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博麗神社が幻想郷入り【完結】

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霊夢は毎日美奈と行動を共にするようになった

霊夢は毎日美奈と行動を共にするようになった。最初はお互い距離感をつかむことが出来なかったが、次第に仲良くなっていった。しかし、そんなある日のことだった。魔理沙が材料を集める為に外出した日、美奈が買い物をしてくると言い残して神社を後にした。その時の美奈の様子がおかしいことにはすぐに気づいたが、何が原因なのかまで知る由もなかった為、美奈が帰ってくるのを大人しく待っていた。だが美奈が帰ってこない。いくら待っても美奈が戻って来る気配が無かった。
不安になった霊夢は神社を出ると辺りを探索してみる事にした。
しばらくして霊夢は人里で美奈の姿を見つけることが出来たが、そこには信じられない光景が広がっていた。美奈は複数の人間に取り囲まれており、その中には見知った男の姿もあった。霊夢はその光景を見て、急いで止めに入るが時すでに遅く、取り押さえられてしまった。男は魔理沙の知り合いだと名乗ると、霊夢に向かっていきなりナイフを振りかざしてきた。幸いにも、すぐに霊夢に危害を加えるつもりはないらしく、そのまま神社に連れて帰ろうとしたが、その時霊夢が抵抗したためにやむなく手荒な方法で連れ帰る羽目になってしまった。霊夢は魔理沙の事を頼むと必死で訴えるが、誰も聞いてはくれなかった。
それどころか霊夢は、その日から暴力を振るわれる日々が始まった。霊夢が逃げ出さないようにするためか手足は常に拘束されていた。
さらに食事さえも満足に与えてもらえず、衰弱していく一方だった。
その事を知った魔理沙が救出しようと乗り込むものの、返り討ちに遭ってしまう。魔理沙はそのまま監禁されてしまった。
「……これが全てだ」
藍は静かに語り終えると同時に大きな溜め息を吐いた。それを見た霊夢が悲痛な面持ちを浮かべる。魔理沙が誘拐された理由については大体想像がついた。
「まさか……私のせいだったなんて」
美奈は両手で顔を覆い、肩を震わせて泣いている。その様子を見た霊夢がそっと抱き寄せた。
「気にしないでいいのよ。私が勝手にやったことだもの」
「でも……」
美奈が嗚咽まじりにそう言うと、霊夢は優しい笑顔を向けた。
しかし、それも束の間。霊夢の顔からは表情が消えてしまう。そして霊夢は静かに口を開いた。
美奈は幻想郷へ来て間もない頃は霊夢を尊敬していたが、今ではその姿は見る影もない。しかし霊夢にとっては美奈が自分の娘のように可愛く思えていたので仕方の無いことだった。しかしこのまま放置すれば、いずれ美奈が壊れてしまうことも分かっていたため、どうにかしなければならなかった。だから私は美奈の為に、魔理沙の為に出来る限りのことはするつもりよ。たとえそれで自分がどうなったとしても構わないわ。でも一つだけお願いがあるの。私はこれからしばらくの間眠りにつくけど、その間に霊力の封印を解くことが出来る者がいれば私を起こしてちょうだい。そうしないと今度こそ私は完全に消滅してしまうかもしれないから……。

***
あれから一週間が経過したが、未だに誰一人として目を覚ます者は現れない。霊夢の言った通り、幻想郷に異変が起きた様子は無いようだ。
霊夢は相変わらず眠っている。もうじき目を覚ますのだろう。
そして目覚めた時には、霊夢はこの世界にはいない。そう思うと寂しさを覚えるが、同時に安心している自分もいることに気付く。これでよかったのだと……きっと霊夢の事を大切に思ってくれる誰かが現れてくれるはずだと。
そんなことを考えながら縁側に腰掛けていると背後から声をかけられた。 
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