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展覧会の絵

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第十八話 我が子を喰らうサトゥルヌスその三

「貴方に対しての」
「裁きの代行?それは一体」
「神は全てを御覧になられています」
 十字は一郎に対してこう告げた。
「善も悪もね」
「ことの善悪?まさか」
「そう。これでわかりましたね」
「まさか君が」 
 一郎は顔を上げた。首の力を使って声の方、彼の足元を見た。するとそこに白い詰襟の服を来た白子を思わせる少年がいた。その彼はというと。
「君は確か」
「佐藤十字です」
 十字は闇から白く浮かび上がってきていた。その顔にも表情にも感情はない。
 無論声にもだ。その彼が言うのだった。
「今から貴方に神の裁きの代行を下します」
「君が四人や叔父様を」
「この部屋で」
 そうしたこともだ。十字は彼に告げた。
「そうしました」
「そしてだな」
「察しましたね。藤会もです」
 彼等に対してもそうしたとだ。十字は答えるのだった。
「僕が潰しました」
「あの殺人は」
「人が見ればそうなるでしょう」
 十字は一郎にも淡々と述べていく。
「しかしです」
「それが違うというのかい」
「そうです。僕は神に仕えています」
 こう言ってだ。己の身分を今明らかにもした。
「ローマ=カトリック教会の枢機卿なのです」
「枢機卿!?その若さで」
「特別にそうなっているのです」
「そんな話は聞いていない。枢機卿は」
「その法衣がですね」
「緋色。カーディナルレッドである筈」
 一郎が言うのはそのことだった。
「しかし君は白だ。白い詰襟だ」
「いえ、紅くなるのです」
 十字は一郎の問いにこう返した。
「常にそうなるのです」
「血で」
 一郎はまたわかった。だがわかっていいものではなかった。
「そうなるというのだね」
「その通りです。バチカンには公に出来ない枢機卿がいます」
「それが君だというのだね」
「神の裁きの代行を行う枢機卿もまたいるのです」
 そしてそれが十字だというのだ。
「僕はバチカンより遣わされた。そうした者なのです」
「君が。それでは」
「この街の悪を見ました」
 藤会、そして一郎達をだというのだ。
「神が。そして」
「僕を殺すというのか」
「その通りです。しかも」
「しかも?」
「貴方はこれからこのうえなく惨たらしい死を遂げます」
 言いながらだ。十字は。
「神の裁きの代行を受けて」
「待ってくれないか」
 一郎の仮面が外れだした。僅かにであるが。
 狼狽と恐怖を見せてだ。彼は顔をあげて十字に言った。
「私は罪を犯したかも知れない」
「はい、犯しています」
「しかし殺人はしていない」
 人が考える最大の悪事はだというのだ。
「それはしていない。君も知っている筈だ」
「勿論です」
 知っているとだ。十字も答える。
「貴方は人の身体を傷つけてはいません」
「そうしたプレイもしていない。それに」
 生命の危険を直接感じていた。それでだ。
 一郎も必死に十字に言う。彼にしても命は惜しかった。 
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