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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第30話 因果応報、狩られる者達 後編

火計の策は成功に終わりました。

森を焼く炎が収まるのを待ちました。

炎が収まったのは、朝を迎え日が丁度、空の真上に昇るころでした。

私達は、日が燻っている森を抜けて行きました。

彼方此方に、火計に逃げ遅れた者達の焼死体がありました。

肉の焼ける臭いに吐き気がしました。

当分、肉を食べれそうにありません。

それは楽進、李典、于禁も同様の様でした。

先程まで、ずっと私に抗議していた元気はありません。

賊の頭が引き摺っているので、傷が痛いと幾度となく暴れたので、その度に殴りつけて気絶させました。

麗羽達と合流したのは、昼過ぎでした。

麗羽達は森の在った場所の入り口にいました。

麗羽達も賊を5人生け捕っているようです。

これからが本番です。

賊共に自分のやってきたことを自覚させることにします。

楽進、李典、于禁の3人と今回の賊退治に参加した村の者達は私に不満の目を向けています。

まあ、賊の頭を生け捕りにしたままな訳ですからね。

私が当事者なら許せる訳がないです。

「もうしねぇ、だから勘弁してくれ!」

賊の頭は、私に土下座をして、頭を地面に擦り付けてました。

無様に謝っていますが、こいつに反省の色などないと思います。

どうせ、舌の根も乾かない内に、また、他の村を襲うに決まっています。

「いいだろう。今回だけは見逃してやる」

私は冷めた目で、賊の頭を見て心情とは裏腹のことを言いました。

「へへ、ありがてぇ」

顔を上げた賊の頭の表情を見て、不快を覚えましたが、感情を押し殺しました。

「どうしてですか!劉ヨウ様、こいつを見逃すなんて納得いきません!」

楽進は私に詰め寄りました。

「言いたいことはわかるが、この件については黙って居てくれ」

有無を言わさない目で楽進に言いました。

「くっ!」

李典と于禁も納得いかない様ですが、私の迫力に気圧され黙っています。

麗羽達は私が何をするか分っているので、静観しています。

私は賊の頭に踵を返し、立ち去ろうとしました。

賊の頭は私が背を向けた瞬間、懐から暗器を取り出し投げつけました。

「死にやがれーーー!あがっ!?」

暗器を避けた私は、賊の頭の胴に双天戟を突き立てました。

馬鹿な奴です。

私を殺せると思っていたのでしょうか?

逃げ切れるとでも思っていたのでしょうか?

まあ、別にどちらでも構いません。

初めから賊の頭を見逃すつもりはありませんでした。

賊の頭が逃げようと、襲いかかってこようと殺すつもりでした。

希望を裏切られる想いを賊の頭に与えることに意味があるのです。

「私がお前を見逃すと思ったか?初めから見逃すつもりなどない!どんな気分だ?今まで、貴様らも同様のことをやってきただろう!」

双天戟に力を込め、賊の頭の傷口を乱暴に広げました。

「ぎゃああああーーー!痛でえぇぇ、やめでくれーーー!」

賊の頭は、傷を開かれる痛み絶叫しています。

「自分が逆の立場になったら、助けてくださいだと?笑わせるな!」

双天戟を賊の頭から引き抜きました。

「や、や・・・止めてくれ・・・。し、死にたくねーーー!ぎゃああああーーー!」

私は、体勢を立て直し、賊の頭の体中を凄まじい早さで槍を突き立てました。

「ごふっ!」

賊の頭は、口から血を吹き出し、壊れた案山子のように、地面に突っ伏しました。

地面は賊の頭の大量の血で染まっていきました。

双天戟をひと振りし、槍にこびりついた血を払いました。

楽進、李典、于禁、そして村の人間は突然私が、賊の頭を嬲り殺しにしたので驚いていました。

縄に縛られている賊達は、私の行為を恐怖の表情で見ています。

私は賊達に槍を向け、数人を双天戟の餌食にしました。

餌食になった賊はボロ雑巾のように地面に倒れました。

「お前達、生きたいか?」

賊達に怜悧な目を向けました。

賊達はあまりの恐怖で喋れないようでしたが、必死に肯定の頷きをしました。

「そうか・・・じゃあ、助けてやる」

私はそう告げると、私は双天戟を地面に突き立て、賊達に素手で殴りつけました。

賊達が命乞いをしてきました。

私はそれを無視し、ひたすら殴りつけました。

賊達がボロボロになって、命乞いすら言わなく成ったのを確認して、私はその行為を止めました。

「望み通り助けてやる。次に、同じ真似をしてみろ。お前らの頭のように無惨に殺してやる!」

私は凄まじい殺気を賊達に放ちましたが、彼らはただただ恐怖に内震えていました。






「どうしてあんなことされたのですか?」

楽進は神妙な顔をして、私に質問してきました。

李典と于禁は私を恐がっているようですが、いきなり賊の頭を殺したことに興味があるようでした。

「これは私の自己満足です。賊はいつも人の命を弄びます。思いつきで、言うことを聞けば助けてやると言いながら、結局殺したりします。その言葉が嘘と分っていても、縋るしか無い人達がいるのです。だから、あの賊にも同じ思いを味遭わせたかったのです。それが理由です。賊は人であることを捨ててしまった者達・・・。哀しい話ですが、彼らに理解させるには、絶対的な力で蹂躙するしかない。助けた賊達は二度と賊稼業をしないでしょう」

私は虚しい想いを抱きながら、楽進に言いました。

「・・・・・・劉ヨウ様のお気持ち分るような気がします。申し訳ありませんでした」

楽進は私に頭を下げました。

「劉ヨウ様のこと見損なったと思ったんやけど・・・堪忍な。でも、ちょっとキツかったわー。村のモン、劉ヨウ様に引いとったで」

「私も真桜ちゃんと一緒なの。劉ヨウ様ごめんなさいのー。流石、『地獄の獄吏』なのー」

于禁の謝罪は何か軽く感じます。

別に、謝ることでもないと思いますから、良いですけど・・・。

「これは私の自己満足だと言っただろ。私がやろうとしたことを黙っていたのは事実だ。だから、気にすることはない」

私は彼女達に優しく言いました。
 
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