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第十六話 最後の審判その一

                    第十六話  最後の審判
 学園に異変が起こっていた。何とだ。
 望が登校してきたのだ。学園生活に復帰していた。しかもだ。
 その横には春香がいた。二人は寄り添い合って登校してきた。彼等だけでなくだ。
 猛もだ。雅とお互いに手を握り合いながら登校してきた。その彼等を見て誰もが言った。
「登校してきただけじゃないなんてな」
「前からもどかしい関係だったけれど」
「それが学校に戻ってきて急に?」
「仲が進展してるなんだ」
「四人共何があったんだ?」
 それぞて彼等を見ながらひそひそと言い合う。しかもだ。
 望は自分からだ。昼休みに春香のところに来てこう彼女に言ったのだった。
「食うか?」
「ええ」
 春香も自分が座っているその席から顔を見上げて応える。そうしてだ。
 二人で席をつけあって向かい合って食べる。しかもだ。
 望は自分から春香が作ったその弁当の中のトマトを食べた。そして彼女に言った。
「美味いんだな、トマトって」
「わかってくれたのね。そのこと」
「ああ、本当に美味いな」
 微笑んでだ。春香に言うのだった。
「これから毎日食うな」
「トマトって美味しいだけじゃないのよ」
「身体にもいいよな」
「そうよ。だから毎日食べてね」
「あとな」
 望はそのトマトを食べながら春香にさらに言った。
「料理部の料理だけれどな」
「ええ、食べてくれる?」
「そっちもいいか?」
「勿論よ」
 春香も微笑んで望に返す。
「じゃあ今日だけれど」
「早速かよ」
「ええ。今日はお菓子作るみたいなの。さっき部長さんからメールが来たわ」
 それでわかったというのだ。今日部活で作るものが。
「シュークリームよ。作るのは」
「シュークリームにもトマト入れるのかよ」
「それできたら面白いわね」
 箸を右手に持ちながらだ。春香は笑って望に返した。
「やってみようかしら」
「それ全部食うからな」
「楽しみにしてるわね」
 二人は春香が作ったその弁当を一緒に食べながら笑顔で話していた。そして。
 猛もだ。昼休みにだ。
 食事の後ですぐに校庭でランニングに入った。しかもそれは一人ではなかった。
 雅と共にジャージ姿で走る。その彼にだ。
 雅は彼の横にいてストップウォッチの時間を見ながら言った。
「その調子よ。ペースはこのままでね」
「走ればいいよね」
「ええ。このまま走って」
 こう猛に言うのだった。雅も走りながら。
 そしてそうしながらだ。彼女は猛にこうも言った。
「猛って走るの速かったのね」
「ううん、そうだったかな」
「ええ。かなり速いわ」
 雅は走りつつ微笑みながら話してくる。
「何でも。スポーツの基本は」
「武道でもだよね」
「ランニングよ。それに基礎体力よ」
「そうだよね。このランニングの後は」
「サーキットトレーニング。それもしましょう」
「そうしよう。あとは」
「ストレッチもね」
「お昼休みだからそこまで時間あるかな」
 猛は時間のことは少し苦笑いになって述べた。
「あったらいいけれどね」
「そうね。じゃあサーキットトレーニングは止めておく?」
「ストレッチだけだね」
「ええ。怪我をしたら駄目だから」
 身体をほぐすというのだ。ランニングの後で。
「それに身体の柔らかさもね」
「そうそう。武道には必要だよね」
 二人で青空の下を走っていた。その顔は明るく一点の曇りもなかった。彼等を見て本当に校内の誰もが驚きを隠せなかった。それでまた言い合うのだった。
「何がどうなのか」
「一気に彼氏彼女の関係になったよな」
「ちょっと。これって」
「何なのかしら」
「まあ。それでもな」
 確かに驚いていた。しかしだった。
 彼等はその四人を笑顔で見ていた。彼等のその笑顔を見てだ。
 幸せがそこにあった。だがそれを快く思わない者達もいた。
 四人は屋上でその走っている猛と雅を見下ろしながらだ。共にいる雪子に言った。 
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