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星河の覇皇

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第八十二部第五章 撤退する者達の焦りその十八

「多くの犠牲者が出ました」
「実用化までは」
「そうした兵器でしたね」
「それは閣下のお国でもでしたね」
「左様でしたね」
「はい、ですが我が国の犠牲者の方々は」
 その兵器を研究している際に出てしまった彼等はというのだ。
「最後まで持ち場を離れませんでした」
「戦史に残っていますね」
「乗員全員最後まで持ち場を離れず任務を全うしました」
「そして後人に大きな教訓を残してくれました」
「それは財産とも言っていいもので」
「実に素晴らしいものでしたね」
「日本軍でも教えられていて」
 このことはというのだ。
「そしてです」
「連合軍でもですね」
「軍人の鑑の一つと言われていますね」
「そして教えられていますね」
「今も」
「はい、私があの方々の様に出来るか」
 このことはとだ、八条は話した。
「無理だと思いますが」
「いえ、それは」
「それはです」
「誰もがでしょう」
「いざその時にあの様に出来るか」
「死ぬその時まで任務を全う出来るか」
「文章まで残せるか」
 死の間際に書いたものだ。
「あれはまさに英雄です」
「英雄と言っていいものです」
「あの方々は」
「戦場で倒れてはいませんが」
「あの方々もまた名誉の戦死です」
「それを遂げられました」
 戦場ではない、だが戦って死んだというのだ。それも後世にこれ以上はないまでの遺産を残してくれたというのだ。
「誰にも出来るか」
「それはわかりません」
「かつての日本軍にはそうした英雄が多いですが」
「あの方々も」
「広瀬中佐にしても」
 八条は日露戦争の英雄、最初の軍神の話も出した。
「素晴らしいですね」
「全くです」
「最後の最後まで戦ってくれました」
「まさにです」
「それも部下の為に」
「そうしました」
 そして戦死したのだ、広瀬中佐も。
「部下を探して」
「そして最後は散華した」
「あの時中佐は撤退出来ました」
「そのまま」
 旅順港封鎖作戦の時だ、この時撤退の時にいなかった杉野曹長を探しに艦内に戻ったのだ。この場面は軍歌にもなっている。
「ですが探しに行って」
「そしてでしたね」
「見付からず戻った時に攻撃を受け」
「散華しましたね」
「あの人も」
 とてもというのだ。
「出来るか」
「あの様に」
「部下を気遣ってですね」
「そして探しに行く」
「そうしたことが」
「それはです」
 まさにというのだ。
「軍人の理想ですが」
「理想であるからこそ」
「非常に高いですね」
「そこにあるものが」
「どうにも」
「そしてあの方々も」
 八条はまた彼等の話をした。 
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