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カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
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第一部
  プロローグ2

 甲斐律子は、頭を抱えていた。

 神殿教会の教皇にまでなった彼女が、一体何を悩んでいるのだろうか?と不思議に思うかも知れないが・・・彼女が悩みもなく、お気軽にたこ焼きや明石焼きなんて食べていられるのは、別の世界線でのみだ。この世界線の彼女は、それはもう今にもブッ倒れそうな程のストレスを受けており、毎日栄養剤や点滴の世話になっているほどであった。

 彼女がいる部屋は、かつての豪華さは欠片も存在しない、見るも無残な姿になっていた。一目で高価な物だと分かるデスクは小学生の勉強机レベルの物に落ち、部屋を下品な物にならない程度に飾っていた調度品も、既に売り払われている。

「・・・何で私がこんな目にあわなあかんのや・・・。」

 呟く言葉にも覇気がない。たった一年前までは元気に呑気に世界中を飛び回り、その腰に付いている神器の鞭"ミドガルズオルム"でSM・・・もとい、調教・・・もとい、洗礼を行なっていたのにだ。

 ・・・だが、彼女の変わりようも仕方がないだろう。他の世界線では、神殿教会は世界でも最高レベルの戦力を有しており、国家でも滅多に敵対出来ない程の規模だったのだ。だからこそその世界の彼女は、あんな事件を起こした神殿教会のトップに推薦されても、あんなにのほほんとしていられたのである。

 しかし、この世界線ではそうはいかなかった。この世界では、神殿教会も単なる一魔術結社。確かに、他の魔術結社と比べると所持していた技術は隔絶していたし、人員も多かった。だが、確かに人間の組織としては比較的強力な力を持ってはいたが、彼女たちに意見出来る組織などはそれこそ腐る程あったのだ。

 そんな存在があんな事件を起こして、あんな結果を産んでしまったのだからさぁ大変。そりゃ世界中から責められるのも無理はない。

 あの時、そのまま組織が解体されれば良かったのだろうが、流石に信徒を放り出すなんて事が出来るわけもなく、しかし組織のトップがいないのも問題すぎた。フェリオールなどは既に神殿教会を脱退しており、既にいない。その為、彼女は・・・いわゆるスケープゴートのような存在になってしまった。

 あらゆる国のあらゆる組織から責められ、文句を言われる役目。そして、神殿教会のせいで生まれてしまった彼女たちが起こす問題の尻拭い・・・そんなことを一年もやらされた彼女は、本当にやつれてしまって、もう見る影もない。彼女たちの起こす問題を解決するための資金繰りに苦しみ、神殿の殆どの物を売ってしまった程である。・・・その中には、"エンジェル・ストレージ"や、律子の所持していた神器"ミドガルズオルム"も含まれる。

 ・・・まぁ、神殿教会(かれら)の自業自得なのだが。

「・・・何でやねん。何で今になって現れるねん。」

 さてしかし、何故彼女は今こんなに死にそうになっているのだろうか?彼女たちの起こす事件も最近は大規模な物は少なくなってきて、やっと彼女の心労が減ったのに、何故、こんなに疲労しているのだろうか?

「今じゃなくてもええやん。本当に・・・・・・空気読めや・・・!」

 机に突っ伏しながらブチブチと呪いの言葉を吐き続ける彼女。その背には青黒いオーラが見えており、どれだけ恨んでいるのかが分かる。

「なんでまた・・・一人増えたねん。もうええやろ?四人もいたんやから・・・・・・。」




 さて、一年前の事件から、裏の人間には【魔界】とまで呼ばれていた極東の島国日本。少しづつ混乱が収まり、ようやく安定してきたこの国に、また新たな【魔王】が生まれてしまった。

 彼の登場は、世界に新たな風を吹かせることになる・・・。
 
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