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星河の覇皇

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第八十三部第二章 撤退の果てにその十五

 兵達に大飯を食わせる、そのことは即ちだったのだ。
「総攻撃の意味もあった」
「その前に体力をつけてもらう」
「満腹になってもらい」
「その為にでしたね」
「食べさせていましたね」
「空腹では力が出ずな」
 そしてといいうのだ。
「満足に戦えずな」
「敗れてはです」
「何にもなりません」
「だからでね」
「我々も」
「その時は」
「馳走をだ」
 美味豪華なそれをというのだ。
「出す」
「それが間もなくですね」
「戦闘前ですね」
「その時ですね」
「極論するとこれが最後かも知れない」
 アブーは真剣な顔で言った。
「そうだな」
「左様ですね」
「戦闘が行われますと」
「戦死者が出ます」
「このことは避けられません」
「何があろうとも」
「戦争は人が死ぬ」
 この当たり前だが多くの者が考えたくはないかも知れないことをだった、アブーはこの場ではあえて言った。
「ならだ」
「その食事がですね」
「最後になるかも知れない」
「それ故にですね」
「アッラーの御前に行く前に」
「そうだ、そうした将兵達の為にもだ」
 死ぬ者達の為にもというのだ。
「馳走だ」
「それを出しますね」
「戦闘前には」
「そうしてもらいますね」
「是非」
「誰かはアッラーが定められている」
 彼等の神がというのだ。
「我々のうちからな」
「それが誰かはわからない」
「アッラーのみがご存知ですね」
「そしてその誰かの為に」
「馳走を用意しますね」
「戦死する者の為に」
「誰かはわからないにしても」
 その戦死する者がだ。
「しかしだ」
「それでもですね」
「それもまた情というものですね」
「人としての」
「それですね」
「無論食事を摂れない時もある」
 時と場合によってはというのだ。
「そうした時もな」
「どうしてもですね」
「先程お話した餓えている時ですね」
「そうした時はあってはならないですが」
「馳走を用意出来ない時もある」
「その時もですね」
「あるが」
 それでもというのだ。
「出せるならだ」
「出すべきですね」
「それも惜しみなく」
「そうあるべきですね」
「そうだ、喜捨ではないが」
 イスラムの教えの一つだ、富める者は貧しい者に施しを行いその者を喜んで助けよという考えである。これも善行とされる。 
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