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ムスヘルム

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第一章

                ムスヘルム
 その国のことは誰もが知っている、だが。
 誰も行かない、それは何故かというと。
「あそこには誰も行けない」
「海の遥か彼方にある」
「そして全てが燃え盛っている」
「そこにいる者も全てだ」
「あそこは炎の巨人達の国だ」
「ラグナロクの時に全てを焼き尽くす者達の国だ」
「そんな国に誰が行けるのだ」 
 人間達はその国、ムスヘルムについていつもこう言っていた。
「行ける筈がない」
「神々ですら行けないのだ」
「行けるのは炎の神ロキだけだというが」
「そのロキも行こうとしない」
「少なくとも今はそうだ」
「あの国には誰も行けない」
「絶対にな」
 人間達はこう話して決して行くことの出来ない見ることも出来ないその国のことを話していた。これは人間達だけでなく。
 アースガルズにいる神々も同じだった、それこそどの神もだ。
 行くことが出来なかった、巨人を目の敵にして倒してきているトールもだ。
 髭に覆われたその雄々しい顔を苛立たせて言っていた。
「俺があの国に行けるならだ」
「即座にか」
「そうだ、行ってだ」
 妹フリッグの夫であり神々の主であるオーディン幅広の三角の帽子で隻眼を隠し白く濃い長い髭を生やしマントと質素な服で身を釣るんだ彼に言った。見ればトールにしてもその服は質素なものである。
「皆殺しにしてやるが」
「出来るものではないな」
「だから行けるならだ」 
 それならというのだ。
「行ってだ」
「皆殺しにしてだな」
「後々の不安の種を取り除いている」
「ラグナロクを避ける為にか」
「そうしている」
「そうだな、わしもだ」
 オーディンも自ら言った。
「行けたらそしてだ」
「何か出来たらだな」
「動いていた、魔術を使ってだ」
 トールと共に卓の上でゲームをしながら話した、ゲームは直情的なトールをオーディンが知略で抑えている。
「そうしてだ」
「滅ぼしているな」
「出来ればな」
 その隻眼を光らせて話した。
「そうしていた」
「そうだな」
「こうした時に知恵を出してくれるな」
「ロキもだな」
「あいつはそもそも火だ」
 火の神である彼のことも話した。
「他ならぬな」
「火を司るあいつがあの連中を倒す為に何かするか」
「元々火の精霊であったのにな」
 そこから神になったのがロキであるのだ。
「巨人の出身と言うが」
「それを言うと俺達もだがな」
「だが我等は霜の巨人の出になりだ」
「あいつは炎の巨人になるな」
「流石の奴も同類には何もしない」
「そうだな」
「だから今はだ」
 ロキはというのだ。
「あいつはやがてブリュンヒルテの見張りにつけるつもりだが」
「自由にさせているな」
「これまで通りな、だがそのうちだ」
「あいつも動くな」
「ラグナロクの時は炎に戻り」
 そうなりというのだ。 
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