スピナゾンまんじゅう配給所の椿事【完結】
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エリファスは「こんなに悲しいのに涙が出てくれないの」と言って、唇を噛み締めている。
そして、旧寮は完全に崩壊した。ダメ押しのぐしゃあ、が来た。
「うおおおっ!あああぁ!!」
俺とエリファスは抱き合って叫んだ。
瓦礫の下敷きになったオプスの姿が見える。
「うそでしょ。オプス教授!」
「嘘だ、こんなこと」
俺は呆然と立ち尽くした。
黒エルフは長い耳だけを残して梁の下に消えた。かわりに砂が血を吸う。
もう手の施しようがなかった。
旧寮が完全に崩壊してしまってから一時間が経過していた。
「オプス教授、エリファス教授、エリファス教授……ううぅ、うう」
サリーシアがうなだれて泣きじゃくる。
エリファスは「こんなに悲しいのに涙が出てくれないの」と言って、唇を噛み締めている。
俺とサリーシアはその光景を無言で眺めているしかなかった。
その時だ。「うそ、こんなにあっさり」エリファスが呟く。「何が起きたのかわからない」俺達は何が何だかわからず、ただ混乱していた。突然、地面が盛り上がり始めたのだ。土が盛り上がると何かが姿を現した。
巨大な腕だ。腕の先端には爪が付いており、何かを振り下ろした。その衝撃で旧寮の一部が破壊された。「やめろぉ!」俺とサリーシアは咄嵯に防御魔法を展開したが意味はなかった。腕が地面に振り下されただけで旧寮の壁の一部が崩壊し、天井も落ちてきた。旧寮はまるで巨人のおもちゃ箱だ。腕、足、頭部、胴体が次々と現れる。やがて人のようなシルエットが見えてきたが「こいつは……」それは人間の形をしていたが「何だ……この、化け物は……」それは俺が知っている人物ではなかった。頭から血を流して白目を剥いている、まるで死者の群れだった。
「そうか、これが土地の因縁ってやつか」
俺はとっさに【白邪】の呪文を放った。漂白剤を思わせる化学的な色彩。
それが異形どもをさえぎった。一枚板に扁平した頬や鼻先が張り付いている。
「エリファス。」
しかしエリファスはすぐに気づいた。「あなた達は……お父様の会社にいた人たち」エリファスが駆け寄るが「無駄よ、死んだ人たちはもう戻ってこないもの」「どうして……こんなことに……」
サリーシアが涙を流しているうちに巨人が現れた。巨人が手を振ってくる。「まずい!エリファス!」
俺はエリファスを突き飛ばしサリーシアのところまで下がったが、間に合わずにサリーシアの肩に巨人の手がかけられてしまう。
「痛いっ!放せっ」俺は杖を向けようとするが巨人はもう片方の手でそれを押さえつけると、エリファスを掴んだ方の手に力を込めた。「ああっ」というエリファスの叫びとともに骨がきしみ肉の潰れる音が響いた 巨人はそのままエリファスの服を脱がすと彼女の上半身を口にくわえこんだ。
> エリファスは絶叫すると失神した。それをみて俺は焦ったが「エリファスを離せ!」俺は巨人に杖を向けた。
すると今度は俺の方に巨人が襲いかかってきた。
俺は咄嵯に結界を張ろうとしたが間に合わなかった。
巨人が拳をふるうと、俺は殴り飛ばされた。>「大丈夫か?!」
俺は起き上がると「平気です」と言ったが「お前は下がっていろ」とオプス教授が俺を庇って前に出た。
俺はオプス教授の背中越しに呪文を唱えた。「炎よ、我が敵を撃て」
しかし、火球は巨人にぶつかる前に消えてしまった。
「駄目だ、効かない」俺は悔しさに歯がみした。
「下がってください。私が行きます」
サリーシアが俺の前に出た。「だめだ!危ない」
「でも、このままでは……」
「サリー、やめて!逃げようよ!」
エリファスが叫ぶがサリーシアは首を振ると、詠唱を始めた。
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