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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第56話:ご協力をお願いします


しんと静まり返った会議室を見まわすと,俺は話を再開することにした。

「どのような諜報活動を実施したかは,本題とはそれほど関係しませんので
 省きますが,諜報活動の結果として,まず最高評議会の構成員が
 いずれも管理局草創期の人物であり,現在に至るまで100年以上に渡って
 次元世界全体を裏から支配してきたということ。
 次に,ジェイル・スカリエッティは最高評議会の意向によって作られた
 人工生命体であり,最高評議会がその研究を資金面からバックアップ
 していること。以上2点が諜報活動によって得られた情報です」
 
そう言って椅子に座り,室内を見渡すと何人かがスクリーンを睨みつけ,
厳しい表情をしているのが見えた。

「というわけで,機動6課にとってはレリックと騎士カリムの予言の両方で
 スカリエッティが捜査線上に上がったというわけです。
 ただ,ここまでの情報を手に入れ,それをもとに捜査を鋭意やってきましたが
 一向にスカリエッティが何をしようとしているのか?については
 答えはおろかその糸口さえ掴めずに来ました。
 ですが,あることをきっかけに調査が一気に進展したんです」

はやてはそう言うと,ヴィヴィオの顔写真をスクリーンに映し出した。

「この子は先日の戦闘の際に保護した子です。検査の結果この子は
 古代ベルカの王,聖王の遺伝子を元に作られたクローンであることが
 判明しました」

会議室の中でどよめきが起こった。はやては,どよめきが収まるのを待ち
先を続ける。

「さらに,この子とレリックを乗せたヘリがスカリエッティの戦闘機人によって
 狙撃されてます。つまり,スカリエッティのやろうとしてることは
 聖王のクローンが必要となる何か,と考えてます。
 以上が我々機動6課の入手した情報とそこから推測したことの全てです」
 
会議室の中を見渡すと,それぞれの人が思い思いの姿勢で,考えをまとめようと
しているのが見てとれた。
わずかな静寂ののちに,クロノさんが口を開いた。

「最後の部分は僕も初めて聞く話だが,この先はどうするんだ?」

「さっきも言ったようにスカリエッティがやろうとしている,聖王のクローンを
 必要とすることが何なんかを調査するつもりや。6課でもこれまでやってきた
 捜査の延長で調査はやるけど,それだけでは十分やない気がするんよ。
 そやから・・・」
 
そこではやては言い淀むと,ユーノの方を見た。
はやての目線に気づいたユーノは小さく嘆息するとはやてに目を向けた。

「僕は過去の文献から何か情報を引き出せばいいんだね」

「ええの?ユーノくん」

「いいも何も,世界の危機と言われたら引き受けない訳にはいかないよ。
 それに,はやてとは付合いも長いしね。快く引き受けさせてもらうよ」

「ありがとうな。ユーノくん」

はやてはそう言うとユーノに向かって笑いかけた。
その時,俯いていたナカジマ3佐が顔を上げた。

「八神。それで俺には何をして欲しいんだ?」

「聖王関係についてはユーノくんメインで調べてもらうんですけど,
 それだけやなくて,今まで続けてきたレリック関係の捜査と
 レリックと聖王のつながりなんかについても調査をしたいんですけど,
 マンパワーが足らんのですよ。
 そやから,ギンガを一時お借りしたいんです」

はやてがそう言うと,ナカジマ3佐は腕組みをして少し考え込んだ。

「判った。いいだろう。ギンガは近いうちに機動6課に出向させる」

「ありがとうございます」

ナカジマ3佐がそう言うと,はやては深く頭を下げた。

「で,僕は何をすればいいんだい?はやて」

声のする方を見ると,アコース査察官がにこやかな顔で小さく手を
挙げているのが見えた。

「ロッサにはスカリエッティの居場所を探ってほしいんや。得意やろ?」

はやてがそう言うと,アコース査察官は芝居がかった感じで肩をすくめた。

「得意というほどでもないけど,苦手ではないね。ま,構わないよ。
 かわいい妹の頼みとあっては引き受けるしかないよ」

アコース査察官はそう言ってはやてに向かってウインクして見せた。

(ダメだ。俺やっぱりこの人苦手・・・)

そう思いながらアコース査察官の方を見ていると,俺の方を向いて
ニヤリと笑って見せた。

「私の方からは以上ですけど,皆さんの方から何かあります?」

はやてはそう言って会議室の中を見まわしたが,特に何もないようだった。

「ほんなら今日は解散しましょっか。ありがとうございました」



俺が椅子にもたれかかって,体をほぐそうと伸びをしていると,
さっきまでユーノが座っていた席に誰かが座ったのを感じた。
体を起こしながらそちらを見ると,ナカジマ3佐が座っていた。

「よう,シュミット3佐・・・だったか。お疲れみたいじゃねえか」

「最近に限らずずっと忙しいもので。あと,ゲオルグで結構ですよ」

「なら,お言葉に甘えさせてもらうか。ではゲオルグ,お前さんは
 女房が死んだあの事件についてどこまで知っている」

ナカジマ3佐は真剣な表情で俺を見つめてそう言った。

「先ほどお話した以上のことは何も」

「隠すんじゃねえよ」

「隠していませんよ。これ以上のことは何も知らないんです。
 誰かが知っているなら,この俺が教えてもらいたいくらいですよ」

俺が少し声を荒げて言うと,ナカジマ3佐は少し面食らったようだった。

「本当に隠している訳ではないみたいだな」

「御理解頂けて幸いです。お話は以上ですか?」

「ああ」

「そうですか。それでは」

俺がそう言って椅子から立ち上がろうとすると,ナカジマ3佐が
鋭い視線で俺を射抜いた。

「・・・お前さん。あの事件に何か因縁でもあるのか?」

「・・・ありませんよ」

「嘘だな」

「嘘じゃありません」

「いや,嘘だ。でなければさっきのように声を荒げることもないだろうし,
 因縁を否定するのに間を必要とすることもねえ」
 
ナカジマ3佐はそう言うと,俺の顔をじっと見つめていた。
俺は,小さくため息をつくとナカジマ3佐の方を見た。

「ナカジマ3佐はシュミットという姓に聞き覚えはありませんか?」

「ん?ちょっと待てよ・・・。そういえばあの事件の少し前に,
 女房が有望な女の子が入って来たとか言ってたな・・・
 確か名前は・・・」
 
「エリーゼ・シュミット・・・じゃないですか?」

「ん?ああ!そうだ・・・って。お前,まさか・・・」

「弟です」

「・・・そうだったのか,すまん」

「いえ,過去のことですしね」

「それでも,整理しきれてねえんだろ?本当なら俺がお前さんの気持ちを
 一番理解できる立場に居るはずなんだがな・・・本当に済まなかった」
 
ナカジマ3佐はそう言うと,深く頭を下げた。

「頭を上げてください。本当にナカジマ3佐にどうこうっていう気は
 無いんです」

「そうか・・・お前さんは若いのに強いな」

「割り切ってるだけですよ。そうでもしないとやってられませんでしたから」

「それでもだよ。ま,それは置いておいてもこれからよろしくな。
 うちの娘たちは2人とも6課に預けることになるわけだしな。じゃあまたな」

ナカジマ3佐は俺の肩をポンと叩くと椅子から立ち上がって,俺に背を向けた。

「ナカジマ3佐!」

俺は思わずナカジマ3佐を呼びとめてしまった。
ナカジマ3佐は振り返って俺の目を見た。

「何だ?」

「あの・・・俺は,姉のことを遺体が発見されるか,死んだという物証が
 見つかるまで諦めるつもりはないんです。なので・・・」

「そうか・・・俺もお前さんを見習わなきゃいけねえな・・・ありがとう」

「いえ」

そうして,ナカジマ3佐と俺は別れた。

 
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