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博麗神社が幻想郷入り【完結】

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魔理沙が、美奈の霊夢に「どうか幸せになって」と伝えたという

 
前書き
魔理沙が、美奈の霊夢に「どうか幸せになって」と伝えたという。魔理沙は、美奈に別れを告げると去って行ってしまった。魔理沙は自分の気持ちを伝えたが、引っかかることがあったと筆者。 

 
振り向くとそこには魔理沙がいた。どうやら魔理沙の方は順調に回復したようで、今はいつも通りの服装に戻っていた。
隣に座るよう促すと、魔理沙は遠慮がちにそこに腰掛けた。それからお互いに何も言わないまま時間が過ぎていったが、やがて魔理沙が意を決したように話し出した。
自分は霊夢が幻想郷に戻ってきたら自分の想いを伝えるつもりでいる。その話を聞いた時、美奈は驚いたが魔理沙ならきっと霊夢に似合った良い男性になれると思った。そこで、もし霊夢が起きていたら伝えて欲しいことがあると魔理沙に頼まれる。しかし、魔理沙は困ったような顔を浮かべるだけで、なかなか口に出してはくれない。美奈が痺れを切らせて早く言ってあげてと言うと、魔理沙は大きく深呼吸をして霊夢の方を真っ直ぐに見つめた。
それから一言一句間違えずに言葉を紡ぐ。それはまるで呪文のような、どこか懐かしさを感じるものだった。魔理沙はそう言い残すと立ち上がって、美奈に別れを告げると去って行ってしまった。美奈は呆然としながらその背中を見送ると、しばらくその場に立ち尽くしていた。そして空を仰ぎ見ると、霊夢の事を想う。
(霊夢……どうか幸せになって)
その瞬間、霊夢の身体に変化が訪れる。霊夢は再び目を開くと、目の前にいる存在を視界に捉える。その視線に気づいた少女は、ゆっくりと霊夢の方へと振り返る。少女は目に涙を浮かべると、微笑みかけた後で静かに呟いた。ありがとう……それからごめんなさい。
少女が何を言っているのか分からない霊夢だったが、何かを伝えようとしていることだけは理解できた。だからもう一度よく見ておこうと思い、目を凝らす。すると少女の身体は徐々に透けていき、ついには消えてしまった。その直後、激しい頭痛に襲われて意識を失いそうになる。だが、ここで自分が倒れたら誰が幻想郷を守るのか。だから歯を食いしばって必死に耐えると再び辺りの様子を確認する。そこは神社の寝室であり、傍らには心配そうな顔をした少女の姿があった。そこで初めて自分が倒れていたことを理解すると、美奈に向かって手を伸ばすと掠れた声で話しかける。大丈夫よ……。まだ時間があるはずよ。そう伝えると美奈が泣き出しそうになっているのが分かった。しかし霊夢はそれを止める術を持っていない。せめて少しでも美奈の支えになろうと手を握りしめると、美奈は強く握り返してきた。しかし、それすらも出来なくなるほど体力は低下しており、やがて霊夢の手は美奈の腕の中へ収まると完全に力が抜け落ちてしまった。

***
魔理沙は自分の気持ちを伝えた。それは紛れも無い事実なのだが、どうしても引っかかることがあった。あの日以来、美奈の様子がおかしいのだ。いや、おかしいのは最初からか。 
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