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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第21話:訓練は本番さながらに


今日は,朝から俺には珍しく緊張していた。
というのも,前からグリフィスと準備してきた
隊舎において緊急事態が発生したときの対処訓練を行うからだ。

というわけで今は機動6課自慢の訓練スペースの前に,
ロングアーチ・メカニック・バックヤードのスタッフが勢揃いしている。

「あー,朝からみんな集まってくれてありがとう。
 今日は,八神部隊長は出張で不在ではあるが,
 先日予告したとおり緊急事態対処訓練を行う。
 訓練とはいうものの訓練スペースに隊舎をまるごと再現して
 行う大規模な訓練だし,擬似的とはいえ敵の攻撃を受ければ
 隊舎が破壊されてがれきが発生したりする。
 なので,緊張感をもって訓練に参加し,怪我のないように注意するように。
 では,全員通常勤務の際の配置についてくれ」
 
俺が挨拶を終えると集まったスタッフがぞろぞろと訓練スペースに
再現された6課の隊舎に入っていった。
俺はその様子を一瞥すると,ほかのスタッフとは別に集めていた
前線メンバー全員とシャマル・ザフィーラの方に歩いて行った。

「で,今入っていった連中にとってはかなりリアルとはいえ
 ほぼ避難訓練に過ぎないんだが,お前らの役割はちょっと違う。
 今日の訓練では,前線部隊の隊長・副隊長陣に隊舎襲撃役をやってもらって,
 フォワード一同とシャマルにザフィーラは俺の指揮下で隊舎防衛の訓練な」

俺がそういうと全員が頷いていた。

「よし。じゃあ防衛側のみんなは通常勤務の配置で待機な」

俺は残った隊長陣の方を見るとニヤリと笑った。

「じゃあ襲撃者の皆さん。手加減無用だからな」

俺がそう言うとなのはが心配そうな顔をしていた。

「ゲオルグくん本当にいいの?戦力差がありすぎるんじゃない?」

「なのは。防衛側3倍の法則って知ってるか?」

俺がそう聞くとなのははこくんと頭を傾けた。

「おいおい,知らねーのかよ。
 攻撃側の戦力が防衛側の3倍で戦況が拮抗するっていう戦術理論だよ。
 ま,これは野戦の場合で,今回の俺たちは隊舎にこもっていて,
 さらに,スタッフ全員の退避完了までの時間稼ぎができればOKっていう
 条件だから,もっと防衛側の戦力が高くなるんだけどね。
 ま,見事に全員逃がしてみせるから見てなよ」

俺はそう言うと不敵に笑った。



俺は訓練スペースに再現された隊舎の副部隊長室で菓子を食べていた。
攻撃がいつ始まるかは,隊長陣に任せてある。

(さてと,連中はどんな戦術でくるかな?)

俺がそんなことを考えながらぼーっとしているとルキノから通信が入った。

「何だー。ルキノ」

『副部隊長,隊舎の南500mの地点にアンノウン1体出現です。指示願います』

「わかった。俺も発令所に行く。それまで監視を継続。あと招集できる
 前線メンバーは?」

『スターズ03・04およびライトニング03・04の4名です。自室にて待機中』

「了解。全員を発令所に招集しておいてくれ」

『了解しました』

ルキノとの通信はそのままつないだままにしておいて,
俺はシャマルとザフィーラに念話で話しかけた。

[シャマル,ザフィーラ聞こえるか?]

俺が2人に問いかけると2人から聞こえると返答があった。

[隊舎の南方500mにアンノウンが出現した。念のため警戒態勢をとる。
シャマルは広域探査,ザフィーラは隊舎南側で迎撃準備をたのむ]

[判りました]

[心得た]

シャマルとザフィーラからの返答を確認すると,俺は発令所に向かおうとした。
その時,ルキノの悲鳴のような声が聞こえた。

『副部隊長!アンノウンから高エネルギー体が発射されました!』

「了解!警報鳴らせ!」

俺はルキノに指示を出しながら,ザフィーラに呼びかけた。

[ザフィーラ!]

[見えている,任せろ!]

俺は,ザフィーラからの返答に一息つくと,レーベンをセットアップした。

「ロングアーチ02よりロングアーチ。状況に変化は」

『え?あ,はい。南側からアンノウン2,東西両方向から
 それぞれアンノウン1が接近中です』

「ロングアーチ02了解。シャマル!」

『ロングアーチからの報告のとおりよ』

「こっちにもデータを回してくれ」

『了解』

そのとき,隊舎が大きく揺れた。

[ザフィーラ!無事か!?]

[私は問題無い。がすまん,シールドを破られた]

[わかった。引き続き頼む。スタッフの退避を始めさせるから
きつくなる前に徐々に後退して時間を稼ぐぞ。俺もそっちに行く!]

[了解!]

『ロングアーチよりロングアーチ02。屋上ヘリポートが損傷しました。
 アンノウンは急速接近中。現在隊舎から300mです。』
 
「了解!隊舎は放棄する。総員退避!」

『ロングアーチ了解。管制はシャマル先生に引き継ぎでいいですね?』

「そうだ!お前らも早く退避しろ!」

『了解です』

「ロングアーチ02より機動6課各戦闘員へ。
 現在アンノウンが3方向より接近中。
 スターズFは東側,ライトニングFは西側のアンノウンに対処。
 スターズ04・ライトニング04に指揮を任せる。逐次状況を報告せよ。
 俺は,ザフィーラと協力して南側を抑える。
 以降,広域警戒および管制はシャマルに一任する」
 
『スターズ了解』
『ライトニング了解』
『シャマル了解』

「レーベン!南側アンノウンの距離は?」

《1体はまもなくザフィーラさんと接触。
 もう一体は隊舎から200mで停止しました》

(クソ・・・早いな)

俺は窓を副部隊長室の窓を破ると隊舎の南側に出た。
上を見るとフェイトとザフィーラがすでに交戦していた。

「レーベン!スピードブースト。突っ込むぞ」

《はい,マスター》

俺はレーベンを構えると,フェイトに向かって直線的に突っ込み,
フェイトの胴をなぎ払おうとした。
が,フェイトは俺の斬撃を躱すと,一旦距離をとった。

「すまんザフィーラ遅くなった」

「いや,よく来てくれた」

『シャマルよりロングアーチ02。南側から高エネルギー体接近!』

俺がそちらを見るとなのはのディバインバスターが
こちらに迫ってくるのが見えた。

「ザフィーラ!フェイトは俺が抑える!」

「心得た!」

ザフィーラはそう言うと,シールドをななめに張った。

なのはのディバインバスターはザフィーラのシールドに弾かれ
真上にそれていった。

一方俺の方は,ハーケンフォームのバルディッシュを構えたフェイトと
対峙していた。

『シャマルより各員へ。現在非戦闘員の退避は75%完了しました。
 退避完了まではあと5分ほど』

(5分か。俺の空戦技術じゃキツイな・・・)

「シャマル!ロングアーチ02だ。スターズおよびライトニングの状況は?」

『両方共押されていますが,なんとか退避完了までは持ちそうです』

「ロングアーチ02了解」

(援護は期待できないし,なのはにこれ以上砲撃されるのはうまくないな)

「ゲオルグ。私はなのはを抑えに行く」

「頼む。これ以上砲撃が来るのは厄介だ」

「任せろ」

ザフィーラはそう言うと南に向かって飛んでいった。

「ゲオルグ。空中戦で私に勝てるの思ってるのかな?」

フェイトが俺を見下ろしながらそう言った。

「さあね。簡単に抜けると思うならやってみればいいじゃない」

俺はレーベンを握りなおした。

フェイトがバルディッシュを振りかぶって俺に向かって突っ込んできた。

[レーベン。ここは防御に徹するぞ。抜かれたら終わりだ]

[《了解しました,マスター》]

俺はレーベンでバルディッシュの斬撃を受け流すと,
その勢いを利用してフェイトにレーベンを振り下ろした。
だが,フェイトはバルディッシュの柄で軽々と受け止めると
俺を隊舎に向けて吹き飛ばした。

「がはっ・・・」

俺は隊舎に叩きつけられ肺の空気が押し出された。
周りには隊舎が砕けた破片なのか砂埃が舞っている。

[・・・レーベン,ステルス起動]

《了解,マスター》

俺はステルスモードに入ると砂埃の中から上に向かって,飛び出した。

フェイトは俺が先ほどまで中にいた砂埃の方を見つめている。

[レーベン,カートリッジロード。メッサーレーゲンで行くぞ!]

[《了解しました》]

俺は,カートリッジを2発ロードすると,
俺を見失っているフェイトに向かって,魔力の刃を大量に降らせた。

フェイトはその魔力反応で気づいたのか,シールドで防御しようとする。

(それじゃあコイツは防げないぜ,フェイト)

メッサーレーゲンはただの魔力弾と違い,極限まで薄く磨いだ
魔力の刃を飛ばす魔法なので,威力は小さいがシールドを切り裂いて
相手に命中させることができる。

俺の目論見どおり,いくつかの魔力刃が命中したようで,
フェイトのバリアジャケットは何箇所か裂けていた。

『シャマルよりロングアーチ02。非戦闘員の退避が完了しました』

「ロングアーチ02了解!ロングアーチ02より機動6課各員へ。訓練終了!」

俺はそう言うと,ステルスモードを解除した。

(やっぱり,空中戦でステルスはキツイな。3分が限界か・・・)

俺は,もう魔力もほとんど残っていない。
飛んでいるのも限界だったので,地上におりた。

そこにフェイトが涼しい顔をして降りてきた。

「うーん。うまく時間を稼がれちゃったね。私もゲオルグに被弾させられたし」

「ギリギリだったけどな。ステルスはもう1分くらいしか持たなかったし」

「やっぱり,あいかわらず空中戦は苦手なんだ」

「うん。なんか飛行魔法の効率が悪くてね。
 多分魔力性質の相性の問題なんだけど」

「じゃあ劇的な改善は望めないか。惜しいね」

「こればっかりは,しょうがないよ。ま,空中戦なんかしないで済む状況を
 作れるように頭を使うさ。もともとガチンコで戦うのは好きじゃないし」

俺はそう言うとフェイトに笑ってみせた。

 
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