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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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間違った温泉の利用法

精霊の祠在住のエルフ…アスカリーさんに『雨雲の杖』と船を頂き、漆黒の海を航海する正義の勇者一行。
暗黒世界で煌々と光を放つ私達は、モンスター達には格好の標的で、戦闘回数はハンパないです!

したがって皆様お疲れモード。
やっと辿り着いたマイラで、
「温泉だ!色々やる事はあるだろうけど、今は温泉でリフレッシュしよう!」
と、お父さんの不真面目提案に、誰も反対することなく従います。





うん。やっぱり温泉は気持ちいいです。
お爺ちゃん(ビアンカ方)の住んでる村にも、温泉があり何度か利用した事がありますが、身体が若返っても温泉の素晴らしさは変わりません。

しかも残念(パパ的に)な事に、この温泉は混浴じゃありません。
きっと今頃あっちの男湯で、女湯を覗こうと試みて息子に叱られてるんだと思います。
あぁ…無念で項垂れるお父さんの表情が目に浮かぶ!

「…マ、マリーちゃん…最近、随分と胸が大きくなってきたんじゃない?」
湯船に浸かりマッタリ考え事をしてると、アルルさんがちょっと悔しそうに話しかけてきます。
そうなのです…大分膨らんでまいりましたわ。

「羨ましいですか?でも、しょうがない事です…だって私のお母さんは、そちらの巨乳美女ですからね!遺伝子からして違いますよ」
「何よ…私のお母さんだって結構胸が大きいわよ!」

「ですから…遺伝子の違い プラス 女性ホルモンをビンビンに振りまかせる、彼氏の存在も影響が大きいんですよ。齢一桁からビンビンですから!」
「「「えろガキが!」」」
アルルさん・モニカさん・ハツキさんがハモって罵声(ばせ)ってきます。


(メキメキメキ……ドスン!!)
私達がガールズトークに花を咲かせてると、突如男湯との境界の壁が崩れ、数人の男が女湯に雪崩れ込んできた。

「「「「「…………………………」」」」」
誰も何も言えません…
何が起きたのか理解出来ません…

「や、やぁビアンカ。今日もキレイだね…」
お父さんはスックと立ち上がると、何事もなかった様に挨拶をし、そのまま女湯の湯船に浸かり落ち着きます。(唖然と固まるお母さんとハツキさんの間に座り…)

「えっと…マリーもキレイだよ」
「あ…うん。僕はアルルが大好きだ!大きさなんか関係ないからね」
「お、おう、モニカ…今夜も頑張るぞ!」
「皆さん良いですね…決まったお相手が居て」

その他の男共もそれなりに挨拶をすると、しれっと湯船に浸かりマッタリする。
ど、どうすればいいの?
別に知った仲だし大声で悲鳴を上げるのも…
でも、此処は女湯なのよね?何で男が入ってるの?

えっと…えっと…どうしよう?







「随分と質の良いオリハルコンだ!…数日時間をくれ、そうしたら最高の剣を作り上げよう!」
マイラにある道具屋の主人が、お父さんから手渡されたオリハルコンを職人の顔で眺め、力強く武器製造を約束する。

今、私達一行…特に男性陣はこの(マイラ)で有名だ。
そりゃそうだろう…自分の妻・愛人・恋人の裸を覗く為に、温泉の壁を破壊したのだ。
頼めば見せてくれる相手だろうに!

「数日か…まぁよろしく頼むよ。世界を救おうとしている、勇者アルルの武器だから…最高のを頼むよ!」
「任せろ!……それよりも、(ウチ)の壁を壊さんでくれよ…隣に美女が居ても!」

此処でもだ…
職人顔の道具屋主人の言葉に、信頼を置いたお父さんが念を押す様にお願いすると、一般人の顔に戻った道具屋主人は、嫌味っぽく先日の事を笑い話として持ち出す。

私達女性陣もどうする事も出来ず、男性陣と共に静かに女湯に浸かり固まっているところを、大きな音を聞きつけた温泉の管理人が現れて、大騒ぎをしたのだ。
その時のお父さんの台詞を、今でもしっかり憶えてる。

『うっせぇな!何だよいきなり入ってきて…大声出すなよな!』
何故だろう…
常識的に騒いでいる方が、非常識に見えてしまうのは?

勿論、凄く怒られましたよ。
お父さん以外は反省して俯きっぱなしでした。
お父さんも態度に見せないだけならまだ助かったのに、『ギャーギャーうるせーな!』って言っちゃうから…

ブチ切れる管理人に慌てて謝ったのはアルルさん。
パーティーリーダーだし、仲間のしでかした事には責任があるのでしょうね。
ひたすら頭を下げ『ごめんなさい!私達で修理をしておきますので、どうかご勘弁ください!』と、必死でした。

一応、この世界を救おうとしてる勇者として名が通っていたので、その彼女の深い陳謝に管理人も怒りを引っ込めてくれ、私達で修理する事で折り合いが付きました。
ただ…私達と言っても、女性陣は修理を手伝いませんけどね。

だって私は壊してないもの!
言ってくれれば、ウルフにならいくらでもお見せする裸を見る為に、彼等が勝手に壊した物を何で私が直さねばならないのか!?
この意見は女性陣共通で、男性陣だけで壁を直す様に決定される。

真面目なお兄ちゃんは、その決定に文句を言わず黙々と直し始めたのだが…
案の定、とある1名が文句を垂れる。
サボらないようにと男性陣を見張ってると、その1名のぼやきが聞こえてくるのだ。


『ふざけんなよ…安普請のクセに直せとか偉そうだよな!』
『何言ってんのよお父さん!?普通、大の大人の男が大人数で壁にもたれ掛かるとは思わないでしょう!強度なんてそんなもんよ』

『はぁ?男湯と女湯を隔てておいて、誰も覗かないと考える神経がどうかしてるね!覗かれたくないのなら、最初(はな)っから混浴にしておけば問題ないんだよ!ワザワザ男女を分け隔てたって事は、覗くスリルを味わってくれって意味だろうに!』

何でそう言う思考に達するのか解らない…
これ以上の会話は無意味だろう…
永遠に交わる事のない主義主張だ!


そんな事があった為、マイラ中の人々が私達の事を知っている。
そして漏れなく言ってくるのが先程の道具屋主人の台詞と同じ言葉だ。
(ウチ)の壁を壊さんでくれよ…隣に美女が居ても!』って感じの。

最初の内は、お兄ちゃんは元よりラン君ですら何も言えず俯き黙って居たのだが…
「あはははは、大丈夫だよ!そんな絶世の美女は身内にしか居ない!壁壊す程価値のある女なんか、ここには居ないよ!(笑)」
と、最大の首謀者が反省することなく、自身の妻(愛人)自慢へと変換させる為、残りの男共もそれに味を占めたのだ。

言い返された村人は苦笑い…
全然反省してないんだなって、納得しちゃってますよ。
でも…自慢される彼女としては悪い気はしない。




「さて…そう言えば、温泉の南に笛が埋まってるって話だったよね?探してみようか!」
色々と騒動があった為、すっかり忘れてたその情報。
お父さんのお陰で思い出す事が出来ました…ってか、騒動の原因はお父さんじゃん!

「そうですね…アスカリーさんの話では、それがルビス様の封印を解く『妖精の笛』のはずですからね」
今朝から営業を再開させた温泉の裏手を進みながら、探すべきであろう場所を眺めお父さんに話しかけるアルルさん。

「う~ん…どこら辺でしょうか?」
「さぁ?全部掘り返してみればティミー。泥だらけになって笛を見つけて、アルルに向かって『ワイルドだろ~?』とか言ってみれば面白いよ」
「相変わらず貴方の言っている事の意味が分かりません!」

思わず吹き出しそうになった私…
笑ってしまえばまた面倒な質問をされそうなので、グッと笑いを堪え歯を食いしばります。
でもこれ以上馬鹿話を続けさせるわけにも行かないので…
「何も全部掘り返さなくても、レミラーマを使っていただければ早いのでは?」

「あぁ…流石マリーは賢いなぁ。じゃぁ父さん、お願いします」
「何…最近パパを顎で使う様になってきた?」
「えぇ…ワイルドだろ!」

「………言い方が違うから減点!(笑)………レミラーマ」
良いわね私の家族!
格好いいし面白いし…
ジャニ○ズなんて目じゃないんじゃないの?

素敵家族に見とれていると、魔法の光で示された場所を掘り返し、泥まみれの笛を見つけ出すお父さん。
「本当にあんなどうでも良さそうな情報が、貴重なアイテムへ導くなんて……」
私も前世情報がなかったら、アルルさんと同じ事を言ってたでしょうね。

「でも泥だらけだな…こんな笛は吹きたくないよね………ちょっと洗ってくる!」
基本、楽器系統は好きなのだろうか?
もう自分が演奏する気マンマンで笛を洗いに行くお父さん…

「ちょっとリュカさん!な、何をやってるんですか!!?」
だが、その行動が大問題だ!
温泉修復作業時に勝手に作ったのだろう…裏から出入り出来る様、垣根に細工を解かされた場所から、温泉内へと入って行くパパ…

「何って…笛を洗ってますが…何か?」
「な、何か?って…何、自然な動きで女湯に入ってるんですか!?」
そう…入浴客が居るにも拘わらず、器用に垣根を開閉させて女湯へと入っていちゃうのですよ。

「何時の間にこんな所に出入り口を作ったんですか!?い、いやそれより、何で女湯で洗ってるんですか!男湯に行けばいいでしょ!」
「あはははは。男湯には女性客は居ないよ。女湯に入らなきゃねぇ………ワイルドだろぅ!」

「あぁ…ああ言うのか!」
「ちょっとティミー!そんな事を感心してないで、貴方からもリュカさんに言ってやってよ!」
「ん…うん。と、父さん…笛を洗うの、手伝いましょうか?」
「………是非!」

「『是非』じゃねー!お前等、女湯から出て行け!!」
今日からは『お父さんに似てきた!』と言われても、怒ったり落ち込んだりする事を禁止しようと思います。
だって完全に行動が同じなんだもん!

「「ワイルドだろぅ!」」
「いいから出て行け!」
揃ってアルルさんに尻を蹴り上げられながら、渋々女湯から出て行くお父さんとお兄ちゃん。

「流石は実の息子さんだなぁ…俺なんかまだまだだよ」
ウ、ウルフぅ~…
貴方はいいのよ…アレを目指さなくても。



 
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