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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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謎の闘争

 デュノアさんとボーデヴィッヒさんが転校してきて5日目の土曜日

 IS学園では土曜日の午前は理論学習、午後は完全に自由時間になっています。とはいえ生徒全員がそうなのでアリーナが全開放の土曜日は殆どの生徒が実習に使います。
 そして今日はデュノアさんも一緒です。
 となれば男性二人がいるこのアリーナは鮨詰め状態なわけで……

「きゃ! 危ない!」

「ああ! ごめん!」

「ちょっと! 射線に入らないで!」

 先ほどから周りではIS同士の接触や誤射などがかなり起こってしまっています。

「こう、ズバーッといってから、ガキーンッ! といったようにだな!」

「なんとなくわかるでしょ? 感覚よ感覚。はぁ? なんでわかんないのよバカ!」

「防御の際は右半身を前方へ5度、回避の際は後方へ20度ですわ!」

 そしていつも通り一夏さんは教師陣3人衆に囲まれています。ちなみにデュノアさんはまだ来ていません。
 私ですか? 私は誤解されたくないので3人がいない時しか教えていませんよ?
 今は一人で射撃訓練中です。

「ごめんね! 遅れちゃった!」

 声に振り向くとISスーツに着替えたデュノアさんが走ってこちらにやってくる所でした。

「いえ、まだ始まったばかりですし大丈……」

「だからこうデュア! って感じでだな!」

「感覚で分かんないなんてあんた馬鹿ぁ!?」

「ですから上へ17度体を傾けてですねえ!」

 いつも通り過ぎますよ3人とも。

「大丈夫じゃないみたいですね」

「みたいだね。アハハ……」

 デュノアさんでさえ苦笑いしてしまうんですから……こんなだからいつも……

「カルラ! 助けてくれ!」

 こうなるんですよもう!

「ちょっと一夏! 今カルラは訓練中でしょ! 見れば分かるじゃない馬鹿!」

「そうだ! 人の邪魔をしてはいかん!」

「この私が教えて差し上げてるのにデリカシーがありませんわよ!」

 そして再び3人の教師(悪魔)に捕らわれる一夏さん(生贄)。
 あー、もうなんか……この『グリニデ』のグレネードをあの4人に叩きつけられたらとか考えてしまいますよ。しませんけどね。

「デュノアさん……」

「な、何?」

「一夏さんをお願いできますか?」

「うん。元々そのつもりだったし大丈夫」

「お願いします」

 デュノアさんはそう言うと一夏さんたちの方に向かっていきました。デュノアさんなら同じ男性ですしあのお三方も納得……はするかどうか分かりませんが、犯罪者じゃないですけど身柄を引き渡すと思います。
 ちなみに先ほど言ったのはほぼ3人同時に行っています。しかも全員バラバラ……あれでは逆に弱くなるのではないでしょうか?
 昔の日本では新撰組が組長ごとに教え方が違うという似たような状況にあったらしいですが同時でない分そっちのほうがまだマシだったのでは……
 予想通りというかなんというか。デュノアさんは3人を相手に一人ずつ丁寧に説明して諦めさせていました。

「そう、なら仕方ありませんわね」

「ではよろしく頼む」

「絶対聞いておいてよ!」

何を言ったのかは分かりませんが3人は納得した様子でアリーナから去っていきました。はて、何を言ったのでしょう?

 そう考えているとデュノアさんがISを展開しました。デュノアさんのISは『ラファール・リヴァイブ』の専用カスタムで『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』というらしいです。色は通常のネイビーグリーンではなく鮮やかなオレンジ色ですね。
 この間データを見せてもらったときはびっくりしました。私の『デザート・ホーク・カスタム』も武装は多い方ですがデュノアさんのは既存の装備をいくつか外し、その上で拡張領域を倍にすることで武装を20以上搭載しているそうです。普通はそれだけあっても使いこなせるものではないのでその半分以下、もしくは一つのものに特化した人が多いのですけどね。
 鈴さんもセシリアさんも武装が3つほどしかないのがいい例です。二人からすれば私も十分多い部類に入るって言われましたしね。

 『グリニデ』のマガジンが空になったので量子化して別の武器を呼び出そうとしていると、ISの通信からデュノアさんの声が聞こえました。

『今大丈夫かな?』

「はい? 何か?」

『うん、今一夏の射撃武器に対する特徴を教えてるんだけど、僕の持ってない武装いくつか貸してあげてくれない?』

「はあ、別に構いませんよ」

 でもデュノアさんの持ってない武装ってなんでしょうか? あまり思いつきませんね。
 あれこれ考えつつも二人の方へと向かいます。

「わざわざ悪いな、カルラ」

「いえ。で、デュノアさんの持ってない武装って何ですか?」

「うん、『グリニデ』ってあるよね」

「はあ、ですがあれはただのアサルトライフルですけど」

「重要なのはその備え付け。60mmグレネードの方だよ。グレネードランチャーだけなら僕もあるんだけどアサルトライフルの備え付けでそこまでの大きさのものはないからね」

 なるほど。そういうことですか。
 とりあえず理解したので再び『グリニデ』をオープンして素早く許諾の欄に一夏さんを追加します。

「はい、どうぞ一夏さん」

「お、サンキュー」

「じゃあ一夏、さっき言ったように構えて」

「ちなみにそれのグレネードはロケット推進式で射出時は火薬を内部で爆発させるので発射の瞬間の反動は大きいですよ」

 一夏さんが両手で『グリニデ』を構えて正面のターゲットに狙いをつけます。


 ドゴンッ!


「うお!」

 一夏さんがトリガーを引くと同時に発射音と発砲煙が発生。反動が予想以上に大きかったせいか『グリニデ』を構えた右手は跳ね上がっていて発射されたグレネードはあらぬ方向へ飛んでいき爆発しました。
 その近くにいた人たちが悲鳴を上げて回避しています。
 大丈夫でしょうか? まあ皆さんIS装備してますし大丈夫と思います。

「どうだった一夏?」

「お、おう。銃弾と違って弾が遅い感じがする」

「その通りです。グレネードなどは弾丸と違って中に火薬が入っていたり質量が違っていたりするので、どうあっても普通の銃弾より速度は遅くなりがちなんです」

「なるほど」

「もう少し撃ってみますか?」

「お、いいのか?」

「『グリニデ』ではありませんけどグレネードなら『ミューレイ』がありますから。反動はこっちの方が大きいですけど」

 一夏さんから差し出された『グリニデ』を量子化して6連発回転式グレネード『ミューレイ』を展開。それも使用許可を出して手渡します。

「そういえばすごいミスショットしましたけど銃器管制のセンサー・リンクはやってないんですか?」

「ああ、シャルルにも言われたよそれ」

「そうなんですか?」

「うん、一夏の『白式』は本当に格闘オンリーみたいでね。目測でやるしかないみたいなんだ。反動制御も全部手動でやるしかないみたい」

「なるほど」

 納得です。そもそも後付武装(イコライザ)がないんですから射撃なんて想定してないのですね。それだったらあるだけ邪魔と、そういうことでしょう。
 そう考えながら『ミューレイ』を手渡します。『グリニデ』は一々グレネード弾を装填しなおさなければ行けない分『ミューレイ』より厄介なんですよね。その分威力は高いですけど……
 そんなことを考えているとアリーナの入り口辺りが騒がしくなるのが聞こえてきました。

「ねぇ、ちょっとアレ……」

「ウソ、ドイツの第三世代型だ!」

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど………」

 アリーナの人垣が割れて件のもう一人の転校生、ボーデヴィッヒさんが現れました。人が多いのでモーセの十戒みたいですね。
 ボーデヴィッヒさんが纏っているのは殆どが黒のIS。本人の銀髪が非常に目立つこともあってその黒が映えます。
 左肩には大型の砲身がついていてかなり威圧的ですね。

―データ照合、ドイツ第三世代試作IS『シュヴァルツェア・レーゲン』と確認―

 展開している私の『デザート・ホーク・カスタム』が素早く情報を確認してくれました。学園に入る前に確認したときはトライアル段階と聞きましたがどうやらこの人のは完成していたようですね。

『おい』

 感情の無い声がISの開放回線で飛んできました。と言ってもその声は明らかに一夏さんだけに向けられています。
 そしてこちらを見ているその目は、明らかに相手を見下すような目つき。

「……なんだよ」

 一夏さんも転校初日に叩かれたことを思い出しているのでしょう。顔が一瞬で厳しくなると共に空気が一気に張り詰めたのが分かります。

『貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え』

「却下だ。理由がない」

 それこそまさに一触即発……この空気は苦手ですよ本当に……
 いざという時のために左手に『オーガスタス』をいつでも展開できるように準備しておきましょう。

『貴様にはなくても、私にはある』

「また今度な」

『ふん……ならば戦わざるを得ないようにしてやる』

 言うが速いか、ボーデヴィッヒさんはその漆黒のISを戦闘状態へシフトさせ、

 ―警告、正面IS攻撃態勢に移行を確認! 警告!―

『ああもう!』

 刹那、左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴きました!
 こんな密集地でそんなもの撃つなんて!

 準備しておいた『オーガスタス』を展開しつつ、一夏さんを庇うように前に出て来るべき衝撃に備える。


 ゴガギンッ!

「あれ?」

 受け止めた音はするのに衝撃が来ません。疑問に思って盾を下げると、そこには私のさらに前で盾を展開して砲撃を受け止めたデュノアさんがいました。

「……こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようなんて、ドイツの人は随分と沸点が低いんだね? それとも考えることが苦手なのかな?」

「貴様………ッ」

 そういうと同時にデュノアさんは右手に六一口径アサラトカノン『ガルム』を展開してボーデヴィッヒさんに向ける。

「フランスの第二世代型(アンティーク)ごときで私の前に立ちふさがるとはな」

「未だに量産化の目処が立たない金食い虫のドイツの第三世代型(ルーキー)よりかは動けると思うよ」

 あう、耳が痛いです。オーストラリアも未だに実験段階で量産の目処は立っていませんからね……
 しかし……今デュノアさん、ものすごい武装の展開が速かったですね。ほぼ一瞬で武装を展開、照準までつけています。なるほど、だからあれだけの武装をつけていても問題なく使えるんですね。

 互いに涼しい顔をした睨み合いが続き……

 しかし、その睨み合いも長くは続きませんでした。

『そこの生徒、何をしている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

 アリーナのスピーカーから声が響きました。どうやら騒ぎを聞きつけた担当の先生のようです。

「ふん………」

 二度の横槍にやる気がなくなったのでしょう。ボーデヴィッヒさんがあっけなくISを解除してアリーナの出口へと歩いていきました。助かりましたね

「一夏、カストさん、大丈夫?」

「あ、ああ」

「ありがとうございます。助かりました」

 先ほどまでの厳しい眼差しはどこへ行ったのか。今のデュノアさんはいつもの優しい笑顔に戻っています。

「今日はもう上がろうか。どの道もうすぐ閉館時間だし」

「そうですね」

「ああ、そうだな」

 そう言って私たちは一夏さんとデュノアさんと別れて更衣室に戻りました。
 でもボーデヴィッヒさんは何故あそこまで一夏さんに固執するんでしょう?
 ただ単に唯一の男性でと言うわけではないようですし、織斑先生にも個人的に何かあるように話してました。
 ということは二人の関係はその何かのところにあるのでしょう。もしくは先生繋がりか……どちらにしろこれは個人のことですし、一夏さんが話してくれるまで待つしかなさそうですね。 
 

 
後書き
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