| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

たどん王国の激ひみつ【完結】

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

精神科医に「お目覚めかな」と声をかけられた

 
前書き
精神科医に「お目覚めかな」と声をかけられた。白衣を着た女性が、何か様子が変だと感じたという。「本当にすごい先生だったの」と女性は淡々と告げた。 

 
差し出された彼女の手に自分の手を重ねる。すると、急に意識が遠のき始めた。「あ……」
目眩がする。体を支えていられない。
「大丈夫?しっかりして」彼女が話しかけてくるが、返事をする余裕はなかった。
そのまま私は床に崩れ落ちる。「……」
私は静かに目を閉じた。
「……」
気がつくと、私は暗闇の中に立っていた。
周囲には誰もいない。ただ闇が広がっているだけだ。「……ここは」

「お目覚めかな」声をかけられたので振り返ると、そこに一人の少年がいた。
年の頃は十五歳ほどだろうか。整った顔立ちをしているが、どこか陰鬱な雰囲気を漂わせていた。
「君は誰ですか?」
「僕は君だよ」
「どういう意味ですか?」

「わからない?」
私は少し考えてから答えた。「もしかして、あなたも私と同じで別の世界から来たんですか?」
「その通り」彼は満足気に首肯した。「よくわかったね」
「それなら話は早いです」私は言った。「私を殺してください」
「うん?」
「お願いします」頭を下げる。「私にはやらなければならないことがあるのです」
すると彼は困ったように頭を掻いた。「うーん」
「……駄目でしょうか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
「それなら」

「でも、僕に頼むのは間違っているんじゃないかな」
「どうしてです? 私はあなたの分身なんですよね? だったら――」
すると彼は遮るように言う。「確かにそうだけど、僕が君を殺す理由にはならないよ」
「そんなこと言わないで、助けてください」
「嫌だ」
「どうしてもダメなんですか」
「そうだよ」
「……」
私は黙り込む。すると彼は「悪いけど、諦めてくれないか」と言った。「これは僕の問題なんだ」
「……」
「わかってくれないのかい」

「……」
私は俯いて唇を噛んだ。そして、
「……わかりました」
小さく呟くと、踵を返して歩き出した。
「待って」
呼び止められたが無視する。そして、二度と振り返らなかった。

***
目が覚めると、
「おはようございます」と誰かに声をかけられた。見るとそれは、白衣を着た女性だった。年齢は二十代の後半くらいだろうか。メガネをかけており、真面目そうな印象を受ける。
「……あれ?」
おかしいな。私はこんな人知らないはずなんだけど。「あ、あれ、あれ?」

「どうかしましたか?」女性は心配そうに尋ねてきた。「な、何でもありません」
「そうですか」
不思議に思ったが、とりあえず考えるのをやめておくことにした。きっと疲れているせいだろう。
「では、早速診察を始めますので」
「はい」
言われるがまま服を脱ぐとベッドに横になった。それからしばらく待つこと数分、「終わりましたよ」と言われたので上半身を起こす。
すると女性が私の胸に聴診器を当てた。そしてペンライトを取り出して瞳孔を確認する。次に脈拍を調べた後で口を開いた。「特に異常はありませんね」
彼女は淡々と告げる。
その口調からは感情が読み取れなかった。「先生は凄腕の精神科医だと聞いているから」
私は呟く。「だからきっと何とかしてくれると思って来たの」
すると彼女は笑みを浮かべた。「そうですね」
しかし、なぜかその笑みは作り物めいたもののように思えた。「先生はとても優秀な方でした」
「……」
「患者さんの症状を理解し、適切な治療を施すことができたと思います」
「そうよね」
私は同意した。「先生は本当にすごい先生だったの」
「だからこそ、残念でなりません」
「……」
「ところで、先生の病状についてなんですが」
「ええ」
「実は私もよくわかっていないんです」
「え?」
「何しろ原因不明の奇病ですので」
「……」
私は絶句した。
目の前の女性が何を言っているのか理解できなかったからだ。
だっておかしいじゃない。私が病気だなんてあり得ないでしょう。だって私は健康そのものなのだから。
なのにどうして医者のあんたの方がおかしなことを言ってるのよ。
おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。おかしいじゃない。ああ、それにしても今日も暑いなあ。早く家に帰ろうっと! ねえ、知ってる?この辺りにね、出るらしいよ。何が出るって、決まってるじゃん!幽霊だよ、ゆ・う・れ・い!! あははっ!怖いの?大丈夫だよ、あたしが守ってあげるからさ!! ほら、見てよ!この子達、可愛いでしょう?あ、もちろんあたしのペットって訳じゃないよ?ちゃんとお友達だからね! でも、ちょっと悪戯好きなんだよねぇ。さっきなんてさ、この子達が勝手に走り出して、危うく轢かれそうになったんだから! だからね、ちゃんと繋いでおかないと駄目なの!わかった? え、何?もう帰っちゃうの?あ、そっか、まだ学校終わってないもんね。じゃあ、
「また明日」だね!ばいばーいっ! あーもうっ!本当最悪だわ。あいつのせいで気分悪くなったし……。あの馬鹿犬共め……。後で絶対懲らしめよう……! それにしても、ここはどこなの……!?確か私、あの変態野郎と一緒に居たはずなんだけど……。もしかして誘拐されたとか……?まさか、そんな………………いやいやいやいや有り得ないわよ。そんな事あるわけがないわ……。
まぁいいわ。どうせその内誰か来るだろうし、つうか殺す!絶対に殺してやるから覚悟してなさいよね……!!……あ、やっと人が来てくれたみたい。もう、遅いよ~。私、待ちくたびれちゃったよぉ。……ん、あれ、何か様子が変だよ?私、ここに閉じ込められてるんだけど、全然気付いてくれないし、ずっと独り言を喋ってるよ?どうなってるのかな?…………あ、わかった。これって夢なんだね。そうだよ、それ以外考えられないよ。うんうん、きっとそうに違いないね。よし、そうと決まればもう起きちゃおうか。おーきーろー!!!
「ふぅ……」
危ないところだった……もう少しで起きる所だったよ……全く、驚かせないで欲しいなぁ。でも良かったぁ、これでようやく外に出られるね♪
「きゃあっ!!」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧