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声優の兄弟

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第三章

「三十歳でアイドルもな」
「あるか」
「声優さんなら特にな」
「そういう業界ってことだな」
「ああ、しかし山下さんも何時かはな」
 深く考える顔で述べた。
「結婚されるな」
「そうなるな、やっぱり」
「そうだろ、想像も出来ないけれどな」
 彼女の結婚はというのだ。
「何時かはな」
「結婚されるな」
「その時はお祝いしような」
「応援している声優さんが結婚されて怒る奴いるけれどな」
「裏切られたとか思ってな」
「けれどそれはな」
「馬鹿だよ」
 須郷は怒った顔で言い切った。
「そんな奴はな」
「そうだよな」
 松岡も完全に同意だった。
「そんな奴はな」
「そうだよ、そうした時はな」
「ちゃんとお祝いすることだな」
「それがだよ」 
 まさにというのだ。
「本物のファンだよ」
「その通りだな」
「若しな」
 須郷は真剣そのものの顔で話した。
「そんな怒ってな」
「アンチな活動したらな」
「ファンじゃないからな」
「全くだな」
 松岡も完全に同意だった。
「結婚されたらな」
「そのことを素直にお祝いすべきで」
「アンチなことするなんてな」
「絶対に駄目だ」
 それこそというのだ。
「本当にな」
「全くだな、世の中おかしな奴も多いな」
「応援している声優さんが結婚して怒るなんてな」
「そんなの本当のファンじゃない」
「本当のファンなら喜ぶべきだ」
「それが正しいな」
 こうしたことを二人で話した、そして。 
 山下萌子は三十歳になった、その日の夜だった。
 須郷は携帯で松岡に言った。
「おい、山下萌子さんのツイッター観たか」
「どうしたんだ?」
「結婚されたぞ」
「そうなのか?」
「ああ、ブログでも報告されてるぞ」
「ちょっと待て」
 松岡はこの時家の自分の部屋にいた、部活も食事も風呂も終えてくつろいでいたところだ。パソコンでネットを楽しんでいるところだった。
 そこでだ、彼は早速だった。
 チェックした、そのうえであらためて須郷に言った。
「マジだったな」
「ああ、マジだっただろ」
「結婚されたな」
「相手は一般の方らしいな」
「そうだな、この前声優さん三十歳になったらな」
「結婚する人多いって話したな」
「そうしたらな」
 その話をしたらというのだ。 
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