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ライチの籠

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第一章

               ライチの籠
 最早唐の繁栄は終わっていた。
 安禄山が兵を起こし都長安に攻め入ったのだ、長安の東の守りは本来は堅固であったが宰相楊国忠のいらぬ命もあってだった。
 その守りは破られ長安にまで安禄山は迫ってきた、それを受けてだった。
 皇帝玄宗は宮廷の臣下達何よりも楊貴妃を連れてだった。
 蜀の方へと落ちていった、その中でだった。
 兵達の不満は募っていった、彼等はこう話した。
「こうなったのも宰相様のせいだな」
「ああ、東の関のことで余計なことを言われたからだ」
「だから関は落ちた」
「そして都も守れなくなった」
「全部宰相様のせいだ」
「わし等がこうして落ちていることはな」
 都からというのだ。
「あの人が悪いんだ」
「そして万歳老をたぶらかしているあの人のご一門もだ」
「楊家の方々もだ」
「権勢を振るって好き勝手をして」
「今の事態も起こされた」
「国が乱れたのも楊家の方々のせいだ」
「わし等がこうなっていることも」
 こう言って不満を募らせていった、そして。
 その中でだ、楊国忠は。
 馬に乗ったままで吐蕃の兵達と話していた、それを見てだった。
 兵達は普通なら何も思わなかった、だが。
 都を落ち項垂れかつずっと歩き疲れていてしかも楊家の者達特にその中心である楊国忠への不満を募らせていた、その為だった。 
 それを見てだ、こう思った。
「叛乱を企てているのか?」
「吐蕃の兵達と結んで」
「そして万歳老に何かされるおつもりか」
「わし等にも」
「楊家の方々も一緒か」
「これはまずいぞ」
「動かれる前に動けだ」
 兵達は武器を手に話した。
「万歳老をお守りしろ」
「そして殺される前に殺せ」
「宰相様は謀反を起こされるぞ」
「今のうちに始末しろ」
「実際に動かれる前にな」
 こう話してだった。
 兵達は実際に動いた、山中の道において吐蕃の兵と何でもない話をしてそれを終えた楊国忠にだった。
 殺到した、これには楊国忠も驚いた。馬上からその細面で鋭い目の顔で問うた。
「そなた達どうしたのだ?」
「どうしたもこうしたもあるか」
「謀反は許さんぞ」
「郁だ何でも万歳老には指一本触れさせん」
「あの方はこんな時でも橋を落とされなかったのだ」
 都を落ちる時にというのだ。
「後で民が使うと言われてだ」
「その逃げる場所を壊すなと言われたんだぞ」
「謀反を起こした連中が追ってきてもだ」
「民のことをまず考えておられるんだ」
「そんな方に危害を及ばせられるか」
「何があってもな」
「そしてわし等もむざむざ殺されるか」 
 兵達は自分達のことも話した。
「やられる前にやってやる」
「思い通りにはさせないぞ」
「覚悟しろ」
「一体何を言っているのだ」 
 楊国忠には訳のわからないことだった、それで呆然としてだった。
 兵達に話そうとした、だが。
 一本の槍が彼の腹を貫いた、これに血を吐いてまだ何か言おうとしたが。
 槍は次々に刺さりそのうえで馬から引き摺り下ろされてだった。
 楊国忠は手足を切り落とされ首もそうされた、そして兵達はさらに楊一門に襲い掛かり次々と血祭に挙げらていった。
 兵達が騒がしいのを聞いてだ、玄宗は周りに問うた。 
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