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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第三十三話 さようなら

「(この城の最終ボス?このゲームの、ではなく?)」

ヒースクリフ/茅場晶彦の言い回しにルナは妙な引っ掛かりを感じていた。ヒースクリフ/茅場晶彦の言い回しだと、まるで・・・、とそこまで考えていた時、苦悩の色が混じった声音で斧槍を握りしめ、斬りかかろうと地面を蹴っていた血盟騎士団の幹部がいた。

「貴様・・・貴様が・・・。俺たちの忠誠―――希望を・・・よくも・・・よくも―――――ッ!!」

だが、その動きに茅場晶彦は動揺することなくすばやく左手を振り、メニューウインドウを操作した次の瞬間には地面へと倒れた。HPゲージを見るとグリーンの枠が点滅しているのは麻痺状態の証であった。

「あ・・・キリト君・・・っ」

続けざまに茅場晶彦がメニューウインドウを操作すると、キリトを除く全員が麻痺状態となり、不自然な格好で倒れ呻き声をあげていた。

「・・・どうするつもりだ。この場で全員殺して隠蔽するつもりか・・・?」

「まさか。そんな理不尽な真似はしないさ。こうなってしまっては致し方ない。予定を早めて、私は最上層の≪紅玉宮≫にてきみたちの訪れを待つことにするよ。だが・・・その前に・・・」

いったん言葉を区切ると圧倒的な意志力を込め、キリト見据えて言った。

「キリト君、君にはリワードをを与えなくてはな。チャンスをあげよう。今ここで私と一対一で戦うチャンスを。むろん不死属性は解除する・・・どうかな?」

「だめよキリト君・・・!あなたをここで排除する気だわ・・・今は・・・今は引きましょう!」

アスナが叫ぶがキリトは決意のこもった表情で茅場晶彦を見据えていた。しかし、次に響いた声はキリトのものではなかった。

「それより、団長、一つ質問があります・・・」

「なにかな、ルナ君?」

こんな状況にもかかわらず、落ち着いた声色で口を開いたのはルナだった。

「先ほどのあなたの言った“この城の最終ボスである”という言葉がありました。でも、それはまるでこの城のほかに続きがある、というふうにも聞こえましたが?」

「ふっ、やはり君は聡明だな。ルナ君」

ルナの言葉を聞いた茅場晶彦はできのいい生徒を見るように目を細め、次いで信じられない、否、信じたくないことをここにいる全員に告げた。

「君の言っていることは正しい。事実、このアインクラッド城をクリアすると、あるフィールドが解放される。そのフィールドをクリアして初めてこのソードアート・オンラインというゲームはクリアされたことになる」

その言葉にだれもが絶句した。当然だ。二年間、命懸けでこの七十五層まで到達したのにまだまだ先があると言われて絶望しない方がおかしい。誰もが言葉が出ない中、ルナの呟きが響き渡る。

「ジェネ、シアス・・・」

「やはり知っていたか、ルナ君。そう、ジェネシアスこそがこのソードアート・オンラインの最終ステージだ。そして、その最奥で待ち構えるのは私の友でありライバルでもあった者だ」

「ま、まさか・・・」

茅場晶彦の言葉に反応したのはキリトだった。驚きのあまり震えた声で次の言葉を発した。

「高嶺、恭介も、この世界に・・・!」

「そうだ。彼はオシリスとしてこの世界に入り、本当の最終ボスとして君臨している」

まさか≪流星≫の二つ名を持ち、血盟騎士団の団員の育成などをしていたものが最終ボスとは考えたものはいなかっただろう。これにはアスナのみならずルナさえも驚き言葉を失った。

「だが、安心したまえ。君たちがあのフィールドを攻略する必要はない」

突然の茅場晶彦の言葉に全員の頭の上にクエスチョンマークが飛びかう。それを気にすることなく茅場晶彦は言葉を続ける。

「君たちがアインクラッドを攻略していく中で、裏でジェネシアスを攻略していたギルドがあった。その者たちの働きにより、君たちはアインクラッドの身をクリアすることでログアウトできる」

「・・・まさか・・・」

ルナの頭にある予感がよぎった。そしてそれは次の茅場晶彦のセリフによって現実のものとなってしまう。

「そのギルドとは、≪クロス・ユニバース≫。かの≪剣聖≫、≪瞬神≫、≪神槍≫の三人で構成されたギルドだ。もっともソレイユ君は脱退してしまっているらしいがね」

「っ!?」

茅場晶彦の言葉を聞いたルナは息を呑んだ。悪い予感はしていたが、まさかこんなことが当たるとは思わなかった。全身が冷め、震える唇を何とか開き言葉を言い募る。

「そ、ソレイユは生きて、いますか?」

「そこは私のあずかり知らぬところだ・・・さて、長々と話してしまったが・・・キリト君、君の決断を聞こうじゃないか」

「ふざけるな・・・」

その言葉は誰に向かって放たれたものなのか、それはキリト自身にしかわからない。

「いいだろう。決着をつけよう」

「キリト君っ・・・!」

アスナの悲痛な叫びが響く。キリトはエギルに頭を下げ、クラインにはじまりの街のことを詫び、アスナを自殺できないように茅場晶彦に取り計らってもらうことを約束し、二振りの剣を構えたった一言呟いた。

「殺すっ・・・!!」

その言葉と同時にSAO史上最後の戦いが幕を開けた。



一閃、一閃、また一閃。キリトが二振りの剣から放つ斬撃をヒースクリフは十字盾で防御し、カウンター気味に長剣を振るっていく。しかし、それを剣で防ぎ、身を捻ってかわすキリト。二本の斬閃が真紅の鎧と交わることがなければ、一本の斬閃が黒きコートと交わることもなく、まさに一進一退の攻防戦。いつ決着がつくのか誰にも分からない。

「うおおおおお!!」

咆哮を上げさらに攻撃を加速させていくが、まったく当たる様子が見られない。

「くそぉっ・・・!」

悪態をつき、二振りの剣にライトエフェクトを纏わせるキリト。それを見たヒースクリフは勝利を確信したように笑った。キリトが自分の過ちに気付くが、それはあまりにも遅かった。発動したソードスキルは最上位二刀流剣技≪ジ・イクリプス≫。太陽コロナのように全方向から二十七の連続の剣閃攻撃が放たれるが、その悉くを十字盾で防ぐヒースクリフ。最後の一撃となる攻撃を十字盾で防がれ、ダークリパルサーの切っ先が砕けてしまう。≪ジ・イクリプス≫を油断なく防いだヒースクリフは長剣を掲げ、別れの言葉を口にする。

「さらばだ―――キリト君」

掲げた長剣に血のように赤いライトエフェクトが灯る。血色の帯を引きながら長剣が振り下ろされる。スキルディレイが課され動けないキリトはそれを避ける術を持たない。その時、茅場晶彦でも予想だにしなかったことが起こった。突如、真紅に輝く長剣と動けないキリトとの間に人影が飛び込んできた。その人影を見た時、キリトは目を瞠った。白と赤の防具に栗色の長い髪、見間違いなどではなくその姿は自分のよく知る人物だった。キリトを庇うように飛び込んできた人影は、システム麻痺によって動けないはずのアスナだった。このままいってしまえば、真紅に輝く魔刃はアスナの体を切り裂いてしまうのだが、キリトにはどうすることもできなかった。

「だめだよ・・・あなたが犠牲になっちゃ・・・」

その言葉とともに新たにあらわれた人影がアスナを突き飛ばした。アスナは踏ん張ることができず、突き飛ばされ地面に倒れ込んでしまう。地面に倒れ伏しながらも先ほどまでいた場所を見ると、そこにいたのは親友とも呼べるプレイヤーだった。

「アスナは生きて・・・まだ、大切な人がいるんだから・・・」

「る、ルナっ!?」

「ごめんね・・・ソレイユのいない世界じゃ、私は生きていけないよ・・・」

だから、と一拍置き、血のように赤いライトエフェクトを纏った魔刃が振り下される中、ルナは涙混じりの笑顔でここにいない生きてるかもわからない最愛の人に別れを告げた。

「さようなら・・・ソレイユ・・・」
 
 

 
後書き
ルナ~死んじゃやだよ~

オシリス「情けない声出すなって」

ぐすんっ・・・な、なんで貴方がいるんだい?

オシリス「死んでやることがないからな、ソレイユの代わりに来たぜ。さて、次回はルナちゃんが死亡か・・・」

根も葉もないことを言うな!!

オシリス「だって、避けきれないだろ、どう考えても」

・・・・・・さて、ルナの生死は次回ということにしておきましょう・・・ぐすんっ・・・
では、感想お待ちしております

オシリス「またなっ!!」 
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