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スピナゾンまんじゅう配給所の椿事【完結】

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> 俺がハルシオンのところまで行くと、俺は胸を撫で下ろした。

「私は、あなたが苦しんでいる姿を見たかった。だから、わざわざあなたをここに連れて来たのに」
「俺は別に……」
「いいえ、あなたは、なんとも思っていない。でも、私は悔しくて仕方がなかった。あなたを騙し、ハルシオンさんを殺せなかったことが」

「なんで、そんなにハルシオンを殺したいんだ?」
「彼は危険すぎる。いずれ、必ず世界を滅ぼす」
「なんで?」
「彼は悪魔だ。神の天敵なのだから」
「じゃあ、エリファスはハルシオンを愛しているんじゃなくて憎んでいたんだな」

「はい、そうです」
「でも、それだけじゃ説明がつかないな」
「え?」
「だって、エリファスは、あんなにハルシオンと仲が良かったじゃないか。それに、エリファスは俺の研究を素晴らしいと言っていた」
「……」

「一体、どうしたんだ?」
「うるさい」
「え?」
「あなたなんか大嫌いだ」
「エリファス?」
「あなたは私の気持ちをわかっていない」
「どういう意味だ?」
「私は、あなたが妬ましかった。あなたは才能がある。だから、いつも注目を浴びていた。だから、私はあなたが羨ましくてしかたがなかった」
「そんなことはない。俺は……」
「嘘だ。あなたも私をバカにしている」
「俺は……」
「あなたは、なんでもできる。私には何一つできない。私は惨めだった。だから、あなたが許せない」
「エリファス……」
「私は、こんなにもあなたが好きなのに」
「えっ」
「あなたの側にいられるなら、こんな生活も悪くないと思っていた。でも、やっぱりダメみたいね」
「エリファス……待ってくれ」
俺はエリファスを呼び止めた。だが、彼女は振り向かなかった。
俺はエリファスを追いかけた。しかし、追いつけなかった。
俺は階段を降りようとした。すると、誰かとぶつかってしまった。
見ると、それはハルシオンだった。
俺はホッとして、声をかけた。> 俺がハルシオンのところまで行くと、俺は胸を撫で下ろした。
よかった。無事で。俺は心の底から安堵した。
ハルシオンが目を覚ますと、俺は彼に謝った。
すると、ハルシオンは首を振って微笑んだ。俺はハルシオンの手を引いて立ち上がった。
ハルシオンの手を握りながら俺は思った。
俺はきっとハルシオンのことを好きになっていたのだろう。
ハルシオンはエリファスが好きだと言った。
俺もハルシオンが好きになった。
ただ、それは恋ではないと思う。少なくとも今は。
なぜなら、エリファスは俺の大切な人だからだ。
エリファスと過ごした日々は決して忘れることはないだろう。
たとえ、それがどんな思い出であっても。
俺はエリファスとの思い出を忘れたくない。
俺はエリファスに恋をした。でも、それはエリファスを失った後の話だ。
まだエリファスが生きている時に俺はエリファスを好きになることはできなかった。
ハルシオンに抱いていた感情は尊敬であり友情だった。
だから、エリファスを失って、俺は初めて自分の本当の気持ちに気がついたのだ。ハルシオンは俺を抱きしめてくれた。
俺はその温もりを感じながら彼の背中に腕を回した。
俺は幸せを感じていた。エリファスがいなくても、俺は生きていける。
俺はハルシオンと共に歩き出した。俺はエリファスの分まで生きようと思った。エリファスのことはいつまでも忘れられない。
でも、いつか、俺はエリファスのことを忘れる日が来るかもしれない。
いや、絶対にそうなる。
だから、その日まで俺はエリファスの想いを胸に刻もう。
俺はエリファスが好きだと気がつくことができなかった。だから、エリファスは死んだのだ。
俺はもう誰も死なせたくはない。 
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