仕方がない。大人しく待とう。幸いにも時間はたっぷりとあるんだしな。……それからしばらく時間が経過した。だが変化は訪れなかった。……いやいやいや、いくら何でも遅すぎるだろ!もう1時間くらい経つぞ! 俺は焦燥感を覚え始めていた。
もう我慢の限界だ!そう思い、扉を開けると外に出る。すると……
「お待ちしておりました。ご主人さま」
「うおっ!?」……驚いた。
だっていきなり目の前に女の子が現れたのだから。……というかメイド服?「どうかなさいましたか?」
少女が首を傾げる。「え?いや、その……君は?」「はい。わたくし、リリアナと申します」
リリアナは礼儀正しくお辞儀をする。……いやいや、名前を聞いた訳じゃないんだって。「えっと、そうじゃなくて」
……どうしたものだろうか?どう質問したらいい?「……?」
彼女は不思議そうな表情を浮かべているし……。う〜ん、困ったなぁ。……取り敢えず自己紹介でもするか?「あー……」
よし、いくぜ? 覚悟はいいかい?……せぇ〜のぉ!
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