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異世界ほのぼの日記~日本に似て便利な世界でぷらぷら生活~

作者:佐行 院
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前書き
 渋るヤンチを説得すべく板長がとった行動とは・・・。 

 

-㉗運命の出会いの話-

 ヤンチは少し抵抗した。いくら板長が勧めたからって自分が納得したものを店の商品として出したいらしい。
 ヤンチも板長を信頼していた。店を開く前から、いや女将と出会う前からの話だという。板長は唐突に語り始めた。

板長「ちょっと昔話にお付き合い頂けますかい。昔、王国軍で料理番と防衛の一部を任されていた一兵卒がいたんです。そいつは仕事と日常に疲れ刺激を求めていましたので定年間近で軍を辞めて冒険者になりました。最初は軍の時に作った貯金で買った装備でゆっくりと採集等の簡単なクエストを進めていたんです。
 そんなある日、岩山の上で1人孤独に暮らしていた獣人(ウェアタイガー)がいたんです。そいつは生まれてから孤独の身で親のぬくもりも言葉も知らなかったらしく、ただただ空腹だったみたいなのでそいつに元一兵卒はクエストで捕った魔物の肉を採集で余ったハーブと一緒に焼いて食べさせました。
 その味に感動を覚えたらしく獣人はちょこちょこ一兵卒について行くようになり、次第に料理に目覚めていきました。
 ただこのままでは一兵卒から料理を学び辛かったからか、獣人はまず言葉を勉強するようになり次第に一兵卒の事を『親父』と呼ぶように・・・。」
ヤンチ「親父、やめろよ・・・、照れるだろ!」
板長「まぁ、良いじゃないか・・・。おっと失礼、そしてその一兵卒、いや私は獣人のヤンチと小さな屋台を出して暮らして行ったんです、それがこの店の起源でした。
だから私はこいつを信用しているんです。だからこいつの新作、食ってみて頂けませんか、勿論お題は結構ですから。」
ヤンチ「でもあれは元々・・・、賄いだし・・・。」
板長「良いだろ、それとこれは板長命令だ。」
ヤンチ「では・・・、お待ちください・・・。」

 ヤンチは調理場へと消えて行った。その間を繋ぐべく板長は焼き肉を続行し光らにビールやお酒を注ぎ続けた。ただその表情は今まで以上に楽しそうに。信頼する息子の成長を楽しみにする父親の様に。
 そうこうしている内にヤンチが料理を持って来た、1品目は『黒豚のもみもみ焼き-出汁醤油風味-』。香ばしい香りが光らを楽しませ、薄めの豚肉でご飯を巻くとお代わりが止まらなくなる。隠し味の生姜が手助けしているらしい。
 2品目は国産若鶏の混ぜご飯、炙った鶏の切り身を調味料と一緒にふっくらと炊かれた温かなご飯に混ぜて刻み海苔と胡麻を振りかけたものだ。

ヤンチ「元々支店での賄いで作ったものなのでお口に合うか分かりませんか、宜しければどうぞ。」

 光はもみもみ焼きで混ぜご飯と日本酒を進める、別のテーブルでは林田親子が焼酎片手に涙を流していた。板長の話に感動したようだ。
 ヤンチは横で焼酎のロックを作り続けていた。ヤンチが作った酒がよっぽど美味かったのか皆お代わりをし続けていた。
 ゲオルとナルは最終レースの予想をしていた、『ネフェテルサ王国レース場公園』はナイターとミッドナイトまで開催しており各場1日36レースまで行っているので資金と時間が許す限り本来1日ずっと遊ぶことが出来るとの事だ。しかし2人はかなり酔っていたのでまともに話せてはいなかったが。ただそこにラリーがいたのでかなり盛り上がっていたみたいだ。後で光も参戦してやろうかと意気込んでいた。

板長「さて、コースの最後のデザートですかね。シンプルなバニラのアイスクリームにしましょう、ただこの前の畑で採れたサトウキビで作った黒糖の蜜、そして近隣の山中に生えてるカエデの樹液で作ったメイプルシロップをかけてお召し上がりください。」

 光はひんやりとしたバニラアイスをすくい黒蜜をかけて一口食べた。日本でも食べたことが無い程の優しい甘さで涙が流れる。
 そしてメイプルシロップで一口、シロップのほろ苦さがアイスの甘さを際立たせる。これでもまた涙が一滴、この歳になってまさかアイスで涙を流すとは。

板長「お、お客様?」
光「す、すみません。美味しすぎてつい・・・。」
ラリー「板長の人の好さが出ているからだな。」
ゲオル「良い話を聞かせて頂きましたからね・・・、あ・・・。」

 ゲオルが愕然とした顔をしている、そしてぷるぷると体が震えていた・・・。

ナル「どうしたんですか?」
ゲオル「ハハハ・・・、すみません。どうやら最終レース外しちゃったみたいでして・・・。」
ナル「この期に及んで何じゃそりゃあー!!!」

 全員、腹を抱えて笑っていた。 
 
 

 
後書き
 賑やかな夜が過ぎて行った・・・。 
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