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犬の夢は

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第一章

               犬の夢は
 ふわりは国咲家の息子である洋介との散歩から帰ると彼に足を拭いてもらってから家に上がってだった。
 すぐに自分のケージに入って丸くなって眠りだした、その彼女を見て洋介は考える顔になっては母の百合子に尋ねた。
「犬も夢見るのかよ」
「見るそうよ」
 母はすぐに答えた。
「犬もね、だからね」
「ふわり今寝てるけどな」
「やっぱりね」
「夢見るんだな」
「だから今もね」
「見てるかも知れないんだな」
「そうかも知れないわね」
 こう息子に答えた。
「ひょっとしてね」
「そうなんだな」
「ええ、ただね」
「ただ、どうしたんだよ」
「私達と同じ場所にいてね」
 ここで百合子は洋介に話した。
「同じものを見ても」
「同じ夢は見ないか?」
「私達と大きさが違うでしょ」
 まずは体格のことを言うのだった。
「元々犬は人間より低い場所に頭があるわね」
「ああ、人間は二本足でな」
 洋介もそれはと応えた。
「背筋伸ばして立って進むな」
「けれど犬は四本足でしょ」
「それで歩くからな」
「だからね」
 それでというのだ。
「頭の位置がね」
「人間よりずっと低い場所にあるな」
「だから見る場所がね」
 世の中をというのだ。
「全く違うから」
「同じ場所で同じものを見てもか」
「また違う風になっているわ」
「それで夢もか」
「違う感じになっているわ」
「そうなんだな」
「人間でもね」
 それでもというのだ。 
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