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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第71話:副部隊長の帰還


・・・翌朝。

病室になのはを伴って現れたフェイトに,俺は一枚の紙を手渡した。

「何これ・・・え?退院許可証?」

「退院って・・・本当?フェイトちゃん!」

フェイトが茫然と俺の顔を見ながらなのはに紙を手渡すと
なのはは目を大きく見開いて,紙を見つめた。

「ホントだ・・・。ゲオルグくん,大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。きちんと歩けるし,大丈夫だから医者だって許可証を
 出したんだから」

俺がそう言うと,なのはは不安そうな顔でフェイトを見た。
フェイトは目を閉じてため息をつくと,俺の顔を見つめた。

「ねえ,ゲオルグ。本当に大丈夫だよね?」

「もちろんだよ」

俺はそう言うと,その場で何度がジャンプした。
身体には痛みが走るが,何とか顔には出さずに済んだ。

「ほらな?」

俺がそう言うと,フェイトはじっと俺の顔を見つめるとお手上げとばかりに
手を上げた。

「わかったよ,ゲオルグ。今の機動6課の本部に連れていくから,準備して」

フェイトがそう言うと,なのははフェイトを驚きの表情で見た。

「フェイトちゃん!?でも・・・」

フェイトはなのはを手で制した。

「医師の許可証があるんだからゲオルグは大丈夫ってことだよ。
 なのはが心配するのも判るけど,ゲオルグの退院をやめさせることは
 できないよ」

フェイトが肩をすくめてそう言うと,なのはは厳しい表情で俺の方を見た。

「ゲオルグくん。無理はダメだからね」

「判ってるよ。医者からも前線には絶対出るなって言われたしな。
 後方での指揮に専念するさ」
 
俺はなのはに向かってそう言うと,フェイトに向かって頷いた。



フェイトの車で転送ポートに向かい本局へと移動したあと,
フェイトの後について歩いて行った。
次元航行艦ドックの方に行くと,一隻の次元航行艦の前でフェイトの
足が止まった。

「これが今の機動6課の本部。アースラだよ」

振り向きざまにそう言ったフェイトは,なぜか自慢げに笑った。

「アースラねえ・・・。ん?そう言えばアースラってPT事件や闇の書事件で
 出動した艦じゃなかったか?」
 
俺がそう聞くと,フェイトは頷いた。

「そうだよ。だから,私やなのはやはやてにとっては思い出深い艦だね」

フェイトがそう言うと,なのはも頷いていた。

「なるほどね・・・。しかし大丈夫なのか?こんな老朽艦で・・・」

「それは大丈夫やって。すでに書類上は廃艦になってあとは解体待ちやったのを
 再整備したとはいえ,つい最近まで現役やったんやし」
 
声のした方を見ると,艦内からはやてが歩いてきた。
俺は,はやての方を向いて姿勢を正すと右手を上げて敬礼をした。

「八神艦長。シュミット3佐は負傷より回復し,本日より任務に復帰します。
 乗艦許可を」
 
俺がそう言うと,はやては真面目な顔をつくり返礼してきた。

「許可します。予測よりも早い復帰ですが無理をしないように。
 ようこそ,アースラへ」
 
そう言ったはやては俺に向かって笑いかけた。

「何やってるの?2人とも」

なのはが首を傾げながらそう聞く。

「こういうけじめはしっかりつけないとな」

手をおろした俺は,なのはに向かってそう言った。



アースラに乗艦した俺は,はやてについて艦長室に入った。
なのはやフェイトとは途中で別れたので,フォワード達のところにでも
行ったのだろう。

広い艦長室に入ると,はやてに言われるがまま,脇の方のソファーに腰かけた。
はやては俺の向かいに座ると,厳しい顔で俺を見つめた。

「やっぱり退院してきたか・・・。予想より早かったけどな。大丈夫なんか?」
 
「一応歩けるよ」

「それは見たから判る。痛みは?体力の低下は?」

「痛みは今も少しあるよ。体力は・・・落ちてるな」

「そっか・・・まあ無理せんことや」

「了解。で,状況は?」

そう聞くと,はやては腕組みをして背もたれにもたれかかった。

「進展なし。ユーノくんも必死で調べてくれてるみたいやけど,まだ有益な
 情報は見つかってないし,それはうちの捜査組もいっしょやね。
 ロッサもスカリエッティの足取りを掴んだとは聞いてへん」

「まあ,もう少し時間が必要ってことだな・・・」

「そやね。でも,あんまり悠長なことはしてられへんから,
 なんか突破口が欲しいんよ」
 
「そうだな・・・」

俺は目を閉じて考え込んだ。

「そうだ。もう一度最高評議会に潜入するのは?」

「却下や。そもそも潜入して何すんの?」

「ま,それもそうか。あんまり無理はするもんじゃないしね」

俺はそう言って,艦長室を後にした。



艦長室を出た俺は,シャマルのいるであろう医務室へと向かうことにした。
途中ですれ違う人に道を尋ねながら辿りつくと,ブザーを鳴らした。

「どうぞ」

シャマルの声が聞こえたところでドアを開けると,シャマルが机に向かって
何やら作業をしていた。

「シャマル。久しぶり・・・ってほどでもないか・・・」

俺が声をかけると,シャマルは驚いたようで少し慌てた様子でこちらを
振り返った。

「ゲオルグくんじゃない!どうしたの?まだ入院してると思ったけど」

「今朝退院したよ。それで,先生から預かってきたものがある」

俺はそう言ってシャマルに封筒を差し出した。
シャマルは中身を一読すると,俺の顔を見て大きなため息をついた。

「こんな状態で退院なんて・・・感心しないわね」

「はやてが先生にいろいろ言ってくれたらしいからな」

「何て?」

「曲りなりにも歩けるようになったらサッサと退院させないと,
 脱走して病院に迷惑をかけるから,退院させてくれだとさ」
 
俺が先生に聞いたはやての言葉を教えると,シャマルは声を上げて笑った。

「はやてちゃんにしっかりばれちゃってるわね。ゲオルグくんの性格」

「まあね。でもおかげで早く退院できた」

「だからと言って無理はだめよ。この手紙にもある痛み止めは処方するけど,
 決して身体が万全の状態になるわけじゃないんだからね。
 前線での戦闘なんてもってのほかよ。
 あと,何か不調を感じたらすぐに私に見せてね」
 
「了解。ま,無理はしないよ」

「ならいいけど・・・」

なおも心配そうな顔をするシャマルに向かって手を上げると,
俺は医務室を後にした。

 
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