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マンゴーの恵み

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第三章

 多くの船を出させ周りの者達だけでなく国の兵達も連れてだった。
 川を遡っていった、すると暫くしてだった。
 その実がたわわに実った木々が川の両岸にある場所に来た、王も他の者達もその場所に来て目を瞠った。
「何と素晴らしい香りか」
「これだけ実っているとは」
「どの実も美味そうだ」
「早く手に入れよう」
「これだけ多いと採り放題だぞ」
「しかも手が届く場所だぞ」 
 皆こう言ってだった。
 実を採ろうとするがここでだった。
 猿達が来て実を採って食べだした、王はそれを見てすぐに怒った。
「何と、猿達が採って食っておる」
「折角我等が採ろうとしたのに」
「そうしようとしたら」
「猿達が採るとは」
「そして食うとは」
「これは許せん」
 周りの者達に怒って言った。
「すぐに追い払うのだ」
「わかりました」
「そうしましょう」
「では脅かしましょう」
「ここはそうしましょう」
「そうせよ」
 兵達にも告げてだった。
 王は猿達に武器を突きつけさせ大きな音を出させた、そうして猿達を追い払いにかかった。それを自分が棲んでいる木から見てだった。
 ボーディサッタはすぐにだった。
 その木から遠く離れた岸の壁まで跳んでだった。
 そこにあった藤の蔓を自分の右の足首に括り付けてだった。
 木に跳んで戻ってだ、猿達に言った。
「この蔦に捕まるのです」
「そうしてですね」
「その蔦を伝って逃げる」
「そうすればいいのですね」
「そうです、急いで下さい」
 こう言って猿達を逃がした、猿達は蔦に跳び付いて一目散に逃げて行った、王はそれを見てまたしても驚いた。
「あの猿を見よ」
「何と、自分が蔦を岸に付けて」
「そして猿達を渡らせて逃がしています」
「その際自分も踏まれていますが」
「それもものとしていません」
「見事な、あの猿と話がしたい」 
 その彼を見つつ話した。
「これよりな、では今からだ」
「猿に言いますか」
「王自ら」
「そうされますか」
「若し猿が話せるなら」
 人間の言葉をというのだ。 
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