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ウーチクタン肥後橋【完結】

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「なぜ?」

「つまり、あなたはこの国に観光目的で来ているということかしら」と確認すると、サンダーソニアは「その通りよ」と答えた 沙世子はその言葉を聞くと、少し考え込んだ後、口を開いた
「それなら、私よりもっと適任の人がいるんじゃないかしら」と沙世子が言うと、サンダーソニアは「うーん」と考え込んでから、「そうね」と答えた そして、沙世子の方を向いて、微笑みを浮かべながら言葉を続けた
「あなたがいいのよ」と 沙世子は「なぜ?」と聞き返した すると、サンダーソニアは「だって、あなたは私の国の言葉を勉強したいのでしょう」と聞かれて、沙世子は「まぁ、そうだけど」と答えた すると、サンダーソニアは「だったら、あなたしかいないわ」と言って、沙世子の手を握った 沙世子は突然手を握られて、戸惑っていると、サンダーソニアは「大丈夫よ」と言って、沙世子の耳元で囁いた
「あなたはただ、私が日本語を喋れるようにサポートしてくれればいいの」と 沙世子はサンダーソニアの言葉に困惑しながらも、「分かったわ」と答えた
「ふふっ、良かったわ」と言って、サンダーソニアは沙世子の手を離した 沙世子はそんな様子をじっと見ながら、「ところで、その言葉を教えるって具体的に何をすればいいんでしょうか」と聞いてみた すると、サンダーソニアは「そうね、まずは挨拶の仕方から教えてくれるかしら」と言った 沙世子は「分かりました」と答えると、「じゃあ、早速始めましょうか」と続けた サンダーソニアは「そうしましょう」と答えて、沙世子と一緒に歩き出した 沙世子は病院の中に入ると、受付で面会の手続きをした しばらく待っていると、看護婦に案内されて病室に入った 中にはベッドに横になっている玲子の姿があった 沙世子はベッドの側に近づくと、「お久しぶりです」と言って、頭を下げた すると、玲子は「えぇ、お久しぶりですね」と返事をして、起き上がろうとしたので、沙世子は慌てて玲子を制止した 玲子は「ありがとうございます」と言うと、ベッドに体を預けた 沙世子はそんな様子を見て、胸が締め付けられるような感覚を覚えた しばらくして、沙世子は鞄の中からノートを取り出すと、それを玲子に差し出して、「これがあなたの国の言葉で書いてあります」と説明した そして、沙世子は「何か分からないことがあったら何でも聞いてください」と言って、その場を後にしようとした すると、玲子は「ちょっと待って」と言って、沙世子を呼び止めた 沙世子は立ち止まって玲子の方を見ると、玲子は「あなたも一緒にどうですか?」と聞いた 沙世子は一瞬意味が分からず呆けてしまったが、玲子はそんな沙世子の様子を見て、もう一度「あなたも一緒に参加してみませんか?」と尋ねた 沙世子は玲子が何を言っているのか理解すると、首を横に振って「いえ、私は結構です」と断った すると、玲子は「そうですか」と残念そうに呟いてから、沙世子の顔を見た 沙世子は、玲子の表情が少し寂しげなものに変わったことに気がついて、少し罪悪感を感じた
「また、今度参加させてください」と沙世子が言うと、「ええ、いつでも歓迎しますよ」と返事が返ってきて、ほっとした そして、「また来ますね」と伝えてから、沙世子は部屋を出た サンダーソニアは沙世子が去るのを黙ったまま見ていた その後、沙世子は病院を出て家に帰ろうとして駐車場に向かうと、すでにそこにはサンダーソニアが立っていた 「随分早かったのね」と言って、車に乗り込もうとすると、ドアノブを掴もうとしていたサンダーソニアが振り返って口を開いた
「今日一日だけ付き合ってくれるだけで十分だからね」と言って、車に乗り込んだ
「今日は本当に楽しかったわ」と言われて、沙世子は少し照れながら「それはよかったわ」と言った すると、サンダースソニアが突然顔を近づけてきて、「私ね」と言ったので、「何?」と聞いたら、サンダースソニアの口から思いがけない言葉が出てきた
「あなたのことが好きなのよ」と 沙世子はその言葉をすぐには信じられなかったけど、その真剣そうな表情を見て、ようやく冗談ではないと分かった
「どういうことかしら」と聞き返すと、サンダーソニアはさらに距離を詰めてきた
「あなたが好きだから、あなたの恋人がどんな男なのか知りたかったのよ」と言われたのを聞いて、沙世子はますます訳が分からなくなったので、「えっ?それって一体どういうこと」と言いかけたところでサンダーソニアは口を塞ぐように、さらに顔を近づけて「もちろん」と言って続けた
「もちろんそういう意味でも好きなのよ」と沙世子は耳元に息がかかるような感じがして、「ちょっと近いから離れて」と言った すると、サンダーソニアは少し離れたのを確認すると、「つまりね」と言って説明を始めた 
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