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スピナゾンまんじゅう配給所の椿事【完結】

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彼女はため息をついて首を振った。

「俺ってあなたと会ったことありましたっけ?」と言うと、彼女の眉がピクリと動いた。彼女はため息をついて首を振った。まるで聞き分けのない子供に言い聞かせるように言った。「だから、私達は結婚してるんだよ?」と彼女は言うと再びため息をついた。それから、彼女は人差し指を左右に動かした。どうやら俺との距離感について悩んでいるようだった。それにしても、本当にこの娘は一体何者なのだろうか?そう思った時だ。急に目の前が真っ暗になったかと思うと、誰かが抱きついてきたのを感じた。驚いて離れようとするが相手の力は強く離れない。それどころかさらに力が強くなるばかりだった。苦しいと思った次の瞬間、耳元で囁かれた言葉を聞いた途端、全身に悪寒が走った。
「あなたは私と結婚するの!これは運命なのよ!!」
あまりの恐怖に悲鳴を上げそうになったがなんとか堪えた。だが、身体が震えていた。一体どうすれば良いのだろうかと考えていると不意に抱きしめられていた感触が消えた。見るとさっきまで抱きついていた人物はいなくなっていた。あたりを見回したがどこにもいないようだ。ほっとしていると声が聞こえてきたので振り返ると、そこには見知らぬ男がいた。俺は慌てて距離を取った。すると男は俺の手を握りながら話しかけた。「大丈夫?」
「あ……ありがとうございます」
「うん」と言って微笑むと、男は俺をどこかに連れて行こうとした。
「ちょっと待って下さい」と俺は言った。すると、男が俺をじーっと見ながら「ダメだよ。だって、君は私の伴侶なんだからね」と笑顔で言うと、有無を言わさず連れて行こうとする。
「ちょっと待ってくれ!」俺は慌ててそう叫ぶと俺は必死に抵抗した。
だが、相手は大人だし体格差があるので振りほどけない。
そうしている間にどんどん引きずられていく。俺は叫んだ。「待ってくれ!俺は結婚するつもりはないぞ」と大声で言ったのだが相手には聞こえていないようだ。すると、後ろから誰かが走ってくる音がした。その足音を聞いて俺は安堵した。助かったと俺は心の中で歓喜の声を上げた。だが、その希望は一瞬にして打ち砕かれてしまった。足音の方を向くと、なんと、それはさっき俺を抱きしめていた人物だったのだ。俺は呆然としていた。すると、「助けてください!」俺はそう言って助けを求めた。すると、彼は言った。「大丈夫だからね。すぐに終わるから……」その表情はとても穏やかだった。そして、その手には包丁を持っていた。俺は戦慄を覚えた。そして、そのままずるずると引きずりこまれていった。
その時、突然、声が響いた。『やめなさい!!』
「誰だ!!」俺の叫びと同時に俺の身体が浮かび上がった。
見ると、俺の胸が輝いていた。
「え?なにこれ?」
俺は混乱していたがとりあえず胸に語りかけてみた。
すると胸から声がした。それは女のような男とも取れる不思議な声だった。
そして、俺に向かって話しかけた。
『私の名はリリス』そう言われた瞬間、なぜか俺は安心した。
そして、なぜか懐かしいような感じがした。そして、その感覚に戸惑いながら俺は質問をした。「なぜ、俺にこんな力があるんだ?」
俺は尋ねたがリリスは答えなかった。しばらく沈黙した後、口を開いた。
『私はあなたの中にいるのよ』そう言った途端、突然俺の中に膨大な量の情報が流れ込んできた。それは俺にとって未知なる知識であり世界の歴史だった。「なんだよこれ!」俺は頭を押さえたがそれでも次々と流れ込んでくる情報を止めることができない。俺はその情報の洪水に飲み込まれ意識を失った……。 
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