| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第5話:シスターさんがお淑やかだって誰が言った!?

(はやてと帰っておけばよかった・・・)

早速だが俺は残ってカリムさんについて来たことを激しく後悔していた。

「ゲオルグさん。それでは参りますよ!」

目の前のおかっぱ頭のシスターさんはデバイスを両手に構えて殺る気を
全身に漲らせていた。

(・・・なんでこんなことになっちまったんですっけ?)


・・・遡ること10分前

先に帰ることになったクロノさんとはやてと別れ,俺はカリムさんと
教会の通路を歩いていた。

衝撃的な機動6課設立の裏事情を聞かされた部屋から
5分ほど歩いたところにある,石畳の中庭のようなところで
カリムさんの足が止まった。

中庭には特徴的なおかっぱ頭をしたシスターさん,
もといシャッハさんが立っていた。

「シャッハ。ゲオルグさんをお連れしましたよ。」

カリムさんがシャッハさんに声をかけると,
シャッハさんはこちらに向かって歩いてきた。

・・・両手にデバイスを抱えて。

(嫌な予感しかしないんだけど・・・)

「ゲオルグさん。ご足労をおかけして申し訳ありません。」

「いえ,何かご用ですか?シャッハさん。」

「この前の調査でご一緒した時にゲオルグさんの腕前を拝見して,
 是非一度お手合わせを願いたいと思いまして」

・・・というわけで俺はシャッハさんと模擬戦をやることになった。


俺のデバイスであるヤクトレーベンは曲刀型のデバイスだ。

「レーベン!」

《了解です,マスター》

俺は黒色の騎士甲冑を纏いレーベンを構えると,
正面から突っ込んでくるシャッハさんを見遣った。

(くっ・・・速い!)

シャッハさんは俺との間合いを一気につめると右から横殴りに薙いできた。

俺はレーベンでそれを受けると間合いを取ろうと後ろに飛んだが,
今度は左からの袈裟斬りが襲いかかってきた。

(単純なスピードじゃ俺の負けだな。シャッハさんは双剣だから手数も多いし,
 どうしたもんかな)

俺が戦術を練る間にもシャッハさんの双剣が次々と襲いかかってくる。

[レーベン!]

[《了解です》]

俺は加速の補助魔法を使って,一度シャッハさんから距離をとり,
牽制のために追尾型の魔力弾を6つ打ち出した。

シャッハさんは高速で右に左に移動しながら,俺の魔力弾を一つずつ
双剣で撃ち落としている。

[レーベン。ステルスモード]

[《はい,マスター》]

こいつは俺とレーベンの姿を完全に見えなくする魔法で,潜入なんかのときに
よく使っている結構便利な魔法だ。

だが魔力反応までは消せないので戦闘には向かないが,シャッハさんのように
近接タイプの相手にはそこそこ有効だ。

俺は姿を消してシャッハさんの後ろ側に回り込むと,シャッハさんの背中に
向かってレーベンで斬りかかった。

だが,シャッハさんは右手で魔力弾を撃ち落としながら,
左手で俺の斬撃を防ぐ。

(さすがにこんな小細工は通用しないわな,なら!)

俺は右足でシャッハさんの足を払ってバランスを崩させると,
体当たりでシャッハさんを地面に押し付け,
レーベンをシャッハさんの首筋に突きつけた。

[レーベン,ステルスモード解除]

[《了解です。マスター》]

レーベンを突きつけられたシャッハさんは妙に清々しい笑顔を浮かべていた。

「流石に見えない相手に体術を使われると防げませんね。私の完敗です。」

「いえ。シャッハさんのスピードにはついていけませんでしたからね。
 俺もまだまだ修行が足りませんよ」

《ところでマスター》

「なんだレーベン」

《早く左手をどけたほうがよろしいかと》

「はあ?・・・なっ///」

俺は自分の左手を見るとなんとシャッハさんの胸を鷲掴みにしていた。

「すっ,すいません!」

俺は速攻でシャッハさんから飛び退くと,全力で土下座した。

「い,いえ。お気になさらず/// 戦闘中のことですので・・・」

と,言いつつシャッハさんの顔は真っ赤に染まっていた。

《さすがは神聖ムッツリスケベ皇帝ですね。ラッキースケベ属性もお持ちとは》

「レーーベーーン!!!!!!!」

夕日に染まる聖王教会の中庭に俺の叫びがこだました。


「今日はありがとうございました」

さすがに聖王協会の誇る武闘派シスターとの模擬戦のあとだったので,
少し休憩してから,俺はクラナガンに帰ることになった。

「いえ,こちらこそ。はやてに力強い味方が増えて喜んでいるのですよ。」

「ご期待にそえるように努力します」


自宅に帰ってさっさと寝ようとしていると,レーベンが話しかけてきた。

[《マスター》]

[なんだよ。俺は疲れてるんだけど]

[《みなさんとのお話で何か引っかかることでもおありなのですか?》]

(まったく,コイツはなんでこんなとこだけ敏感なんだか・・・)

[そうだな。いや,もう少し調べてみてからにするよ]

[《そうですか》]

レーベンの声は心なしか残念そうな響きだった。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧