高校生の駆け落ち

　　　　　　　　　　　　　　　高校生の駆け落ち
　日上光男は家でこんなことを言った。
「俺達は二人で暮らすんだ」
「あんたそう言うけれどね」
　母の恭子、白い顔でやや面長で年齢を感じさせない肌と落ち着いた感じの顔立ちで黒髪を長く伸ばし奇麗にセットした一五六程の背でスタイルも崩れていない彼女は今時の茶髪でブレザーをラフに着て面長の顔で大きな目と明かる感じの顔の自分より二十センチは高い高校生の息子に対して言った。
「高校生二人で何が出来るのよ」
「出来るから言ってるんだよ」
「お家もないのに？」
「そんなのどうにかなるさ」
「ならないわよ」
「俺達アルバイトしてるしな」
「アルバイトしていてお金あってもよ」
　それでとだ、母は見透かした顔で返した。
「そうはよ」
「上手いかないってんだな」
「世の中甘くないのよ」
　こうもだ、母は息子に言った。
「そもそも学校どうするのよ」
「あのな」
　ここで父の天重も言ってきた、光男がそのまま歳を取った様な顔であるが髪の毛は黒い。背は同じ位だ。
「流石に高校位はな」
「出てろっていうんだな」
「出た方がいいぞ」
　こう息子に言うのだった。
「就職もな」
「それも何とかなるだろ」
「母さんも言ってるだろ、世の中はな」
「甘くないのかよ」
「そうだ、それは言っておくぞ」
「今すぐ一緒になりたいんだよ、俺達は」
「別に小百合ちゃんと付き合ったら駄目って言ってないでしょ」
　恭子は興津美奈代家にもよく来る黒髪を肩まで伸ばしはっきりした目と小さな唇に日に焼けた肌と一五七センチ程のすらりとしたスタイルの彼女のことを思い出しつつ話した。
「せめて結婚は就職してからよ」
「俺達二人共か」
「アルバイトじゃなくて」
「ちゃんとかよ」
「就職してからにしなさい」
「折角十八になったんだぞ」
「それでもよ、いいわね」
　こう言ってだった。
　夫婦で息子に勝手はさせなかった、だが光男はそんな両親の言うことを聞かず。
　ある日夜遅くになっても帰って来なかった、そして美奈代の両親からそちらにいないかというメールが来てだった。