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道頓堀

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第三章

「阪神が」
「監督の胴上げがはじまりますよ」
「いやあ、凄いな」
「阪神が優勝するとです」
 吉田は満面の笑顔で言った。
「景気もよおなります」
「ああ、皆元気が出てな」
「仕事も頑張って」
 そしてというのだ。
「お金も使って」
「フィーバーが起こるんやな」
「はい」
 そうなるというのだ。
「そうなりますさかい」
「阪神が優勝すると日本の景気もよおなる」
「そうなります」
「成程な」
「それで、です」
 吉田はさらに言った。
「これからお祝いで乾杯しますが」
「僕等もやな」
「それで道頓堀に行きますか」
「飲んだ後で」
「そうしますか」
「道頓堀に何かあるんか?」
「あります」
 吉田はローズに満面の笑みで答えた。
「これが」
「そうなんか」
「そうですさかい」
「飲んだ後でか」
「あそこに行きましょう」
 道頓堀にというのだ。
「そうしましょう」
「ほなな」
 ローズは吉田の言葉に頷いた、そうしてだった。
 ジョッキに入った冷えたビールで乾杯した、勝利の美酒の味は最高だった。見れば店のどの客も乾杯していた。
 ローズ達はしこたま飲んで食べた、そして。
 吉田の提案通り道頓堀に行った、すると。
「やったで!」
「Vやねん阪神!」
「今年も優勝したわ!」
「やっぱり阪神強いわ!」
「猛虎最高や!」
 阪神を愛する者達が喜びを爆発させていた、そして。
「あれやろな!」
「優勝したさかいな!」
「恒例のあれやるで!」
「やったれやったれ!」 
 道頓堀の橋に上がってだった。
 そこから堀に飛び込んでいく、ローズはそれを見て驚いた。
「何や、優勝したからか」
「はい、道頓堀に飛び込むんです」
「阪神優勝して嬉しいからか」
「そうです、昭和六十年の日本一の時からです」 
 最初のフィーバーの時からというのだ。
「ああしてです」
「優勝したら飛び込むんか」
「そうしてます」
「ううん、変わったことするな」
 ローズは腕を組んで唸った。 
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