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ねっけつ!パウマルタン百裂帳!!~時の刻みネギにゅう麵【完結】

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すぐに返事をすることはできなかった。

その質問に対して彼が答えたことといえば次のような内容だった。彼は元々アメリカのワシントンD.Cで考古学調査をしていた学者だったらしいのだが、ある時を境にして、
「何か嫌な予感がするんだよね……」
と思い始めた彼はそれ以降何かに怯えるように生活をしていたのだという。しかし、そんな生活を続けていたある日のこと、突然目の前に得体の知れない存在が現れたのだという。そして、その存在から自分は過去へ遡ることのできる力を授けられ、
「あなたにその力を与えましょう」
と言われたらしいのだ。その話を聞いた私は、そんなことがあり得るのかと疑いを抱いたのだが、実際に彼がそのような体験をしたのだから信じるしかないと考えた。とはいえ、
「それで、その過去へ戻る能力とやらはどこにあるんだい?」

「それがわからないんですよ。ですから、こうして探しているというわけでして」
「……つまり、今のところは何も手がかりがないということか」
私がそういうと彼は無言のまま首を縦に振ったのである。そして、しばらくすると彼は立ち上がってその場から離れようとした。
「おい、ちょっと待ってくれ!」
慌てて彼を呼び止めると不思議そうな顔でこちらを振り向いたのである。私は彼に、今しがた自分が思ったことを全て話すことにしたのだった。すると彼は、「なるほど、確かに言われてみればそうだよなぁ」と言って納得する様子を見せたのだ。どうやら、
「あんたは見かけによらず鋭いことを言うじゃないか」
と思っているようだ。ただ、
「だけどまあ……結局は同じことだよ」
と言うと続けて、次のように説明を始めた。
まず、この世界の人間は、誰一人としていないという点である。これについての理由は簡単だ。
「だってそうだろう?ここは、君のいた世界とは全く異なる世界なのだから」
彼はそう言って、
「だから当然、ここに君を知っている者など誰もいない」
と答えた。その返答に対して彼は、
(そりゃそうだ。いきなり知らない世界に飛ばされて、
「僕を知ってますか?」
って聞かれたらそう答えるに決まってる)
と考えていた。ただその一方で
(この人なら何かわかるかも……)
と考えていたのだが、それはまた別の話である。それからしばらくして今度は別の疑問が頭に浮かんできたので尋ねてみることにしたのである。
「……そうだ!もう一つ聞きたいことがあったんだが」
そう言いかけた途端に、彼は私の言葉を遮りこう言ったのである。
「おっと、悪いがそいつはまたの機会にしてもらえるか?」

「どうしてだ?」
「理由は単純だ。もうすぐ俺が待ち望んでいる瞬間が訪れるんだ。そうすりゃ、あんたは元の世界に帰れるようになるからさ」
「それは本当か?」
「嘘だと思うなら試してみるといい」

「わかった。約束するよ」
「ありがとう。それともう一つ頼みがあるんだが」
「何だい?」
「実はな……俺と手を組んで欲しいんだよ。もちろん、無理強いするつもりはないんだけどな」
彼はそう言うとニヤリと笑いながらこちらの様子を窺っていた。
「……俺に手伝えと言うのか?」
俺がそう聞くと彼は嬉しそうに何度も首を上下に動かしていたのである。その様子はどこか犬のような印象を受けたのは言うまでもない。すると、その反応を見た俺もつい笑みを浮かべてしまう。
「あんた……なかなか良い性格をしてるじゃないか」
そう言うとさらに笑みを深めることになった。ただでさえ笑っているように見える顔をさらに笑顔にしたから余計に表情を読みにくくなった気がするんだが、そんな事を考えていた矢先の事であった。突如として目の前にいる男が、
「俺と手を組むつもりはあるか?」
と、真剣な眼差しを向けて尋ねてきたのである。しかも、声音からも真剣さが伝わってくるほどだった為、すぐに返事をすることはできなかった。だが、少し間をあけた後で俺も彼に質問をすることにしたのである。
「……いくつか聞きたいことがあるんだが、答えてくれるかい?」
そう言うと彼は静かに首を縦に振ると質問を促してくれた。
「まず最初に、君はなぜそんな事を俺に聞いてきたんだ?」

「決まっているじゃないか。過去に行けるかどうか確かめるためだよ」
「過去に?なんでそんなことする必要があるんだ?」
「何でってそりゃあ……過去に戻れるなら戻りたいと思うのは当たり前のことだろう?」
俺はその言葉を聞いて呆れてしまった。まさかとは思っていたけど、
「過去に帰りたいだと?何を言っているんだ?」
「何を言っているんだと言われても困るな。俺はただ……」
「わかってるよ。でも、その前に俺の質問に答えてくれないか?」
「ああ、構わないよ」
「じゃあ、質問だ。過去に行くことができるのは、あんただけなのかい?」
「ああ、俺だけだ。残念なことにな……」
「本当に?」 
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