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都の花園

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第一章

                都の花園
 日本の京都の話を聞いてだ、ウェールズにいる銀行員アンク=ニコルはこう言った。
「素敵な街だね、けれど」
「どうしたの?」
「いや、何かお花は多いみたいだけれど」
 話してくれた恋人のチェシー=コルネットに話した。
「花園みたいなところはね」
「ないっていうの」
「僕は花園が好きだね」
「ええ」
 チェシーはその通りだと答えた。
「あなたはね」
「だからね」
 それでというのだ。
「京都にはね」
「そうした場所があれば」
「行きたいよ」
 こう言うのだった、やや面長で顎は四角く鼻は高い。ブラウンの優しい目で黒髪を奇麗に短くしている。背は一七七程でやや太っている。
「心からね」
「じゃあ日本に旅行に行ったら」
「京都に行って」
 その街にとだ、青い目が垂れた優しそうな顔立ちで癖のある赤毛を腰まで伸ばした一六五程の抜群のスタイルの彼女に話した。
「是非だよ」
「お花が沢山ある場所に行くのね」
「そうしたいよ」
「じゃあ春に行けばいいわね」
 チェシーはアンクに笑顔で話した。
「ウエールズもそうだけれど日本もどうやらね」
「春にだね」
「沢山の種類のお花が咲くらしいから」
「それでだね」
「春に行きましょう」
「そうだね、ウエールズの厳しい冬を乗り越えて」
 実はこれはブリテン島全体がそうである。
「その後でだよ」
「日本に行くのね」
「そうしましょう」
「そうだね、それじゃあね」
「春に行きましょう」 
 日本にとだ、こう話してだった。
 二人はまずは旅行のお金を貯めた、そのうえで旅行会社と話をして春に日本に行ける様にしていった、そうして。
 入念な準備をして遂にだった。
 日本に春に行くことにした、それも京都に。
 その京都に着くと、アンクはチェシーに驚いた顔で言った。
「いや、不思議な街とはね」
「聞いていたわね」
 チェシーも驚いた顔で応えた。
「そうよね」
「そうだったけれど」
「それでもね」
「これはね」
 近代的なビルや塔がありかつだ。
 昔の日本の趣そのままの建物がある街並みを観てだった。
 アンクは驚いた顔のままだ、チェシーにさらに言った。
「こんな街がこの世にあるなんてな」
「そのこと自体が奇蹟ね」
「全くだ、それじゃあ」
「ええ、今からね」
「色々観て回ろう」
「京都のお花が奇麗な場所をね」
 春の花霞漂う京都の中で言った、そうしてだった。
 二人でガイドブックにある色々な桜や梅、桃それに菊が咲いている場所を観て回った。そうするとだった。
 アンクはうっとりとしてだ、チェシーに南禅寺で湯豆腐を食べつつ話した。 
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