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異世界ほのぼの日記~日本に似て便利な世界でぷらぷら生活~

作者:佐行 院
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①~③

 
前書き
 ひょんな理由から異世界に行くことになった会社員・吉村 光(よしむら あかり)の物語。 

 
「異世界ほのぼの日記~日本に似て便利な世界でぷらぷら生活~」

佐行 院

-①突然の異世界-

 ここは東京、現在20XX年、去年からより酷く進みだした地球温暖化により7月8月における1日の平均気温が40度を超える様になってしまった今日この頃、営業職の女子社員・吉村 光(よしむら あかり)は営業先への外回りに出ていた。日差しがまぶしい、正午をとなり昼休み。1日の中でも1番暑い時間帯を迎え涼を求めて多くの人が喫茶店やレストランで食事を取っていた。光もその1人になろうと店を探していた。

光「お腹空いたし暑くて何もする気しないよ、何食べようかな・・・。」

 街は誘惑に溢れているがどこのお店も満席でなかなか食事にありつけない。そんな中、1軒の中華屋さんを見つけた。夏の風物詩となった『冷やし中華はじめました』の看板が出ている。ちょうどそこから男性が2人出てきた。

男性①「いや、美味かったな。」
男性②「そっすね、これで午後からも頑張れますよ。」
光「羨ましいな・・・、あたしも冷やし中華にしよう。」

 ひんやりと冷たい冷やし中華、細切りの胡瓜やハム、そして錦糸卵が乗っておりトマトが彩りを加える。横に添えられた練りからしが味のアクセントとなって美味な1杯を想像し光は店内に入った。涼を得たいという同じ考えの人間たちで賑わっており店の中は常に満席で4~5人ほど待ちが生じていた。このお店は回転率がいいらしく15分ほどで席へ案内されお品書きを見ずにすぐ冷やし中華を注文した、このお店ではポン酢だれか胡麻だれを選べるらしく光は胡麻だれを選んだ。女将さんに渡されたお冷が嬉しくて、光は4杯もお代わりしてしまった。

女将「そんなに慌てて沢山飲むとお腹壊して冷やし中華が食べれなくなるよ。」
光「暑くて仕方無いんだもん。それよりおばちゃーん、お腹空いたよー。」
女将「『お姉さん』だろ、この子にはお仕置きが必要かもね。」
光「勘弁してよー。」
女将「冗談だよ、もう少し待ってな。」

 暫くして注文した胡麻の冷やし中華がやって来た。光は麺に胡麻だれを絡ませ啜った。啜りきったその顔は恍惚に満ち溢れていた。瑞々しくシャキシャキの胡瓜が嬉しい。光は夢中になって食べていた。そこに女将さんがやって来て餃子の乗った小皿を置いた。

女将「サービスだよ、あんたの食べ方が気持ちよくてね。食べていきな。」
光「ありがとう、おば・・・、お姉さん。」
女将「ふふ・・・、分かっているじゃないか。」

 夢中になりながら腹を満たし光は冷房の効いた店内を出て猛暑の中、寄巻(よりまき)部長から連絡を受けたので本社のオフィスへと戻ることにした。部下思いなのは良いのだが心配性すぎるのが玉に(きず)な上司であった。

寄巻(通話)「大丈夫か、水分ちゃんと取りながら帰ってくるんだぞ。」
光「分かってますよ部長、あともうちょっとで社に着くから切りますよ。」
寄巻「本当か、冷えた麦茶淹れて待ってるからな。」
光「ははは・・・、楽しみにしてま・・・、す・・・バタン!!!」
寄巻「お、おい!!大丈夫か?!返事をしろ!!おい!!」

 汗で衣服がびしょびしょになり頭がくらくらしてくる程の猛暑のお陰で光は倒れてしまった。意識がどんどんとどんどんと薄れていく・・・。

 しばらくして目が覚めると全体的に木製で6畳ほどの部屋に置かれたシングルベッドの上に寝ていた。開いていた出窓から優しく涼しげな風が入ってきてカーテンを揺らす。光は目を擦り、起き上がろうとした。

光「ここは・・・、どこ?夢?」

 光は試しに頬をつねり痛みを感じた。部屋に姿見があったのでベッドから起きて自分の姿を確認した。少し前に冷やし中華を食べた時と同じ水色のパンツスーツで光そのもの姿だった。本当に異世界に転生してしまったのだろうか。

光「まさか、・・・、気のせい・・・、だよね・・・。もう1回寝たら元の世界に・・・。」

 ベッドに入り寝ようとしていたその時、部屋の隅の扉が開いてヨーロッパの山間部の民族衣装のような衣服に身を包んだ女性が入って来た。青い目をしているのでどうやら日本人では無いらしい。女性は笑顔で光に声をかけてきた。本当に異世界転生したらしい。

-②異世界?日本?どっち?-

 部屋の扉を開けて女性が光に声を掛けてきた。光にとって何となく予想はしていたが最も困った事態が起こった。

女性「・・・・・・・、・・・・・・・(異世界語)。」

 そう、言語が分からない。しかしその問題もすぐに思った以上に呆気なく解決した。

女性「ん?大丈夫かい?あんた昨日の朝川辺で倒れてたから雑貨屋のゲオルさんに担いでもらって来たんだよ。」
光「え?」
女性「どうやら言葉は話せるみたいだね、下で朝ご飯の準備をしているから降りてきな。」
光「あ・・・、はい・・・。」
女性「そう言えば、あんた名前は?」
光「光です・・・、吉村 光。」
女性「光ね、良い名じゃないか、あたしゃネスタ、よろしくね。早く降りてくるんだよ。」

 光は頷いてネスタを見送り、起き上がりベッドから出た。出窓からはヨーロッパの農村の風景が広がっている。私道はアスファルトではなく石畳で主の道路は舗装されていない道が続いていた。子供たちが笑顔で外を駆け回り大人たちは楽し気に談笑していて日本とは真逆で皆ゆったりと過ごしていた。
 光は部屋を出て階段を降り、ダイニングに入った。異世界で最初の食事だ。

ネスタ「あ、降りてきたね、いらっしゃい。」
光「お腹空いちゃって、良い匂いだったのでつい・・・。」
ネスタ「フフフ・・・、早く座りな。」

光はパンがメインの洋風で温かな美味しいスープが真ん中に置かれたテーブルを想像した。しかし、そこにあったのは茶碗の白米に焼き鮭をメインとし、お味噌汁の香りが食欲を誘う和定食の朝ごはんだった。

光「日本・・・、みたい・・・。」
ネスタ「ニ、ニホン?どこだいそこは?そんな名前の国聞いた事無いねえ。」
光「じゃあ・・・、ここは?」
ネスタ「あんたここの人じゃないのかい?ここはネフェテルサ王国、人民に優しい王族が統べる至って平和な国さ。」
光「ネフェテルサ・・・。」

 光は未だ違和感を感じながら出された朝ごはんを食べる。お腹を満たしながらネスタに色々と聞かれた。光は日本の暑さにやられ倒れたらしく、気付いたらベッドで寝ていた事を明かした。
今思えばどうして急に言語が分かるようになったのだろうか。

食事を終え片づけをするネスタを手伝いダイニングから自分が寝ていたベッドのある部屋に戻ったその時、幻聴のような声が聞こえた。

声「気が付いたか・・・。」
光「え?」
声「私は神だ、何も言わず目を閉じるが良い。」

 光は言われるがままに目を閉じた。夢の中でだが無限に宇宙がひろがり、そこにポツンと仙人の様に長く白い顎鬚をたくわえ、杖をつくご老人が立っていた。ご老人が近づくように手招きしてきている。光は言われるがままに近づいて行った。

光「あなたが神様・・・?」
神様「いかにも、熱中症で倒れていた君をこちらの世界に送ったのが私だ。」
光「じゃあ、突然言葉が分かるようになったのも・・・?」
神様「そうだ、私がやった。その方が便利だと思ってな。あとついでに色々と生活しやすいようにこの世界を作り変えたから安心して過ごすが良い。」
光「色々?」
神様「それは後々分かるさ、楽しみにしながらこの世界で過ごせ。」
光「私をここに送った理由って?私に勇者として何かを倒せとか?」
神様「いや、何もしなくていい。」
光「え?」
神様「だから何もしなくていいの、君日本では熱中症で死んだ事になってんのよ、だからこっちに送ってのほほんと過ごして貰おうと思って。ほら、これを見なさい。」

 神様は映像を出して光に見せた。そこには『故 吉村 光 告別式々場』と書かれた看板が掛けられ喪服を身に纏った多くの人が参列している。号泣している寄巻部長が一際目立っていた。本当に光は熱中症で亡くなったらしい。

-③神様によりできた便利な国-

 元居た世界で本当に自分が亡くなった事を知り光は涙を流した。神様は気まずそうにしている。

神様「うーん・・・、だから見せたくなかったの。無理くりこっちに連れてきたからせめてこの後の生活は出来るだけ何も気にしなくていいようにしたんだよ。」
光「分かった・・・。」
神様「気が向いたら様子を見に来るから元気でいろよ。便利なスキルを特別にあげるから許せ。とりあえず必要な物が手に入るスキルをやろう、出来るだけお前さんの世界に近いように国を作り替えたから他に必要な物はそれで作ると良い。では説明はちゃんとしたからな、しっかりと過ごせよ、じゃあな。」

 急に目の前が明るくなった、またベッドの上だ。どうやら神様に会っていた間ずっと光は倒れていた事になっていたらしくここまではネスタが運んでくれたようだ。どう説明しようか悩んでいたがすぐにどうでもよくなってしまった。光は神様が言ってたスキルを確認すべく異世界転生によくあるステータス画面を出してみた。どうやら両手をぐっと開き前に出して念じると出るらしい。神様のお陰で日本語で書かれているので見やすい。1番下のスキルの場所に『作成』という文字があったので試しに使ってみることにした。使用するには右手を前に出し欲しい物を念じるらしい。光は試しに『バランス栄養食』と念じてみた。すると有名なクッキーの様なブロック型の栄養食が出てきた、食べやすいチョコレート味とある。これは便利だと大切に使おうと思いながら栄養食を食べた。

ずっとベッドに寝転んでいる訳にはいかないし、ずっとネスタの世話になっている訳にもいかないので光は一先ず外に出てみることにした。玄関を出ようとした光をネスタが呼び止めた。ダイニングに招き入れられお茶を振舞われた。

ネスタ「あんたそう言えば何の仕事してんだい?」

 ここは異世界、勿論今まで光のいた日本とは違う世界だ、企業向けOA商品の営業職と言っても分かってもらえないだろう。

光「団体向けの物売りの仕事を。」
ネスタ「じゃあ、冒険者とか勇者という訳では無いらしいね。」
光「冒険者?じゃあギルドとかもあるんですか?」
ネスタ「勿論さ、この辺りは農民が多いからこの辺の魔獣の駆除も頼んだらしてもらえるから助かっているんだよ。冒険者に登録をするならそこに行けばいいよ。」
光「とりあえず、辺りを散策してきます。」
ネスタ「はいよ、この服に着替えて、上の部屋は空けておくからいつでも帰ってきな。」
光「ありがとうございます、行ってきます。」

 ネスタの家を出た光は辺りを散策してみた、今必要なのは情報収集だ。街は石畳が敷かれレンガで出来た三角屋根の建物で溢れている。武器屋もあるみたいでこれぞ異世界という実感が湧く。それ以外にも屋台が数多く立ち並び地域で採れた農産物や畜産品、海産品が多く売られていた。出来立ての串焼き等の食べ物を売る屋台もあり賑わっていた。
地域の公民館にある掲示板には日本語で書かれたポスター等が掲示されていた。多分元々異世界語で書かれたものが光の脳内で日本語に翻訳されているのだろうが。もうそんな事は気にならなくなった。
 田園風景が広がる農村地帯には田を耕す人たちがちらほらといて米作りに勤しんでいた。米以外にも野菜に果物も作っているらしく、自給自足の生活をしている人たちが多いらしい。色々と疑問が生まれた光は田んぼの端で休憩する男性に聞いてみた。

光「すみません、随分と広い田んぼですがここの米は全部この地域の方々が自分達で食べるものなのですか?」
男性「いや、市場に出荷したりもするよ。」
光「じゃあ、どうやって運んでいるんですか、やっぱり馬車とかで?」
男性「あれがあるのに何で馬車なんか使うのさ。」
光「え?何あれ、えええええーーーーーーーーーーーーーーーーー?!」

 光は男性が指差した方向を見た。
 明らかにこの世界にふさわしくない乗り物が見える。どこからどう見ても軽トラだ。

光「ここ日本なの?!違和感ありすぎなんだけど!!」
男性「ん?ニホンって?それに農村には軽トラだろ。」
光「あ、ごめんなさい・・・。」

 ついついツッコミを入れてしまった、ここではこれが普通らしい、いや神様が普通にしたのだろう。でも辺りを見た感じではガソリンスタンドは見えない。光は男性にお願いして運転席を見せてもらう事にした。軽トラは2台あり、窓から覗くと1台はオートマでもう1台はマニュアル車らしいのが見える。ドアを開ければ至って普通の軽トラだが鍵を刺すはずの場所には青いクリスタルが埋められていた。

 
 

 
後書き
 違和感はあるが便利な世界の様だ。 
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