姉妹のライチ

「奇麗だね」
「では喬のご主人にだね」
「お願いしよう、ただ問題は」
「娘さん達が何と言うかだ」
「嫌われているなら仕方ない」
　孫策はその場合も述べた。
「この家はこの辺りの権門でだ」
「縁組をすると利も見込める」
「私は何時までも今の立場に甘んじているつもりはないよ」
　孫策は強い声で言った。
「袁術殿の食客ではな」
「正直袁術殿のところにいても利はないよ」
　周瑜はこう返した。
「あの御仁もそれなりだが」
「どうも贅沢に溺れやすく人に吝嗇だ」
「大事を為すには足りない」
「そうだな」
「まだ袁紹殿の方がいい」
　同じ袁家の人間ならというのだ。
「現に河北で勢力を伸ばしている」
「だからだな」
「そう、あの御仁の方がまだいい。だが君には合わないな」
　袁紹はというのだ。
「私が見たところ君は独り立ちした方がだ」
「いいか」
「そうだ、袁紹殿は袁紹殿で家臣の扱い方が下手だ」
　袁紹のこのことも話した。
「出来た御仁でもそこが心配だ」
「だからか」
「君の個性にも合わないだろうしな」
　袁紹はというのだ。
「だからだよ」
「袁術殿の下を離れてか」
「独り立ちした方がいい」
「ではその為にだな」
「この辺りの権門の家との縁組も必要だが」
　それでもというのだ。
「若し娘さん達が嫌だと言うならな」
「諦めるしかないか」
「残念だがね」
「そうだね、では」
「その時は他の人を妻に迎える様にしよう」
　二人でこうした話をした、だが。
　見ていたのは二人だけではなかった、時として自分が見ていれば相手もというのがこの世のことである。
　楼閣の娘達も二人を見ていた、それでだった。
　まずは姉の大喬が言った。
「見たわね」
「ええ、楼閣の下の殿方達ね」
　妹の小喬は姉に向かい合って応えた。
「お二人の」
「私精悍な人がいいと思うわ」
「私はあの凄く奇麗な人よ」
「それぞれ好きになったみたいね」
「一目でね、けれどお姉様」　
　小喬はここで姉に困った顔で話した。