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たどん王国の激ひみつ【完結】

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その少女は、血塗れでピクピクと痙攣していたという。

 
前書き
ある女子高生が、自宅の玄関前に倒れ伏している少女を目撃した。その少女は、血塗れでピクピクと痙攣していたという。母親に「おはよう、私の愛しい妹」と声をかけられ、救急隊員に駆けつけた。 

 
突然後ろから押されて転んじゃったけど、一体誰がこんな事をしたんだろう?
「……あれ?」
そこには誰もいなかったけど……今のは確かに人の気配を感じたのに……どうして誰もいないんだろう……もしかして、私ってやっぱり寝ぼけてただけなのかな……?……でも一応確認しておいた方が良いよね。
「……誰かいませんか?」……返事はない。うん、やっぱり誰もいないよね。よかったぁ、勘違いだったんだ。……それなら、早くここから出なくちゃいけないよね。
「よいしょ……あれ?」
おかしいな……ドアが開かない……どうしてだろう……?
「誰か開けてください!」
おかしいな……どうして返事をしてくれないの?もしかして、みんな死んじゃったの?それとも、私が殺しちゃったのかな……?……だとしたら、ここにいたら駄目だよね。今すぐ逃げなきゃ。でも、
「どうやって逃げたら良いの……?」……このままじゃ駄目だよね。とにかく、まずはこの部屋から出てみようよ。それから考えればいいよね。
よし、行こう!……あ、そうだ!そういえばまだ鏡を見てなかったね。
「……嘘」
何で、私がそこにいるの……?
「そんな……」
私の顔が、私の身体が、全部黒く染まってる……!
「嫌……嫌……嫌……」
嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!! こんなの違う違う違うちがうちがうチガウチガウチガウチガッッ!!
「うわあああァアあァあああアあ!!!」……ハッと我に返ると、私はいつものようにベッドの上で仰向けになっていた。荒く呼吸をしながら天井を見上げる。何だろう、凄く恐ろしいものを見たような気がするけれど、よく思い出すことができない。
「あれは……ただの夢だったのかな……」……それにしても不思議な夢だったなぁ。まるで自分が体験したかのような感覚があったよ。う〜ん、何だかもどかしいなぁ。まあいいや。忘れちゃったものは仕方ないしね。「ふあぁ」……それにしても今日は凄い朝だね!だって外が眩しいよ!窓を開けると太陽の光が降り注いできた!
「うんっ、今日も良い天気だね」そして私は大きく背伸びをする。その時、「お姉様っ」という可愛らしい声と共に誰かが抱きついてきた。私はその人物を受け止めて微笑む。「おはよう、私の愛しい妹」「えへへっ」彼女は私の双子の妹で名前は美希(みき)っていうの。
ちなみに私の名前は雪奈(ゆきな)だよ。そう言えばさっきから妹の姿が見えないけど何処にいるんだろう? まあ多分だけど、まだ自分の部屋に居るんじゃないかな。「ほら、行くわよ」私はそう言うと部屋の外へ出た。すると、「待ってくださーいっ」という慌てたような声が聞こえてくる。どうやら予想通りみたいだね。そして、すぐに彼女の姿が見えてくる。
彼女は私と同じ顔をしていて、私とは正反対の真っ白な髪色をしていた。服装も私とは違って白いワンピースだった。その容姿はとても整っていて可愛いのだが、彼女は病弱なためあまり外出はしない。そのため肌も白く綺麗でとても美しいのだ。「今日も寒いですね……」と言って手を擦り合わせている彼女だが、実はそうでもない。だって今は夏だからね。気温的にはそこまで寒くはないと思うよ。
「もうっ、どうしてそんな薄着なんですか!?もっと厚手の服を用意していたはずですよね?それに汗までかいていますし……ちゃんとしてくださいよ〜」彼女は怒っているのか呆れているのか分からない様子で言った。「ごめんね。最近暑いから油断しちゃってたのよ」と苦笑しつつ謝ると、彼女は小さく溜め息を吐いてから私の腕にしがみついて来た。「次からはちゃんと気を付けてくださいね」と言うとそのまま引っ張るように歩き出した。「わかったわ。ところでどこにいくの?」と訊ねると、少し間をおいて「……とりあえず私の部屋です」と言った。
「はいこれ」
そう言って差し出されたのは一枚の封筒だった。中を確認するとそこには1万円札が入っていた。これは何なのかと思っているとそのタイミングで電話が鳴る。相手はもちろん母さんだった。
『はいもしもし』
俺が出るなり元気そうな声で挨拶をしてきた。
『今日も暑いわね〜』
世間話を始めた彼女に思わず眉を寄せてしまう。
このクソ暑い日によくもまあベランダに出られるものだ。この人はそういう人なんだと思いつつ適当に相槌を打つ。この時間は何よりも辛い……俺はスマホを手に取りながら時計に目をやった。
あと数分もすれば7時になるところだった。
今日も仕事が始まる。
俺の仕事は家庭教師だ。この辺りでは名の知れた進学校がある。
そこの生徒たちを教えているのである。
今日もその生徒の家へと向かうところだった。
しかし、それはもう叶わないことかもしれない。
先程も述べたようにあと数十分で出勤時刻だ。
だが、家を出ることが出来ない。何故なら――
「ええぇっ! どうしたのっ!? 大丈夫っ!?」
――自宅の玄関前に倒れ伏している少女がいるからだ。
その子は血塗れでピクピクと痙攣していた。
「ねえ君!しっかりして!」
声を掛けるが反応がない。
意識を失っているようだ。
どうしようかと考えていると不意に救急車のサイレン音が聞こえて来た。
「……まずい」
俺は焦燥感に駆られた。
このままだと救急車が到着してしまい、彼女が救急隊員によって病院へと搬送されてしまう。そうなったらもう手遅れだ。一刻の猶予もない。
「……よし」
覚悟を決める。
「……あの、すいません。ちょっといいでしょうか?」
俺は近くの交番の警察官に声をかける。
「はい、何でしょう?」
「実は僕、今急いでいるんです。なので救急車を呼んで頂けませんか?住所はこれです」
そう言いながらポケットからメモ用紙を取り出して渡す。
「分かりました。お待ち下さい。………………はい、確認しました。それじゃあ行っていいよ」
「ありがとうございます」
こうして俺は無事、遅刻を免れたのであった。
「おはようございます」
「ああ、おはよ……う?」
朝のホームルーム前、担任の先生が教室に入って来ると皆が一斉に挨拶をした。しかし、担任は何故か戸惑った表情を浮かべて首を傾げている。「どうしたんだろう?」
クラスメイトの一人が呟いた直後、廊下の方が何やら騒がしくなってきた。それも尋常ではないくらいの喧しさである。何かあったのだろうかと不思議に思っていると勢い良く扉が開かれ、そこから一人の女子生徒が飛び込んでくると同時に大きな声を上げた。「大変だよ! みんな聞いて! 大変なんだよ!!」
「どうしたの?」
「一体何があったんだ?」
「落ち着いて、何があったか教えて」
クラスメイト達が彼女を宥めようと口々に語りかける。
「実は、さっき……」
彼女はゆっくりと深呼吸してから事の顛末を話し始めた。
「……ってことがあったの」
「「「「…………」」」」
彼女の話を聞いた途端、クラス全体が静まり返った。……無理もない。何せ内容が内容だ。
「……おい、誰か先生の様子を確認してきてくれよ」 
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