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イタリアの忍法でぱっちり治す!ミウダウモンの眼精疲労(WEBスペシャル!)【完結】

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何か重要なことだとは思ったが結局私は何も思い出せはしなかった。

それはどうみてもこの世界に存在するはずのないものだった。表紙に魚の絵があり、中に魚の図鑑と思しき絵が書かれているだけだった。そのはずなのに、その本を見ていると何故か懐かしさがこみ上げてきた。その瞬間に頭の中に記憶が甦ってきた。
それは夢の中での出来事だった。しかし私はその時確かにその記憶を垣間見たのである。私は夢の中でこの本を見て何かを想っていた。何か重要なことだとは思ったが結局私は何も思い出せはしなかった。しかし夢というのは妙なものだ。特に私の見る夢はかなり変なものが多い。だから気にしないことにした。
その日はそれで終りにした。明日もまたいつもと同じ日常が待っているはずであった。だが次の日の早朝のこと、私が目覚めて、カーテンを開けると外には信じられないものが広がっていた。まるであの時と同じだった。
「海が……空が!」窓の外に広々とした青が広がっている。水平線が朝日を受けてきらめいている。私はそのあまりのまぶしさに耐えきれず顔を伏せた。だが再び視線を上げて窓の外を見る。
そこにあるのはかつて見慣れた光景だった。その景色はあまりにも以前のままで私の胸を打った。その美しさに見とれてしまった私はしばらくの間立ち尽くしていたのかも知れない。気がつくと空は明るくなってきていたが私はいつまでも外の光景を見つめていたようだった……. ------「……さん…….」と呼ぶ声に気づいた私は声の方向を見やった。そこには女性が立っていた。
彼女の名前は「ミチル」である。年齢は二十六歳で身長は百五十センチほどしかない小柄の人だった。彼女はその背の低さにコンプレックスを抱いているらしくそれを気にしている様子でもあった。
だが、彼女を知る人々は彼女を"チビッ子さん"と呼んでいた。その呼び方は彼女にもぴったりと合っていたのかもしれない。しかし私にとってその呼び名はあまりしっくりと来るものではなかったが。彼女は私が働いている「スーパーマーケット」で働いていた。私が働いていた職場にはよく出入りしていたが、他の同僚に比べると彼女との付き合いは比較的深かったと思う。
彼女が仕事場に来るのは週に四回程度であったが、その時によく話しかけてくれたから私としては親しく付き合うようになったのだ。彼女はその性格もあって、職場の同僚たちから可愛がられていた。よく一緒に遊んでいた同僚の男性もいた。だが私はその人とそれほど親密な間柄ではなかった。どちらかというと私と話すよりも女性の友人同士で話をしているのをよく見かけたものである。
ある日、私はいつも通り仕事場で働いていふとその日、彼女は少し様子がおかしいことに気づいた。彼女は普段仕事をする時は、いつも元気に動き回っているのだがその日の彼女の動作はどう見ても鈍重だった。私はそのことにすぐに気がついて声をかけた。
「大丈夫ですか?」と私が言うと、その声を聞いた彼女はハッとしたような表情になり、「うん」と答えた後でこう言った。
「昨日の夜遅くに急に具合が悪くなったのよ。だから休んだら楽になったんだけど……」
その口調はどうも歯切れの悪い感じだった。顔色はまだ悪いように見え、どこかぐったりとしていた。私はそれ以上は何も訊かなかったが、心配そうな気持ちになって彼女をしばらく見ていた。だがその状態は午前中だけで昼になると回復していった。
だがその夜、夜九時ごろの事である。私の勤務時間は大体七時から十二時までであるがそのあと片付けと翌日の仕込みなどのために六時半ごろに家に戻ることになる。その前に私はその日売るための食品の準備をしていた。するとそこへ、誰かの呼ぶ声に私は振り返った。
「ちょっと!」その声は私に呼びかけたようだがその姿は見えない。
私は、周りを見渡したがその時にはその人の姿は消え去ってしまった。その時は別に気にもしないまま仕事を続けることにした。それから三十分ほど経った時のことだった。
私のいるスーパーの裏手に駐車場があり、その端のところにトラックが何台か駐車してあった。そのそばに人が立っているのが見える。だがどうも私の方を向いていないようである。その人物に近づきその姿を見て驚いた。なんと先ほどの彼女がそこに佇んでいるのである。どうしたのだろう? しかし、さっきとは明らかに様子が違う。私は思わず声を上げた。
「どうかしましたか?」と聞くと彼女はその質問に対して意外な反応を示した。突然彼女は私の顔を見ると「あっ」と言ってその場にへたり込んだのである。私が驚いて駆けつけると、どうも腰を抜かしてしまったようで立てなくなっていた。一体何があったのか。どうすればいいのか、どうすることもできないで私は途方に暮れたがとにかく私は彼女を立たせようとした。
「しっかりしてください!」
「助けて! 痛いわ!」 
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