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蓬莱人

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第三章

「薩摩から」
「薩摩、あの国からか」
「さらに」
「聞いたことがある、鬼界ヶ島の南西にだ」
 業平も話を聞いて述べた。
「さらにだ」
「島々があると」
「そう聞いているが」
「そちらのことは」
「まさかそなた」
「蓬莱は何処にあるか」
 思わせぶりな笑みのまま言ってきた。
「異朝から見て東にあるとなると」
「あの島々もか」
「そうなりませぬか」
「ではそなた」
「どう思われますか」
「察するであろう」
 業平は女に笑って応えた。
「そのことは」
「左様ですね」
「そういうことか、蓬莱の島とはな」
「確かにあり」
「そなたはそこから来たな」
「そうなのです、そのことを貴方様にお伝えします」
「そのこともわかった、蓬莱は確かにあるのだな」
 この世にとだ、業平はあらためて述べた。
「そうだな、そして」
「そしてですか」
「そなた徐福殿の」
「そこまではわかりませぬ、どうもあの方は」
「本朝でだな」
「お亡くなりになったとか」
「紀伊にお墓があるな」
 業平はこのことも知っていて述べた。
「ではそなたがいる島に赴き」
「本朝に行かれたかも知れません」
「そこでお亡くなりになられたか」
「そうかも知れません」
「その辺りはわからぬな、しかし蓬莱があるとわかったことだけでな」
 女に今度は笑って話した。
「よしとしよう」
「そう言われますか」
「そしてこの話は余に伝えよう」
 こう言ってだった。
 業平は女が都にいる間面倒を見て帰りの船の手配もしてやった、そして摂津の港で女を見送ってからだった。
 世の者に蓬莱とそこから来たという女のことを伝えた、するとだった。
 この話は何かと変わって伝えられた、そうして竹取物語にも入ったという。平安の日本に伝わる古い話の一つである。


蓬莱人   完


                   2022・9・14 
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