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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第35話:副部隊長を倒せ!


シンクレアが機動6課に来て数日が過ぎた。
シンクレアは管理局中央への潜入任務準備のための情報集めなのか
着任して以来ほとんど隊舎にはいない。
まあ,そのために参謀という曖昧な立場で出向してもらったのだが。

俺はというと,潜入任務を控えているとはいえ,副部隊長としての事務は
減るわけもなく,通常業務をせっせとこなしていた。

今日もいつものようにレーベンに起こされて制服に着替え,
食堂で一人寂しく朝食をとっていると,向かいの席に
ヴィータとなのはが座った。

「よーゲオルグ」

「おはよ!ゲオルグくん」

2人は早朝訓練の後らしく,寝起きの俺とはテンションに差があった。

「なんだよ。2人とも朝からテンション高いなぁ」

俺がそう言うと,なのはとヴィータは顔を見合わせて小首を傾げた。

「そうかな。私としては普通なんだけど」

「そーだぞ。あたしも普段からこんなもんだ」

2人の返事を聞いて俺は頭が痛くなってきた。

「いやいや。俺からすれば十分テンション高いよ」

「そうなの?」

「そーか?」

俺がそう言うと,なのはとヴィータは2人揃ってまた小首を傾げた。
俺は話題を変えようと,話を振ることにした。

「そういえば,あいつら4人はどうだ?」

「え,ゲオルグくん気になるの?」

「ん?そりゃまぁ,副部隊長としては部隊の戦力推移は気になるでしょ。
 それに,この間はいろいろあったしね。で,どうなの?」

「うーん。4人ともだいぶ強くなってるよ。
 もう,4人いっぺんに相手するのはキツいかな」

「なぁ,ゲオルグ。そんなに気になるなら自分で確かめればいーじゃねーか」

ヴィータがそう言うと,なのはが目を輝かせた。

「ヴィータちゃん,それいいね!」

(・・・あれ?なんか嫌な予感が・・・)



・・・午後。
俺はフォワード4人を前に,訓練スペースに立っていた。

「じゃあ今日の午後の訓練は,ゲオルグ副部隊長と4対1の模擬戦だよ」

「「「「はい!」」」」

なのはがフォワード4人に向かって,そう言うと4人は揃った返事をした。

「ゲオルグさんと模擬戦で戦うのは初めてだから,楽しみー」

「なに言ってんのスバル。前に鬼ごっこでコテンパンにやられたんだから,
 これは雪辱戦なのよ。しっかりやりなさいよね!」

「成長したところをしっかりゲオルグさんに見せないとね,キャロ」

「そうだね。がんばろ,エリオくん!」

[なんか,4人ともすげーやる気なんだけど,どうしようかレーベン]

[《どうするもこうするも無いと思いますよ,マスター》]

俺がレーベンと念話を交わしている間にも,なのはが話を進めていく。

「じゃあ,シールドを破って攻撃を当てられたら撃墜ってことでいいね。
 あと,ゲオルグくんはステルス使っちゃだめだよ」

「へいへい」

俺がやる気なさげに返事を返すと,なのはは念話で話しかけてきた。

[ゲオルグくん,あんまり舐めてかかると痛い目みるよ]

[舐めてないよ。俺はこれが普通なの]

[そっか,じゃあ頑張ってね!]

なのはは念話を打ち切ると,俺に向かってにっこり笑って見せた。

[《マスター,なのはさんにかっこいいところを見せるチャンスですよ!》]

[ほほう。ヤクトレーベンさんは余裕ですな]

[《戦うのはマスターですからね》]

[そりゃそうだわな。ほんじゃま,いっちょやりますかい。行くぜ相棒!]

[《何だかんだ言ってマスターも気合い入ってますね》]

俺はセットアップすると,レーベンを握っていちど大きく深呼吸する。

「よしっ,じゃあ模擬戦スタート!」

なのはの合図と共に,俺の前の4人が一斉に動いた。

[レーベン,まずは向こうの出方をみるぞ]

[《了解です!》]

俺は,4人から距離をとるために,後ろに向かって飛ぶと,
スバルがウィングロードで追ってきた。

ちらっと下を見ると,ティアナがカートリッジをロードして
こちらを狙っている。

その後方では,大型化したフリードに乗ったキャロとエリオが
俺の側面に回り込もうとしていた。

そうこうしているうちに,スバルが俺を攻撃しようとしていた。

「先手必勝!リボルバーシュート!!」

「そんなにモーションでかい攻撃が当たるわけないでしょ」

俺は,スバルの攻撃をレーベンで受け流すと,スバルの後方に回り込んで
切りつけようとした。だが,ティアナからの射撃が大量に襲ってくる。

俺はティアナの方を向くと,命中コースの魔力弾をレーベンで切り裂いた。

「レーベン!スピードブーストダブル!」

《はい!》

俺は,ティアナの方に向かって一気に突っ込むと,
至近距離から砲撃を打ち込むことにした。

「パンツァーファウストっ!」

周囲に大きな砂煙が上がる。俺は,砲撃の命中を確認せずに,
その場を離れると近くのビルの影に隠れた。

砂煙が晴れると,ティアナとエリオが立っているのが見えた。
どうやら,俺の砲撃はエリオによって防がれたようだ。

だが,4人とも俺を見失ったようで,キャロがフリードで
上空から探すことにしたようだった。

俺は,ビルの中に入ると,ほっと一息ついた。

[さて,どうするかね。できればティアナはさっきので
潰しておきたかったんだけど]

[《だったら斬るべきだったのでは?》]

[それだと,多分俺がエリオにやられてたよ。
ま,とりあえず隠れてチャンスを伺うことにしますか。
レーベン,サーチャーの情報からタクティカルディスプレイに
連中の位置を表示]

俺はさっきの爆発のどさくさに紛れて,サーチャーをばら撒いていた。

[《了解です》]

表示を見ると,エリオとキャロが上空から,スバルとティアナは地上から
俺のことを探すつもりのようだった。

[しっかりコンビネーション組んじゃってまぁ]

[《マスターが前にやった鬼ごっこの反省ですかね?》]

[なのはが鍛えたんでしょ。ったく厄介だな・・・]

表示を見ていると,スバルとティアナは俺が隠れているビルに当たりを
つけたらしく,ビルに入ってきた。

[おっ,入ってきたね。しめしめ・・・]

[《マスター,完全に顔が悪役です》]

俺は2階に上がると,階段を上がりきったところに,
設置型のバインドを仕掛け,そこらにあるがれきを少し離れたところに投げた。

表示を見ると,スバルが前,ティアナが後で階段を上がってくる。

俺はカートリッジをロードすると,レーベンを握り締めた。

スバルの姿がちらっと見えたところで,バインドが発動し,スバルを拘束する。

「あっ!」

スバルの声が聞こえた時には,俺はスバルの懐に飛び込んでいた。

「ツヴァイシュラーゲン!」

俺は,レーベンでスバルの胴をなぎ払い,バリアジャケットの一部が
裂けたのを確認すると,階段の下にいるティアナに向かって突っ込み,
ティアナに斬りかかった。

が,レーベンが当たった瞬間に,ティアナは消えてしまった。

「幻影か!?」

「クロスファイアー・・・」

階段の下に着地した俺の右側からティアナの声が聞こえた。

「シュート!」

ティアナの射撃が俺に迫る。

「舐めんなぁー!」

俺はティアナの放った魔力弾を切り裂くと,ティアナに向かって左手を向けた。

「パンツァーファウスト!」

俺の砲撃はティアナのバリアを破ると,ティアナに命中する。

《マスター!外です!》

レーベンの声に反応して表示を見ると,キャロとエリオを乗せたフリードが
俺に向かって降下していた。

「・・・決めるぞ。レーベン」

俺は,ビルの開口部に向かって右手を向けると,意識を集中する。
さっきまでの戦闘で俺のまわりに漂っている大量の魔力素を集め,
右手の前に集中させていく。

「パンツァー・・・」

その時,フリードの姿が開口部の外に見えた。

「ハンマー!」

俺の右手の前から砲撃がフリードに向かって飛んでいく。
砲撃が収まると,そこには何も無かった。

「・・・凄い」

ティアナがつぶやいているのがちらっと聞こえた。

《マスター!後ろです!!》

俺がレーベンの声でとっさに振り返ると,ストラーダを構えたエリオが
突っ込んできた。
俺は,シールドを張り攻撃を受け流そうとしたが,
シールドを破られ,咄嗟に身を捩ってかわそうとしたが,左肩に攻撃を受けた。

「はぁ,はぁ,当たった・・・?」

エリオが息も絶え絶えに言った。

「模擬戦は終了。結果は俺の負け。ほれ」

俺は少し騎士甲冑の裂けた左肩を見せた。


 
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