スピナゾンまんじゅう配給所の椿事【完結】
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
エリファスは顔を伏せたまま何も言わなかった。
「いや、よくない。ハルシオン君。この男は悪魔のような奴なんだ。騙されてはいけない」
「もういいんですよ。俺はもう」
「いや、しかし」
「教授、今まで、本当に楽しかったです」
「ハルシオン君……」
エリファスは顔を伏せたまま何も言わなかった。
「エリファス、君も何か言ったらどうだい?」とディックが言った。
「ごめんなさい」エリファスはそう言うと顔を上げた。
「もう、私はあなたのそばにいられない」
「エリファス……」
「お願い、もう帰って……」
エリファスはそう言うとスカートのポケットから小瓶を取り出した。そしてグイッと一気飲みした。
俺は慌てて叫んだ。「エリファスが毒を飲んだ。誰か、エリファスを止めてくれ」
すると、エリファスは俺達を押しのけて、そのまま部屋から出て行った。
俺達は必死にエリファスを追いかけたが、すぐにその姿を見失ってしまった。
> 俺はハルシオンとエリファスを探しに行った。
俺は旧寮の中を走り回った。
「くそ、どこにいるんだ」
そして、俺は階段のところで立ち止まった。
「そうだ、2階の廊下」
俺は急いで階段を登った。
そして、廊下に出た瞬間、俺はギョッとした。
そこには大勢の人が倒れていたからだ。
「な、なんだ、これは」
俺が呆然としていると、後ろから足音が聞こえてきた。
振り返るとエリファスがいた。彼女はうつむきながら歩いてくる。
「エリファス、これは一体どういうことだ?」
俺が尋ねると、エリファスは顔を上げて笑った。
「これで終わり」
「え?」
「この旧寮は教会だったの。私は司祭でした」
「ええええええええええええっ」
「でも、ある時、私はこの国の王子に見初められてしまったの。私は彼を愛してしまった。だから、彼と駆け落ちしようとしたの。だけど、彼はそれを拒否した。私は逆上して彼に短剣で襲いかかりました。その時、私は自分が狂信者だということに気がつきました。だから、私は自ら命を絶とうと思いました。でも、自殺に失敗した私は王都の教会を追放されました。そして、この旧寮に幽閉されたのです」
「……」
「そして、私は思ったのです。もし、私が再びこの世に戻ることがあるならば、それは神が私を許した時だろうと。だから、私は死ぬことができずに、ここでずっと祈りを捧げてきました。そして、今日、やっと私は神に許されました」
「じゃあ、あの水星はエリファスなのか?」
「はい、そうです。そして、あなたがたを呼び寄せたのは、この私です」
俺は少し考えた後で尋ねた。
「じゃあ、ハルシオンは?」
「ハルシオンさんはただ巻き込んでしまっただけです。本当は、この旧寮に入れば安全だったのですけど」
エリファスは微笑んで続けた。
「でも、まさか、彼が旧寮に入る前に接触してくるとは思いませんでした。おかげで計画が大きく狂ってしまいました」
「なぜだ?」
「あなたが、この旧寮にやって来ると知っていたからです。だから、私はこの旧寮の扉の鍵を外し、いつでも入れるようにしておきました。そして、あなたが来れば扉を開けて、この部屋に連れてきたでしょう」
「そして、エリファスは、ハルシオンが旧寮に入らないように誘導していたのか?」
「はい、私達はお互いのことをよく知っています。だから、私は彼を騙してここへ呼び込み、殺すつもりでした」
「そんなことをして、なんの意味がある?」
「あなたを絶望させるためですよ」
「なんで、そんなことをする?」
「だって、あなた、全然悲しんでいないじゃないですか」
「え?」
ページ上へ戻る